通勤のあり方が変わり、密を避ける動きのなか、「座って通勤」が可能な有料列車が堅調です。この需要に高速バスが参入する動きも。
新型コロナウイルスの感染拡大によりテレワークも普及するなか、鉄道などの公共交通機関の需要は大きく減退しました。とはいえ、時間帯や区間によっては着席も難しいほど、多くの人が以前と同じように「通勤」しています。
そうしたなか、「座って通勤」が可能な有料座席を持つ列車(有料列車)やサービスが堅調のようです。
たとえば京王電鉄は2020年9月、有料の「京王ライナー」を夕方、夜間時間帯に増発しました。京急電鉄では新造車両を増備のうえ、2021年5月から朝時間帯の有料列車「モーニング・ウィング号」を8両から12両編成に増強するなどしています。
京王ライナーなどに使われる5000系電車(恵 知仁撮影)。
多くの鉄道で通勤時間帯の需要が減り、一部便の削減なども行われていますが、京王電鉄によると「京王ライナーは他の列車と比べて(乗車率の)落ち込みが少ない」のだとか。
また関西では、JR西日本が一部の新快速に設定している定員制の有料座席サービス「Aシート」に、2020年12月から指定席を12席導入。7月からはさらに20席へ増やします。
Aシートはもともと、車内で500円の乗車整理券を購入することで、空いていれば席を利用できるというものでしたが、いわば早い者勝ちで全46席が満席になる場合があることから、その一部を事前予約が可能な指定席に切り替えているのだそう。
これら有料座席は、通常車両の混雑を避けられるだけでなく、シートテーブルやコンセント、車内Wi-Fiなどが備わり、移動中も仕事できることから、時間を有効活用できる点もメリットとして挙げられています。
同様のサービスは、高速バスでも提供が可能と見たためか、有料座席列車と同様の区間で、通勤向けの高速バスを新たに設定する動きもあります。
「座れる列車」もっと増やせない?6月から八王子~新宿間で高速バス「通勤ライナー」の運行を開始する西東京バスによると、多くの人が通勤定期を持たず、実費精算に切り替えるようになったことも商機だといいます。
「通勤手段が『選ばれる』時代です。たまに通勤する際に、直通の高速バスで乗り換えや混雑を避けて移動できるという、時間の新たな価値を提供します」(西東京バス)
これら有料サービスは収益のうえでも、鉄道やバス事業者を大きく助ける可能性を含んでいます。しかし、大幅な増発や増強には、鉄道・バスともに課題があります。
西東京バス「通勤ライナー」の場合、始発地の出発時刻は朝4時台、新宿着は6時48分と、かなり早めです。これより遅くなると、中央道の渋滞が始まり定時性の確保が難しくなるといいます。
八王子~新宿間の「通勤ライナー」を運行する西東京バスの車両(中島洋平撮影)。
鉄道もまた、有料列車の本数を増やすことには困難が伴います。特に朝ラッシュ時などは、有料列車の前後の列車が混雑する傾向があるからです。
京急の担当者は、「減ったお客様をいかに増やすかに試行錯誤しています」といい、有料列車の増強もその一環ではあると話します。しかし「第一には、安心して乗っていただける取り組みが重要」とのこと。
バスも含め、各社が車両や駅の消毒などを徹底し、抗菌・抗ウイルスコーティングなどを行っています。加えて京急の車両では、全車、暖房時も外気導入が可能な仕様に改修しているのだとか。
というのも、冷房時はエアコンで外気を導入して換気ができるものの、「以前は暖房で喚起しながら運転していると、『冷房が入っているのか』というご意見もあったことから、外気導入にしていませんでした。しかしいまは、暖房時も換気することが常識になっていますので」ということです。
有料列車は収益性も高く、安心して乗ってもらう取り組みのひとつではあるものの、「それだけに注力することもできません」と京急の担当者は話します。

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