直流事業用電車のクモヤ143形0番台とクモヤ145形は車体の色も同じで前面の形も似ています。パッと見てクモヤ143形かクモヤ145形かわかりにくいですが、外観をよく見てみると明確な違いがあります。
国鉄が製造した直流事業用電車のクモヤ143形0番台とクモヤ145形は、どちらも車体色がブルーで前面部分が黄色。前面中央部に貫通扉を設けているため、パッと見たところ同じように見えることから、混同してしまう人もいるようです。
クモヤ143形は、首都圏の山手線や京浜東北線などの保安装置がATC(Automatic Train Control=自動列車制御装置)化される際、それまで使用していたクモヤ90形が老朽化していたことから、1977(昭和52)年から1980(昭和55)年にかけて新製された車両です。0番台は21両が登場しています。
一方クモヤ145形は、ATC化されていない直流電化区間の主要な電車区で使われていた旧型の事業用電車を取り替えるために製造された車両です。車体は新製ですが、台車や主電動機(モーター)などは101系電車のものを流用しており、101系電車からの改造扱いとなっています。
JR西日本にのみ残るクモヤ145形直流事業用電車。1両目と3両目は0番台から改番された1000番台で2両目は100番台から改番された1100番台(画像:photolibrary)。
クモヤ145形は、1980年から1981(昭和56)年にかけて0番台9両が、1982(昭和57)年から1986(昭和61)年にかけて100番台26両、1982年に200番台1両、1983(昭和58)年から1984(昭和59)年にかけて600番台2両が登場しました。
100番台は救援車としても使えるようにしたもので、0番台とは側面の窓や扉の配置が異なります。200番台は交流区間でも自車のモーターは使わずにけん引できるようにした車両で、600番台は身延線の狭小トンネルに対応するパンタグラフを搭載した車両です。0番台2両は1986年と1987(昭和62)年に200番台と同様に交流区間でもけん引できるように50番台に改造しています。
JR化後、JR東海とJR東日本に所属するクモヤ145形は全廃となり、いまではJR西日本だけに残っています。JR西日本のクモヤ145形は主電動機を交換し、原番号に「1000」を追加しています。
クモヤ143形とクモヤ145形の見分け方クモヤ143形0番台とクモヤ145形の外観上の違いは、まず前面のタイフォン(警笛)の位置です。
クモヤ143形では前面の下に取り付けられていますが、クモヤ145形は前照灯の脇に取り付けられています。さらに、クモヤ143形には前面下に排障装置(通称:スカート)が取り付けられていますが、クモヤ145形には排障装置は取り付けられていません。前面での見分け方はこのふたつです。
ちなみにクモヤ143形50番台は前照灯の脇にタイフォンがありますが、これはクモニ143形から改造されているためです。
209系「Mue-Train」と並ぶクモヤ143形。タイフォンは前面下にあり、排障装置が取り付けられている(2002年4月13日、伊藤真悟撮影)。
次に車体側面にある両開き扉の数です。クモヤ143形は片側にひとつ、クモヤ145形は片側にふたつあります。前述のようにクモヤ145形は番台によって扉の位置が異なりますが、いずれも両開き扉は片側にひとつとなっています。
以上のことを把握していれば、クモヤ143形とクモヤ145形は容易に判別することが可能です。

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