昭和レトロなデパート屋上の遊園地が数を減らし、なかでも「屋上観覧車」は東京都内でただ一つを残すのみとなりました。地元の思いで廃止の危機を乗り越えた観覧車から見える景色には、ここならではの特徴もあります。

地元でおよそ50年愛されてきた屋上観覧車

 昭和の時代から続いた各地の遊園地が数を減らしています。それはデパートなどの屋上の小さな遊園地も同様。ビルの再開発や施設リニューアルなどが理由です。なかでも「屋上観覧車」は、2021年現在、東京都内ではただ一つを残すのみとなりました。

 その都内唯一の観覧車があるのが、東急蒲田駅の駅ビルでもある「東急プラザ蒲田」です。ビルの屋上、青い空と緑に囲まれた屋上遊園地「かまたえん」は、1968(昭和43)年の開業から、地元のランドマークとして多くの親子連れが訪れる人気スポットとなっています。

そのシンボルとなってきたのが屋上観覧車です。

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幸せの観覧車(吉原あさお撮影)。

 初代の「お城観覧車」から始まり、1989(平成元)年からは2代目の「グレ太の観覧車 フラワーホイール」が稼働してきました。2014(平成26)年3月にデパートのリニューアルで一時閉鎖の危機もあったそうですが、地元の人々から存続を望む声を受け、同年10月に「幸せの観覧車」という名前で復活したそうです。

 高さはおよそ10m。4人乗りのゴンドラが9台あり、赤、青、黄、緑…などのレインボーカラーで彩られています。

料金は1周300円です。中に入ると格子のついた小窓から遊園地を一望でき、1周およそ3分半の旅が始まります。

「幸せの観覧車」から見える景色は?

「幸せの観覧車」からは、青い空、京浜東北線などの線路、そして少し昭和の雰囲気も感じさせる蒲田の街並が広がっています。羽田空港が近い蒲田は高層ビルが少ないため、遠くの風景まで見られるのも特徴。スタッフの方によると、霧が掛かっていないときにはビルの向こう側に、富士山など美しい山々の景色が楽しめるということでした。特に空気の澄んだ冬場がオススメだそうです。

 夕日が見られるかも聞いてみましたが、夏の営業時間が午前10時から18時までのため、その時間はまだ明るいとのことでした。

 リニューアル前の「かまたえん」には、お金を入れて動くパンダの乗り物があったそうですが、現在はないとのこと。その代わり、東急電車のカラーリングを模した「エコライド」や、エアクッションを使って飛び跳ねて遊ぶことができる「風の丘」、人気キャラクターの遊具など、子どもにはたまらないアトラクションが用意されています。

地元の声で存続、都内唯一となった「屋上観覧車」に乗る 遠くまで見えるのには理由が

ゴンドラから見る園内(吉原あさお撮影)。

「かまたえん」のえんは、人が集まる場所を表す「園」と、人どうしの絆を表す「縁」の、ふたつの意味が込められているそうです。この日も、平日の午前中でしたが既に親子連れが7組ほど訪れていました。

 ちなみに、つい最近まで都内にもうひとつ、東急百貨店吉祥寺店の屋上「太陽の広場」にも観覧車がありました。奇しくも同じ東急系列ですが、こちらは2021年1月にリニューアルされ、観覧車を含むレトロ遊園地はなくなり、人工芝を敷くなどした子供が走り回れるようなスペースに生まれ変わりました。