「世界最大の豪華客船」は、どれだけ大きいのでしょうか。その記録を更新し続けているのが、ロイヤルカリビアンのクルーズ船で、ほぼ「街まるごと」といえる規模です。

ただ、こうした客船の大型化により、日本では課題も生じています。

帝国ホテル4つ分が海に浮かぶ!?

「旅客を目的地に運ぶ」ことよりも「船旅を楽しんでもらう」ことを目的として運航される豪華クルーズ船。日本では全長約241m、870人ほどが乗れる「飛鳥II」(郵船クルーズ)が最大ですが、「世界最大」はどのような船でしょうか。

 2021年現在、豪華客船で世界最大に君臨するのが「シンフォニー・オブ・ザ・シーズ」です。船の大きさの目安となる総トン数は約22万8000トン、全長は362m、全幅は65mもあります。長さは東京タワー(高さ333m)をゆうに超え、重さは同じく東京タワーの約6倍。これが海に浮いていると思うと驚きです。

 18階建てで24機のエレベーターを搭載した船内には、2759の客室があり、乗組員約2200人を含めた約8000人が乗船可能。キャパシティは帝国ホテル(客室数697室)の約4倍にもなり、宿泊施設としても世界有数の規模といえそうです。

デカすぎて困る!? ロイヤルカリビアンのドデカ客船列伝 「世...の画像はこちら >>

シンフォニー・オブ・ザ・シーズ(画像:ロイヤルカリビアン)。

●世界最大を更新し続ける「ロイヤルカリビアン」

「シンフォニー・オブ・ザ・シーズ」が初めて就航したのは2018年3月。米国マイアミに拠点を置く世界最大規模の客船会社「ロイヤルカリビアン」が運航しています。

同社は現在25隻の客船を保有しており、その船の中でもオアシスクラス(22万トンサイズ)の船は何度も世界最大を更新してきました。

 2006(平成18)年「フリーダム・オブ・ザ・シーズ」、2009(平成21)年「オアシス・オブ・ザ・シーズ」、2010(平成22)年「アリュール・オブ・ザ・シーズ」、2016(平成28)年「ハーモニー・オブ・ザ・シーズ」、そして2018年に世界最大を記録した「シンフォニー・オブ・ザ・シーズ」です。ロイヤルカリビアンは、利用客の夢や憧れをカタチにするアイデアを最大限に詰め込みたいと願った結果、世界最大の豪華客船を作り続けることになったといいます。

「シンフォニー・オブ・ザ・シーズ」には、船内に季節の花々が咲く「セントラルパーク」や遊園地まであり、ロイヤルカリビアン自身もこの船を「街」と形容するほどです。

日本では「デカくなりすぎてどうしよう」問題

 ロイヤルカリビアンの船が世界最大を記録する前、世界最大の客船を運航していた会社としては、イギリスの「キュナードライン」が知られます。同社が1969(昭和44)年にデビューさせた「クイーン・エリザベス2」、その後継として2003(平成15)年に登場した「クリーン・メリー2」とも、当時の世界最大でした。

 なかでも、長期に渡って世界最大の豪華客船の地位に君臨していたのが「クイーン・エリザベス2」です。同船をはじめとした当時の世界最大クラスの船は、現在の横浜ベイブリッジやレインボーブリッジにおける高さの基準にもなっていますが、これが、後々に尾を引く課題にもなっています。

 たとえば横浜港のメインターミナルである大さん橋埠頭の長さは450mですが、巨大船舶はそのぶん高さもあるため、大さん橋埠頭に着く前に存在するベイブリッジを通過できないという問題が発生してしまいます。海上からベイブリッジまでの高さは約55mで、現行「クイーン・エリザベス」が過去に横浜港へ寄港した際は、海面が低くなる時間帯を狙って橋をくぐっていたほど。客船の大型化にともない、ベイブリッジをくぐれないものも増えているのです。

 このため、ベイブリッジをくぐれない船を迎え入れる際は、ベイブリッジよりも手前(海側)にある大黒ふ頭が利用されます。

また東京にも、レインボーブリッジより陸側にある晴海客船ターミナルに代わる「東京国際クルーズターミナル」が2020年、お台場にオープン。レインボーブリッジをくぐらない場所にあり、「世界最大の客船に対応」とうたっています。

デカすぎて困る!? ロイヤルカリビアンのドデカ客船列伝 「世界最大」相次ぎ更新

現行クイーン・エリザベス。2010年デビュー(画像:キュナードライン)。

 ちなみに、ロイヤルカリビアンは「シンフォニー」よりさらに6000トンほど大きい「ワンダー・オブ・ザ・シーズ」を2022年3月に就航予定で、「世界最大」はまたも塗り替えられる見込みです。また、日本の郵船クルーズも「飛鳥II」の後継となる船の建造を発表していますが、日本では新型コロナウイルスの影響でクルーズ船は逆風吹き荒れたまま。豪華客船ブームは、近いうちに再来するのでしょうか。

【動画】まもなくデビューの次期「世界最大の客船」
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