飛行機けん引車両「トーイングカー」は、通常白いボディであることが一般的です。ただ羽田空港でJALが運用しているもののなかには、「赤い」ものも。
飛行機の前輪にくっつくような形で、駐機場までのバックでの押し出し(プッシュバック)や、地上走行に用いられる特殊な車両が「トーイングカー」です。通常この車両は、どの航空会社でも、ボディが白であることがほとんどです。
ただ、羽田空港に44台ある、JAL(日本航空)グループが運用するトーイングカー。この中のたった4台だけ、同社のトレードカラーである「赤」をボディ全面に施したものが存在するのです。
赤いトーイングカーに引かれ羽田空港内を移動するJAL機(2021年10月、乗りものニュース編集部撮影)。
JALによると「赤いトーイングカー」は、いずれもタイヤを直接抱えて牽引する「トーバーレスタイプ」の車両といいます。ただ、この4台のうち、1台がLEKTRO社製、3台がKalmar社製。つまり、違うタイプのトーイングカーが、ともに「赤い塗装」をまとっているのです。そして、このカラーをまとうまでの経緯も、2社でまったく違いました。
1台のみあるLEKTRO社製の赤いトーイングカーは、2019年9月頃から導入されました。おもにプライベート・ジェットクラスの小型の旅客機のオペレーションに使われています。
一方で、3台存在するKalmar社製の「赤いトーイングカー」の導入理由は、先述のケースとは全く異なります。Kalmar社のトーイングカーは2020年に導入されました。JALによると、実は同社のものは、色を複数選択できるようになっていたといいます。なぜそこから赤を選んだのでしょうか。
導入のきっかけは、メーカーカタログに、このトーイングカーの赤色モデルが紹介されていたことだそう。そこでJALのブランドカラーの赤色を車両カラーに採用しよう――といった意見が生まれ、実現に至りました。

一般的な白いトーイングカーにプッシュバックされるJAL機(乗りものニュース編集部撮影/)。
当時、赤いトーイングカーを採用する際、担当者たちから次のような意見が上がったそうです。
・JALの次世代主力機であるエアバスA350-900の導入が2019年から進んでおり、真っ白な機体とのコントラストが”映える”のでは。
・東京五輪前に配備し、訪日客にJALのハンドリング(航空機地上支援)の技術などをアピールできるかもしれない(実際は新型コロナの影響で納入がずれ込んだ)。
・白と比べると、赤は汚れが目立ちにくいため、美観維持や洗車回数の削減などの運用上のメリットも考えられるのでは。
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Kalmar社製のトーイングカーの用途は「ワイド(複通路)・ナローボディ(単通路)機対応用」。つまりは、羽田空港から各地へ出発するほとんどのJAL機のけん引に対応できる車両といえるでしょう。なおJALによると「いまのところ台数増や塗り替えの計画や予定はありません」とのことです。