国土交通省がトラック・バス関連の法令を改正し、「すり減った冬タイヤはNG」と明文化しました。大雪で相次ぐ車両の立ち往生を防ぐ狙いですが、乗用車においても、同じことが言えます。

立ち往生の原因車にペナルティ下しやすく

 国土交通省が2021年1月26日(火)、トラック・バス事業者向けに冬用タイヤの安全性確認をルール化したと発表しました。「貨物自動車運送事業輸送安全規則の解釈及び運用について」、並びに「旅客自動車運送事業運輸規則の解釈及び運用について」を一部改正したものです。

 トラック・バス事業者は、雪道を走行する自動車のタイヤについて、「溝の深さがタイヤ製作者の推奨する使用限度よりもすり減っていないことを確認する」ことが義務付けられました。併せて、「国内メーカー等の冬用タイヤでは、使用限度の目安として、溝の深さが新品時の50%まですり減った際にプラットホームが溝部分の表面に現れます」と注記されています。

 つまり、タイヤの溝が50%まで減ってプラットホームが露出した冬タイヤは、雪道で使用してはいけない、ということです。

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写真はイメージ(画像:Anna Grigorjeva/123RF)。

 国土交通省は、2020年末以降の大雪により、関越道や北陸道において多くの大型車両が路上に滞留する事案が発生したことを踏まえた措置としています。特に関越道では、すり減った冬タイヤを履いていた大型車が車両滞留の原因車となったことが報じられています。

 今回の改正について国土交通省自動車整備課は、大規模な車両滞留につながる「スタック(車両が動けなくなること)の要因のひとつをつぶすため、意識を高めてもらう目的がある」と話します。車両滞留は大型車が原因車となるケースが多く、然るべき措置を怠り車両滞留の原因を作った事業者に対し、行政処分を下しやすくする側面があると言えます。

 では、一般の乗用車については、どうなのでしょうか。

あまり知られていない? 冬タイヤのプラットホーム

 実は地域によっては乗用車も、すり減った冬タイヤで雪道を走ることは違反になります。

 そもそも雪道を冬タイヤなどの滑り止め策を講じることなく走行することは、各都道府県(沖縄を除く)の公安委員会が道路交通法に基づき制定した公安委員会遵守事項に違反する行為で、罰金も定められています。

 その条文は都道府県ごとに異なりますが、たとえば山形県の道路交通規則では、「全輪にスノータイヤ(接地面の突出部が50パーセント以上摩耗していないものに限る。)を取り付ける等滑り止めの措置を講ずること」とされています。条文において、冬タイヤのすり減り具合まで言及されている地域があるのです。

「プラットホームが露出するまですり減った冬タイヤは、効き目ゼロです」

 カー用品店オートバックスを展開するオートバックスセブンは、こう言い切ります。「50%よりすり減った後も、ノーマルタイヤとしては使えますが、冬タイヤとしての役目は終わりです。お客様には買い替えをおすすめします」とのこと。ただ、冬タイヤのプラットホームの存在は、一般の人にはあまり知られていないのではないか、ということでした。

「すり減った冬タイヤNG」乗用車は? トラック・バスは超速で厳格化 立ち往生防止

2020年12月に関越道で発生した大規模な車両滞留。2000台以上が巻き込まれた(画像:国土交通省)。

 一方、トラックやバスの事業者にとって、今回の改正はどう映ったのでしょうか。今回は公示からパブリックコメント(国民からの意見募集)を経て公布・施行に至るまで11日間というスピード対応で、発表後、国土交通省自動車整備課に事業者からの問い合わせも多く寄せられているといいます。

 しかしながら、「概要を説明しますと、『なんだ、今までやっていることをちゃんとやればいいのね』という反応をいただくことが多いですね」(国土交通省自動車整備課)とのこと。プロの事業者にとっては、当たり前のことなのかもしれません。

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