これまで歌舞伎をテーマに好評を博してきた、ANAの「安全&降機ビデオ」が3年ぶりに刷新されます。なぜ変更されるのか、そして新ビデオはどのようなものなのか――企画の中心人物に、その裏側を聞きました。
ANA(全日空)機の離陸前、到着後に流れるビデオが2021年11月から刷新される予定です。これまで同社のものは「歌舞伎」をテーマとしたものが2018年12月から用いられ、好評を博してきましたが、この内容が今回、抜本的に見直されることになりました。
新たな機内安全ビデオと降機ビデオは、ほぼオールスタッフANAグループの社員(子どもを除く)が出演し、安全についての内容や普段の業務などを紹介する、というものに仕上がっています。このプロジェクトの中心となったCX推進室のブランド推進チームの岩永 亮さんに、この経緯について聞くことができました。
新たになったANA「安全&降機ビデオ」の撮影シーン(乗りものニュース編集部撮影)。
今回の安全ビデオの刷新は「契約上の理由で、そもそも11月で放映終了が決まってしまっていた」とのこと。「お客様からのご支持をいただいていたもの(歌舞伎ビデオ)を変えるという意味で、プレッシャーは強かった」といいます。
この新ビデオのテーマやコンセプトは、2021年4月ごろから企画され進められました。新ビデオは「衛生面やユニバーサル対応の向上を目指しているなか、『どのような方にでもわかりやすいような内容』を目指しました」そうです。
また撮影や編集も含め”可能な限りオールANA”とすることで、コスト削減の効果も。「安全に関する内容をしっかり盛り込みながら、従来の4分の1くらいまでコストを抑える努力をしています」としています。
新ビデオの刷新は、結果としてコロナ禍で実施。
岩永さんによると、新ビデオのポイントは「安全情報をリアルを伝達できるよう、実際の旅客機の機内などを極力使うようにしている」とのこと。
「とくに緊急時の脱出スライドを降下するシーンなどは、一般のお客様が目に触れることはないであろう、実際の訓練施設を用いています。降りる際の高さやスピード感などを正しく動画内でお伝えすることで、お客様から信頼を得ることはできるのでは、といったチャレンジングな取り組みとなっています」(岩永さん)

新たになったANA「安全&降機ビデオ」の撮影シーン(乗りものニュース編集部撮影)。
なお、今回出演したANAのスタッフは約20名。パイロットやCA(客室乗務員)、地上係員などを始め、整備士、グランドハンドリング(航空機支援)スタッフ、清掃スタッフ、総合職、機内食のシェフなど、ANA機の運航に携わる多数の職種が”出演”しています。
なお、先述のとおり、安全ビデオと同時に降機ビデオも同じコンセプトのものに刷新されます。岩永さんは「両方を同時に見ていただければ嬉しい」とも。「安全ビデオに出演するスタッフが普段の業務に取り組んでいるところを、降機ビデオでお見せすることで、安全ビデオでは盛り込めなかった社員それぞれの”安全への想い”を入れました」と話しました。