JRの機関車や電車をはじめとする鉄道車両には車体に数字の「1」「2」を標記しています。これは規定を基にしたものですが、機関車とそれ以外の車両ではその意味が若干異なります。
JRの車両を見ると、機関車の車体の下のほうには四角囲みの「1」「2」、電車、気動車、客車といった旅客車と貨車には丸囲みの「1」「2」の数字が標記されています。この数字はいったい何を意味するのでしょうか。
EF510形電気機関車とE233系電車、209系電車「Mue-Train」。EF510形には四角囲みの「2」、E233系と209系には丸囲みの「1」が見える(2011年8月27日、伊藤真悟撮影)。
答えを言ってしまうと、この数字は車両の前後を表すものです。JRの車両は1960(昭和35)年6月10日に十河信二 日本国有鉄道(国鉄)総裁が通達した「車両各部分の位置の称呼規程」を受け継いでいます。しかし、同じ数字の「1」「2」でも機関車とそれ以外の車両とではその意味が若干異なります。
機関車にある四角囲み「1」「2」の意味「車両各部分の位置の称呼規程」の第2条では、蒸気機関車は煙突がある側、電気機関車は主たる運転用操作機器のある運転室側が前(前位)となります。ディーゼル機関車は、運転台が中央にあるものは車内において車端に向って運転士席が左側となるときの前方が前位ですが、運転室が両側にある場合は、主たる運転用操作機器のある運転室側が前位と決められています。
「車両各部分の位置の称呼規程」における電気機関車を上から見たときの前後関係と四角囲み「1」「2」の位置(乗りものニュース編集部作成)。
蒸気機関車は煙突がひとつしかないためどちらが前かすぐにわかりますが、電気機関車とディーゼル機関車はパッと見てどちらが前かを判別することができません。そこで電気機関車とディーゼル機関車は前位側の左右に「車端番号板」と呼ばれる四角囲みの「1」を、後ろ(後位)側の左右に「2」の板を取り付けています(近年の機関車は車体に直接標記)。
ちなみに、JR貨物が導入した2車体連結のEH200形電気機関車「ECO POWER ブルーサンダー」やEH500形電気機関車「ECO-POWER 金太郎」は、車体側面下だけでなく運転室部分にも「1」「2」と標記しています。かつてJR貨物篠ノ井総合鉄道部(現・塩尻機関区)とJR東日本長野総合車両所(現・長野総合車両センター)に所属していたEF64形電気機関車は、前面の貫通扉下に「1」「2」の標記をしていたことがあります。
旅客車と貨車にある丸囲み「1」「2」の意味JRの旅客車や貨車に標記される丸囲みの「1」「2」は、機関車とは意味が若干異なります。
同規程で電車の前位は以下の通り定められています。ただし、ふたつ以上の条件に該当する場合は、上位のものが優先です。
イ:運転室(回送用運転装置付のものを除く)のある場合は運転室側。但し、両側に運転室のある場合は、主たる運転用操作機器のある運転室側
ロ:運転室のない場合は、車内において車端に向い、制御回路の引通しが左側となるときの前方
ハ:出入台が一端のみにある場合は、出入台のない側
ニ:合造車は優等室側、食堂、郵便、手荷物等の各室と客室との合造車は客室側、郵便室と手荷物室との合造車は郵便室側
ホ:各等全室で一端に便所のある場合は、便所のない側
ヘ:食堂全車は、料理室のない側
また、同規程の第3条には「車両各部分の称呼順位は、前位から後位に順次1位、2位、3位と呼び、左右に並列するものは、前位の右を1位、同左を2位と呼び、以下右から左に順次後位に及ぼすものとする」とあります(機関車も同様)。
電車を上から見たときの前後関係と丸囲み「1」「2」の位置。運転室がある場合は運転室側が前位。運転室がない場合は制御回路の引通しが左側となるときの前方が前位となる(乗りものニュース編集部作成)。
JRの電車ではこの規程に従い、前位の右(1位)側に丸囲みの「1」、前位の左(2位)側に丸囲みの「2」を標記。
簡単に言ってしまえば、JRの機関車にある四角囲みの「1」「2」は前後を意味し、JRの旅客車と貨車の丸囲みの「1」「2」は前位の左右を意味するのです。
余談ですが、JR貨物のコンテナにも丸囲みの「1」「2」を標記しています(31フィートコンテナには丸囲みの「3」「4」も)。
運転室がある側が前位ではない電車も「車両各部分の位置の称呼規程」では、電車は項目の最上位に「運転室(回送用運転装置付のものを除く)のある場合は運転室側」が前と記されています。しかしながら、これに該当しない車両も存在します。
JR西日本では自社で新造投入した221系電車から、電車については下り(下関)方の先頭車の前位を運転台でない側としています。これは車両の前位を上り(東京)方に統一したためです。そのため、下り(下関)方先頭車のクハ221形は運転台とは反対側が前位となり、丸囲みの「1」「2」を標記しています。
下り(下関)方先頭車のクハ221形は運転台側ではなくトイレ側が前位のため、2位側を表す丸囲みの「2」はトイレ側に標記する(2021年2月、小坂弘之撮影)。
JR西日本は、気動車(ディーゼルカー)についても、キハ187系やキハ189系は「車両各部分の位置の称呼規程」を踏襲しましたが、「TWILIGHT EXPRESS 瑞風」に使用する87系の下り方先頭車(1号車)であるキイテ87-2は、運転台側ではなく客室用の出入口側が前位です。
編成の向きを統一した例では新幹線電車でも見ることができます。
新幹線電車も先頭部を除く前位側の妻面(端面)に丸囲みの「1」「2」を標記していますが、連結面が全周ホロで覆われているため普段は見ることができません。
私鉄は会社ごとに異なるここまではJRの車両について述べてきましたが、一部の私鉄でも車両に「1」「2」の数字が標記しています。しかし丸囲みであったり、四角囲みであったりと鉄道会社によってまちまちです。
西武鉄道では丸囲みの「1」「2」を中間車の両車端部に標記しています(001系「Laview(ラビュー)」は未確認)。飯能・西武新宿方を丸囲みの「1」、池袋・本川越方を丸囲みの「2」とし、丸囲みの「1」と「2」で向きを表しています。
元西武鉄道701系電車の三岐鉄道801系電車モハ804。「赤電カラー」化に際して丸囲みの「1」と「2」を再現している(2020年月、伊藤真悟撮影)。
京急電鉄も同様です。丸囲みの「1」を浦賀方、丸囲みの「2」を品川方の車端部に標記していますが、京急電鉄では先頭車にも見ることができます。
東京メトロは、有楽町線・副都心線用の新型車両17000系を例にすると、各車両の新木場・渋谷方の車端部に四角囲みの「1」「2」を標記しています。
このように前後や左右を意味する車体標記の「1」「2」。一般利用者には必要のないことからでしょうか、近年では小さく標記されていることが多いようです。

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