旅客が飛行機へ搭乗する方法のひとつが、搭乗口からバスで機体のそばまでゆく方法です。このバスは普段市中で乗るものと違いはあるのでしょうか。

また、運転士はどういった方々が担っているのでしょうか。

路線バスの中古車も

 空港で旅客機に搭乗する際の方法はおもに2通りがあります。ボーディング・ブリッジ(搭乗橋)を使い空港ビルから直接機内に乗り込む方法、そして、シップ(航空機)のすぐ近くまで駐機場をバスで移動して、タラップ車を使って機内に乗り込む方法です。

 このバス搭乗、地方空港ではもちろんのこと、羽田や成田などの大きな空港でも用いられます。このバスは「ランプバス」と呼ばれるものですが、普通のバスとの違いなどはあるのでしょうか。

「路線バス」とは大違い?駐機場を走る「ランプバス」事情 その...の画像はこちら >>

旅客機とランプバス(乗りものニュース編集部撮影)。

 ランプバスは、乗客が重い荷物を持って乗り降りすることが考慮されています。そのため、低床の車体が使用されていることが一般的です。また、人数を多く乗せることのできるよう、街中で見かけるものよりも大型に改造されているケースもあります。

 空港内は、実は通常の道路交通法が適用されません。そのためランプバスを含めた空港内の車両は、多くが国土交通省発行のナンバープレートは付いておらず、各空港の運営管理者が発行する空港独自のナンバーを付けています。

 車内を見ると、乗降扉は大きくなっているものも多いです。

これは、シップの出発時間に影響がないように、迅速な乗降ができるような配慮でしょう。また、路線バスなどでは、社内吊り広告が貼り巡らされているのが一般的ですが、ランプバスでは、この掲示がありません。

 ただ、近年では、街中の路線バスでも低床車が増えてきたためか、空港専用ではなく路線バスの中古車を使用する例もあるようです。ちなみに、かつて成田空港では幕張メッセなどで使用されていた連節バスなども運行されていましたが、現在は見かけなくなっています。

 気になるのは、運転士の免許ですが、先述のとおり道路交通法適用外であるため、ランプバスなど大型バスを運転するには、社内規定で道交法に準じた資格のほか、空港それぞれで「ランプパス(制限区域立入承認証)」という免許証が必要になります。

空港ごとに見る「沖止めバス搭乗」事情

 ランプバスを運行する会社は、空港ごとに異なります。

羽田、成田空港では、いわゆるリムジンバスを運行する東京空港交通が空港会社からランプバスの運航を受託しており、オレンジとホワイトのツートンカラーをまとっています。関西空港では南海バスが、福岡空港は西鉄バスがその業務を担います。また、バスを航空会社が運行している伊丹空港などの例もあります。そのため、空港ごとに、バスは特徴のあるカラーリングをまとっているのが一般的です。

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東京空港交通のランプバス(乗りものニュース編集部撮影)。

 ちなみに、このランプバスを使って「沖止め」の飛行機に乗る方法、航空ファンとそうでない人でその評価が分かれるところでもあります。

 そうでない人にとってはこのバス搭乗は、重いスーツケースを抱えて、タラップ車など階段を上がる必要が生じてきます。ただ、羽田空港などのターミナルが大きな空港であれば、実はこの方が徒歩の距離が少なく済むパターンもあります。対し、航空ファンにとっては、空港内を地上近くで眺め、シップを間近に眺めることできるため、かなりテンションが上がるイベントのひとつ、ともいえるのかもしれません。

 なお、バス搭乗は、いわゆるフルサービス・キャリアより、LCC(格安航空会社)の方が、より遭遇率が高いのが一般的です。これは、ボーディング・ブリッジよりバス搭乗の方が、航空会社の支払う使用料を低く抑えられるためです。LCC専用となっている成田空港の第3ターミナルなどではボーディング・ブリッジを設けず、一旦地上に降りて再度階段を使って搭乗する方法なども取られています。

 ちなみに、車椅子などで沖止めのシップに搭乗するケースでは、専用のリフト車があります。基本的に空港は、老若男女別け隔てなく、すべての人がシップに乗ることのできるような設備が整っているといえるでしょう。

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