新たに鉄道ができると、周辺でバス路線の再編が行われることがあります。しかしなかには、鉄道と真っ向から並行する路線バスが存続する場合も。
新たに鉄道ができると、周辺でバス路線の再編が行われることがありますが、中には、その新たな鉄道とほぼ並行して走るバス路線が存続する場合も。東京でそのような鉄道と並行する路線バスをピックアップします。
都営バス「池86」:池袋サンシャインシティ・池袋駅東口~渋谷駅東口明治通りに沿って池袋駅から新宿伊勢丹前を経由し、渋谷駅を結ぶ路線で、東京メトロ副都心線とほぼ並行。JR山手線の並行路線ともいえるでしょう。
2008(平成20)年の副都心線開通とともに本数は大幅に削減されたものの、それでも2021年現在、日中1時間あたり4~5本が走ります。渋谷駅付近は西口と東口のあいだを循環するほか、2018年には、一部便が池袋駅から池袋サンシャインシティまで運転区間を延長しました。
池86系統も停車する都営バスの渋谷駅西口停留所(中島洋平撮影)。
都営バス「里48」:日暮里駅~見沼代親水公園駅前
日暮里駅から尾久橋通り沿いに足立区北部の見沼代親水公園駅までを結ぶ路線。日暮里・舎人ライナーとほぼ全区間で並行します。
うち約半分は、途中で分かれて足立区内の江北六丁目団地や加賀団地を発着もしくは循環する系統ですが、日暮里~見沼代親水公園の全線を走る便も1時間に1本ほど。ただ距離が長いこともあり、営業成績としては芳しくなく(2019年度営業係数238)、都営バスのなかでも有数の赤字路線です。
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池86も里48も、鉄道の開業で影響を受けたと東京都交通局は話します。それでも、高齢者や障害者も含め誰もが利用しやすい移動手段を確保し、地域をきめ細かく回る公共交通機関としての役割を果たしていく必要があると考えているようです。両路線とも一定の利用があったことから、路線の短縮などは行わなず、運行回数や運転時間を見直しながら、需要に合わせたダイヤにしているそうです。
私鉄系バス「もうひとつの山手線並行路線」とは?山手線の並行路線は、都営バス池86以外にも存在します。
西武バス「宿20」:新宿駅西口~西武百貨店前(池袋駅東口)新宿と池袋という西武線の二大ターミナルを結ぶ路線で、新宿から青梅街道を西へ、山手通りを北へ、目白通りを東へ、そして明治通りを北へと、山手線の内外をジグザグに進みます。また、山手通りでは都営大江戸線の地上を走ります。
練馬区以西を主な営業エリアとする西武バスのなかで、他路線と接続しない独立した系統です。昔はいくつかあった山手線の駅発着の系統で唯一生き残ったものですが、西武グループの本社がある池袋の路線は基本的に継続させる方針だそうです。
小田急バス「宿44」:新宿駅西口~武蔵境駅南口JR中央線で20分ほどの新宿と武蔵境のあいだを、75分かけて結ぶ宿44は、都内でもトップクラスの長大路線です。新宿を出たバスは甲州街道や井の頭通りを経由して吉祥寺駅へ向かい、その後は三鷹駅を南へ迂回するように、武蔵境駅の南口までを結びます。
この路線はもともと東京駅~新宿~武蔵境間で都営バス、京王バス、小田急バスが共同運行していた名残といえるもので、甲州街道沿いのバス停は京王バスと共用です。ただ現在の運行は1日2往復と少なくなっています。

玉川通り沿いを行く東急バス(中島洋平撮影)。
鉄道並行路線という点で、東急バスは他社と事情が違います。東急田園都市線の地上、玉川通り(国道246号)は東急バスの大幹線でもあり、渋谷駅へ近づくにつれ、時刻表に書ききれないほどバスがひっきりなしに走ります。
渋谷駅から玉川通りを西進するバスは、三軒茶屋で世田谷通りへ入るもの、駒沢で住宅街へ入っていくものなどもありますが、渋12系統は玉川通りをひた走り二子玉川へ、さらに一部便は多摩川を渡って川崎市の高津まで直通します。
渋12は田園都市線の前進、路面電車だった玉川線の代替路線であり、田園都市線が玉川通りから離れて桜新町・用賀を経由しているのをカバーする役割もあります。鉄道は路面電車から地下鉄道になったことで速達性や輸送力は向上したものの、よりこまめに停車していた路面電車の利便性を、バスで確保したといえます。