アメリカで開発されたC-130輸送機は、空自および海自でも運用しているほか、在日米軍にも配備されているため、日本でも比較的見ることの多い軍用機です。東日本大震災でも重用された“傑作機”、何が強みなのでしょうか。

土砂と瓦礫に埋もれた空港にいち早く飛来

 2021年7月1日(木)、宮城県にある仙台空港が民営化5周年を迎えました。仙台空港に初の定期路線が就航したのは60年以上前の1957(昭和32)年のこと。いまでは東北最大の空港として、また日本では数少ない滑走路が2本ある民間空港として運用されています。

 そのような仙台空港にとって開港後最大の危機となったのが、民営化の5年前に発生した東日本大震災での津波でしょう。海岸からわずか1kmほどの距離にあるため、滑走路を始めとして敷地のほとんどが土砂や瓦礫で埋まり、漏れ出したガソリンに引火して建物も炎上しました。

 空港機能は完全に喪失、復旧には長い年月がかかると見込まれていました。しかし、飛行場としての体をなくしていた仙台空港へ、震災わずか5日後の2011(平成23)年3月16日に降り立った飛行機があります。

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航空自衛隊のC-130H輸送機(画像:航空自衛隊)。

 それがアメリカ空軍のMC-130Hです。同機は沖縄県の嘉手納基地に配備されていた特殊作戦機で、夜間や視程不良の気象状態で地上の支援が全く受けられない敵地や僻地においても正確に飛行し、兵員や物資を輸送することを目的とする機体です。

 MC-130Hはアメリカ製のベストセラー機C-130中型輸送機をベースに、赤外線航法装置など特殊任務に必要な装備を搭載したもので、前述の被災した仙台空港においてもMC-130Hによる先遣隊の投入だけでなく、その後もアメリカ軍は人員や資機材の搬入などでC-130輸送機を発着させています。

C-130輸送機の生い立ちと特徴

 C-130輸送機はロッキード社が開発、生産している軍用輸送機の決定版とも形容される機種です。

1954(昭和29)年の初飛行以来、改良が重ねられつつ現在も最新型C-130Jの生産が続いており、累計生産数は2500機を超え世界69か国で採用されています。

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アメリカ空軍のMC-130特殊作戦機(細谷泰正撮影)。

 この傑作輸送機が誕生した背景には朝鮮戦争がありました。当時、アメリカ空軍が前線で使用していた輸送機はC-46、C-47、C-118など、第2次世界大戦中に活躍したレシプロエンジンを装備した機体で、なおかつ、当時の軍用輸送機の多くは旅客機や爆撃機から派生した機種が多く、前線への輸送任務に適したものでもありませんでした。

 そこでアメリカ空軍は、独自の要求に加えて陸軍の要望も盛り込み、前線での使用に最適化した新たな輸送機の提案要求を1951(昭和26)年に航空機メーカー各社へ送付しました。

 これに対し、ロッキード社は、名設計者と呼ばれたケリー・ジョンソンも参加し、当時実用化されたばかりのターボプロップエンジンの使用を前提に設計された機体を開発。見事、コンペを勝ち抜いたのです。

 C-130の特徴は、丈夫な降着装置で未舗装の比較的短い滑走路でも運用できること、貨物室の床が低く、荷役作業が容易なこと、貨物の空中投下や空挺輸送も可能なことです。こうした実用性が買われて空中給油機や特殊作戦機など多くの派生型も生産されてきました。

 続いて改良型とともに、空中給油型、救難救助型、気象観測型などの派生型も順次誕生、C-130E型からはパレット輸送に対応するようになります。このパレット輸送システムは、その後、軍用貨物輸送の標準的な荷役方法となり、航空自衛隊でも用いられています。

 なおC-130シリーズは、機首が鼻のように突き出た特徴的な外観をしていますが、これはレーダードームです。

この形状は、最初の量産型であるC-130A型からの特徴で、C-130シリーズの見た目のポイントにもなっています。

日本で見られるC-130ファミリー

 C-130はエンジンにも特徴があります。当初、搭載していたのは、T56-A-1エンジンでしたが、これはアリソン社(現・ロールス・ロイス)が開発したもので、最初に搭載したのはC-130でした。

 その後、改良が加えられ、C-130以外にもP-3対潜哨戒機やE-2早期警戒機などにも採用されるなどしています。なお最新型のC-130Jでは、ロールス・ロイス製のAE2100に更新されています。

22世紀まで飛び続ける? 輸送機の決定版C-130「ハーキュリーズ」は何がイイのか もう70年

アメリカ空軍のC-130J輸送機。C-130Hとはプロペラ形状などが異なる(細谷泰正撮影)。

 このように、C-130輸送機は誕生からすでに70年近くが経とうとしていますが、いまだ世界中を飛び続けています。同機は航空自衛隊および海上自衛隊でも導入されており、前者はC-130H(KC-130H改造機含む)を16機、後者は搭載燃料増加型のC-130Rを6機、それぞれ運用しています。

 自衛隊以外で、日本で目にすることの多いC-130シリーズというと、アメリカ空軍横田基地(東京都福生市)の第347航空団で運用されている機体が挙げられます。横田基地には1962(昭和37)年にC-130E型が配備されて以来、C-130H型、そして現在では最新型の C-130J型と、およそ60年にわたり同シリーズの運用が続いています。

 それ以外にも、アメリカ沿岸警備隊が運用する救難救助型のHC-130Hは、太平洋上の違法操業などの監視活動にも使用されているため、時折、日本国内のアメリカ軍基地に立ち寄ることがあり、タイミングが合えば見られます。

 生産開始から70年近く経ってもいまだ生産され続けるC-130シリーズ。もしかしたら、22世紀に入っても世界の空を飛び続けているかもしれません。

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