東京で電動キックボードのシェア事業が本格的にスタート。国の認可を受けた様々な特例により、ヘルメット着用は任意に。

そのほかの電動キックボードはヘルメット着用必須のため、街にはノーヘルOK/NGの機種が混在することになります。

ノーヘルOKなのは「小型特殊」だから

 ベンチャー企業のLuupが2021年4月23日(金)から、電動キックボードのシェアサービスを本格的に開始しました。政府の特例措置を受けた、日本初となるヘルメットの着用が任意となる公道上でのサービス提供です。その報道公開が28日(水)に行われました。

 Luupは電動モビリティのシェア事業に向け実証実験を重ねつつも、日本では法整備が十分でなかったことから、まず電動アシスト自転車のシェア事業を展開していました。今回、東京の街なかにある電動アシスト自転車のポートに電動キックボードが配備される形で、スマートフォンアプリ「LUUP」を通じたサービスが始まります。

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Luupのシェア用電動キックボード(中島洋平撮影)。

 利用可能エリアは渋谷区、新宿区、品川区、世田谷区、港区、目黒区の全域。300箇所あるポートのうち約200ポートで電動キックボードの乗り降りが可能です。台数としては100台用意されています。

 利用料金は初乗り10分で110円、以降、1分ごと16.5円が加算されていきます。なお、機体には原付のナンバーがついていますが、原付免許では乗れません。

利用の際には、アプリから普通免許以上の運転免許証の登録と、走行ルールの確認テストを受けて満点合格する必要があります。

 というのも、前出した「政府の特例措置」により、シェアサービスで提供される電動キックボードは道路交通法上、農作業車などと同じ「小型特殊自動車」に分類されているからです。

 これに基づき、シェアサービスの電動キックボードは最高速度が15km/h以下に制限されています。その代わり、原付では義務となるヘルメットの着用が任意に。サービスにおいてもヘルメットは提供されません。

 日本で電動キックボードが公道を走行するには、道路運送車両法で定められた保安部品を取り付け、原付として登録し、ヘルメットを着用して車道を走る必要があります。

シェア事業を展開するうえで大きなハードルとなっていたというヘルメットの着用を、道路交通法上の解釈変更によってクリアした、ということができます。

ほかの電動キックボードはノーヘルNG 過渡期の風景か?

 このような特例は、Luupなど認可を得たシェア事業者の電動キックボードに限られ、その提供エリア内で認められます。しかし道路運送車両法上は一般的な公道走行可能な電動キックボードと同じ原付のため、ナンバーも原付のもの、というわけです。

 つまり、街を走る電動キックボードで、ノーヘルメットOK/NGの基準が混在することになりますが、Luupの担当者は「小型特殊にすることも一時的なもの」だと話します。

 Luupは今回、クルマが多い道路などについては自主的に走行禁止とし、アプリ上のマップで表示して利用者に迂回を促すといいます。将来的には、利用者の走行場所や、利用者の年齢に応じて、遠隔操作にて強制的に速度を抑制する仕組みも検討しているとのこと。

 さらには、速度だけでなく「立ち乗り」「座り乗り」といった形態まで、利用者の年齢に応じて変化するモビリティの導入も視野に入れています。このような仕組みを通じて「インフラとしての電動モビリティ」を構築していく構えです。

電動キックボードシェアようやく本格化 ノーヘルOK 交通ルールは混沌の過渡期

電動キックボードのポート。自販機程度のスペースで都内300か所に整備。返却時は携帯で写真を撮って送信し、返却確認を経て決済となる(中島洋平撮影)。

 電動キックボードのシェアは世界中で普及していて、「日本が最も遅れている」とLuupの担当者は話します。

加えてコロナ禍により密を避ける手段として、さらに電動キックボードが取り沙汰されてきたのは日本も同様です。

 こうした状況を受け、警察庁もこうした「自転車以上、原付未満」な電動モビリティの法的な位置づけの整理や、交通ルールの整備に本格的に乗り出しているそうです。この4月には、警察庁の有識者会議が、電動モビリティを速度によって分類し、最高15km/h以下なら免許不要とする案を取りまとめました。

 一方で、電動キックボードの違法走行も目立っており、警察庁も電動キックボードの取締りを強化することを表明していますが、現状で法整備は道半ばの過渡期といえます。Luupの担当者は「15km/hでは遅すぎて逆に危険という声もあります。電動キックボードの位置づけが法的に明確となるよう、利用者データや声を警察へ届けていきます」と話します。