特急「やくも」に使われる381系は2024年春以降、新型273系に順次置き換わります。国鉄型車両がまたひとつ見納めになりますが、同時に、珍しいあるものも車内から消える可能性があります。

2024年以降、381系は順次見納めに

 2022年2月、JR西日本は岡山~出雲市間で運行している特急「やくも」に、新型車両273系電車を投入すると発表。同時に、現行の国鉄型381系電車を置き換えるとしています。

 381系には、およそ鉄道車両らしくないサービスが見られます。エチケット袋です。もちろん、乗りもの酔い対策ではあるのですが、それは同時にこの電車が、高度な技術を持って開発された証左ともいえます。その技術は「車体傾斜システム」です。

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特急「やくも」に使われる国鉄型381系電車。3月中旬からリバイバルとして、一部編成が国鉄色になっている(2022年4月、柘植優介撮影)。

 車体傾斜システムは今でこそ一般的であり、在来線のみならず新幹線でも採用されています。381系は、これを日本で初めて実用化した車両なのです。

 車体を傾斜させるのは、カーブでの速度維持に主眼が置かれています。列車はふつう、カーブで減速します。

高速だと遠心力が働き、乗り心地が悪くなるばかりか最悪は脱線の危険があるからです。

 そこで車体を傾斜させます。カーブの内側へ傾けることで遠心力を相殺し、従来と変わらない乗り心地のまま、より高速度でカーブを通過可能になるのです。もちろん脱線しない安全の範囲内であることはいうまでもありません。実用化されたのは、1973(昭和48)年のことでした。

乗り心地問題は解決したはずでは…?

 381系の車体傾斜システムは「自然振り子式」と呼ばれる方式です。これはカーブでの遠心力低減、通過速度向上を実現した一方、カーブ進入時などに不自然な揺れが発生させることがあり、それによって気分を悪くする乗客が見られました。そのため、今も洗面所にエチケット袋が用意されているのです。

エチケット袋も見納めに? 特急「やくも」381系引退で 追求される「酔わない工夫」
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381系を置き換える予定の新型273系電車(画像:JR西日本)。

 当然、その後に登場した車両では、この問題も解決されています。例えば東北新幹線のE5系電車では「空気ばね式」を、JR四国の特急「南風」の2000系ディーゼルカーでは「制御付き自然振り子式」を、それぞれ採用しています。これらの車両にエチケット袋は備え付けられていません。

 そして381系にとって代わる273系は、さらに進化させた「車上型制御付自然振り子式」を採用。これは、車上の曲線データと走行地点のデータを連続して照合し、適切なタイミングで車体を傾斜させるもので、国内初となる機構だということです。

 273系は、2024年春以降の運行開始が予定されています。

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