廃線になった線路やトンネルなどの設備を活かし、地域の活性化につなげようという試みが各地で見られます。そのひとつ、「東洋一高い鉄橋」を売りにする宮崎県の「高千穂あまてらす鉄道」、ここはかなりの「アトラクション」ぶりです。
2021年現在、宮崎県には旅客営業を行う鉄道はJR線しかありませんが、廃線となった鉄道路線としては高千穂鉄道高千穂線があります。現在はこの線路跡を活用し、アトラクション「高千穂あまてらす鉄道」のカートが走っています。
高千穂あまてらす鉄道が、旧・高千穂鉄道高千穂線の線路跡を活用して運行する30人乗りのグランドスーパーカート(画像:photolibrary)。
第三セクターだった高千穂鉄道はもともと、宮崎県北部の延岡市と内陸の高千穂町を結ぶ路線で、旧国鉄の高千穂線を継承したものです。2005(平成17)年9月の台風14号の被害によって運行休止となり、2008(平成20)年に全線が廃止されました。
この高千穂線の一部を「保存鉄道」として運行する高千穂あまてらす鉄道は、2010(平成22)年から、スーパーカートの運行を開始。廃線当時のままの高千穂駅から往復5.1km、30分間、かつての鉄道をカートで走ります。目玉は完成当時「東洋一高い」ともいわれた、岩戸川の渓谷を渡る高さ105mの高千穂鉄橋を渡ること。ちなみにこの高さは大阪の通天閣とほぼ同じです。
2017年に導入された「グランドスーパーカート」は30人乗りで、屋根や窓はなく開放的なオープントップ。大峡谷から渡ってくる風を感じられます。客車の床の中心部には強化ガラスが敷かれており、走り過ぎる線路の様子が楽しめます。
また、鉄橋へ向かう途中にあるふたつのトンネル内は、天井にイルミネーションが施されているといった演出もあります。ほかにも、高千穂鉄道時代に使用されていたディーゼルカーTR-200形を、元・高千穂鉄道運転士の指導のもと運転できる体験も実施されています。

高千穂駅舎(恵 知仁撮影)。
高千穂あまてらす鉄道の利用者は、2019年度に過去最多の6万人弱を記録しました。昨今は新型コロナウイルス感染拡大の影響で利用者は激減したものの、団体客にも対応できるようグランドスーパーカートの増備が計画され、2020年6月に運行開始しています。
このように、廃線を活用し観光の起爆剤とする例は、旧小坂鉄道のレールバイク(秋田県)やJR吾妻線旧線の自転車型トロッコ(群馬県)など日本各地で見られます。廃線になれば二度と立ち入れない……どころか、むしろ現役の頃には味わえなかった貴重な体験ができる場所もあるので、思い出を作りに行ってみるのもいいかもしれません。