東京都稲城市内、川崎市との境目近くの風景が一変しています。旧来の急坂+ヘアピンカーブに代わり、山の下から上るループトンネルが開通。
東京都稲城市と神奈川県川崎市にまたがる遊園地「よみうりランド」の周辺で、道路の風景が大きく変わっています。ある新トンネルの開通で、これまでのルートが大幅に変更となったのです。
ルートが変わったのは、京王よみうりランド駅(稲城市)から南へ、都県境を越えて遊園地に通じる「よみうりランド通り」です。低い谷筋から急勾配のヘアピンカーブを経て、遊園地のある丘の上へと一気に駆け上がるようなルートで、地元では「ランド坂」と呼ばれています。かつては走り屋も集まるような場所でした。
ランド坂を上りきった「丘の湯」の交差点から。奥が区画整理事業地内に作られた新ルート(乗りものニュース編集部撮影)。
2021年9月、このランド坂の麓に坑口が設けられた「稲城よみうりランド坂トンネル」経由の新ルートが開通しました。
新トンネルも急坂、かつ麓からループを描くような線形です。抜けた先には、土の山と草むらが広がる、いかにも造成中であるかのような風景が広がっています。ここは、谷間の西側の丘陵地「南山」の区画整理事業地で、道路はさらにカーブを描き、ランド坂のヘアピンカーブのヘアピン部分に取りつきます。
歩道と車道が分離された真新しいトンネルの開通により、旧ルートの狭隘さは解消されたものの、トンネル入り口からヘアピンカーブ部分までの距離は従来より800mほども伸びてしまいました。そのうえ、トンネル入り口からヘアピンカーブまでの旧ルートは廃止され、立ち入り禁止になっています。
なぜ、わざわざ大規模なトンネルをつくり遠回りさせるようなルートになったのでしょうか。自転車や歩行者のために旧ルートを残してもよいのでは、と思うかもしれませんが、そうできない理由があるのです。
旧ルートは「なかったこと」になる?旧道が立ち入り禁止になった理由、それは、この谷が今後埋め立てられるためです。そのうえで、今後さらにルート変更が行われます。
南山東部土地区画整理組合によると、埋め立て後は新ルートが通る南山の区画整理事業地と、ランド坂の頂点にあるる温泉施設「丘の湯」の交差点とが、ほぼ同じ高さになるそう。現在のヘアピンカーブに出るルートは暫定的なものであり、将来的に道路を付け替え、「丘の湯」交差点へ直結するそうです。

稲城よみうりランド坂トンネル(ドラレコ画像)。
南山は、東京近郊にあって宅地化されず残った里山でした。開発には根強い反対運動もあったものの、ここは昭和の都市開発の過程で山砂の採取が行われたため未利用地が多く、土砂災害の危険性やゴミの不法投棄の問題なども抱えていました。今後、この地域には宅地や商業施設のほか、読売ジャイアンツの2軍球場を中心とした「TOKYO GIANTS TOWN」も設けられる予定です。