夜行バスといえば長距離のイメージがありますが、それほど長くない距離を、昼間よりも長い時間をかけて結ぶものもあります。どのようなニーズがあるのでしょうか。
夜行バスというと、東京~大阪や、日本最長の東京~福岡など、比較的長距離のイメージがあるかもしれません。しかし、短い距離の夜行バスもいくつか存在します。
代表的なものが、名古屋~大阪間です。距離はおよそ170km。JR在来線でも3時間足らずで到着し、昼間に運行されるJR高速バスでもほぼ同様の所要時間です。
ジェイアール東海バスの車両(乗りものニュース編集部撮影)。
しかし夜行便「青春大阪ドリーム名古屋号」(2021年5月13日現在、運休中)は、名古屋駅から大阪駅まで6時間以上、終点のUSJ(ユニバーサル・スタジオ・ジャパン)まで乗り通せば7時間以上をかけます。なおUSJから名古屋行きは8時間を超えます。
ジェイアール東海バスによると、夜行便は岐阜駅などを経由するため、走行距離もおよそ230kmと長くなるそうですが、それにしても長時間です。ゆっくり走っているわけではなく、実は高速道路SAでの途中休憩や、別の場所での時間調整などで、あえて時間をかけて運行しています。
このほか、ジェイアール東海バスが運行する東京発着の夜行「ドリーム静岡・浜松号」も、比較的短距離な夜行バスのひとつ。昼行の東京駅~静岡駅間なら、おおよそ3時間半、バスタ新宿~浜松駅間なら、おおよそ4時間半弱ですが、夜行便は東京駅~浜松駅のあいだで7時間から8時間かけます。
やはりこの夜行便も、昼行便にはない横浜(YCAT)や掛川駅を経由するほか、東京側では新木場駅経由でTDL(東京ディズニーランド)を始発着としていることもあり、運行距離も300km強と長くなっているそう。TDL~浜松駅間を通して乗る場合、所要時間は上りが8時間50分、下りが8時間25分です。
「夜行」ならではの利便性高いダイヤ設定 しかも安い名古屋~大阪や東京~浜松、わざわざ夜行で行くには短い距離かもしれませんが、緊急事態宣言下では状況が異なるものの、いずれも好評だといいます。
メインの需要はやはり、名古屋方面からUSJ、浜松・静岡方面からTDLへ行く人だそう。たとえば名古屋~大阪の場合、名古屋駅や岐阜駅は大阪方面へ向かう終電の後に発車し、USJには朝6時32分着。1日たっぷり遊べます。名古屋行きはUSJの閉園後、21時35分に出発し、大阪駅や京都駅はやはり、名古屋への終電後に発車します。

東京ディズニーリゾートのバスターミナル(乗りものニュース編集部撮影)。
ジェイアール東海バスによると、メインの客層はUSJへ向かう10代から20代の若者、次に30代から50代のビジネス客とのこと。コロナ前には、続行便(2号車以降)の出る日もあったそうです。2度目の緊急事態宣言に入る前の2020年後半も、需要はだいぶ戻っていたといいます。
しかしながら、長距離の夜行バスは従来から衰退傾向であったうえ、コロナが追い打ちをかけ、撤退や廃止も相次いでいます。
そうしたなか、夜行の強みを存分に生かしたダイヤと、新幹線とは比較にならない安さが特徴の名古屋~大阪や東京~静岡・浜松の夜行便。感染の状況で運行体制は変化するものの、ジェイアール東海バスは引き続き運行していく構えです。