陸上自衛隊が装備する99式自走155mmりゅう弾砲。90式戦車よりも大きな迫力あるシルエットですが、配備先がほぼ北海道のため、見たことのない人も多いかもしれません。

でもその射撃する姿、インターネットで見られるそうです。

戦車のような自走砲 99式の性能は?

 長期化するロシアのウクライナ侵攻。アメリカを始めとした西側各国は次々にウクライナへ各種武器の供与を行っていますが、そのなかにはドイツ製の巨大な自走砲PzH2000も含まれています。

 PzH2000は、全長11.67m、車幅3.58m、全高3.46m、重量55tという大きさで、陸上自衛隊の90式戦車が全長9.8m、車幅3.4m、全高2.3m、重量約50tであるため、それよりも大きく重いです。

 まさしく、戦車と見紛うほどの迫力を有していますが、そんなPzH2000に勝るとも劣らない巨大な自走砲が日本にもあります。その名は「99式自走155mmりゅう弾砲」といいます。

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一般道を走る99式自走155mmりゅう弾砲(武若雅哉撮影)。

 99式自走155mmりゅう弾砲は、一見すると戦車のような車両ですが、その名の通り、自走砲です。ただ、そのサイズは全長12.2m、車幅3.2m、全高3.9mと、幅以外は90式戦車以上の大きさです。ちなみに重量は40tで、90式戦車よりも10tほど軽いです。

 全周旋回可能な砲塔に装備しているのは、火力支援用の155mmりゅう弾砲です。ここが戦車と異なる点で、戦車砲のように貫徹力の高い徹甲弾などを目視可能な距離から撃つのではなく、離れた場所から敵陣地などに対して遠距離砲撃します。

その射距離はおおよそ40kmで、ミサイルやロケット弾などを除くと陸上自衛隊が保有する野砲のなかで最長を誇っています。

 足回りは戦車などと同じく装軌式、いわゆるキャタピラ式であることから悪路走破性にも優れており、戦車部隊を遥か後方から強力にバックアップすることを得意としています。実際に、2019年に行われた派米訓練では、戦車部隊に配属された99式が、迫りくる敵部隊と対峙する味方戦車部隊をサポートするため、不整地を突き進み支援射撃を行っています。

99式自走155mmりゅう弾砲を西日本で見かけないワケ

 また車内には自動装填装置を搭載しているため、高い発射速度を誇るとともに省人化にも成功しています。牽引式の155mmりゅう弾砲FH70の場合、操作人員が8名程度必要なのに対して、99式は乗員4名で動かすことが可能であり、比較すると半分の人員で運用できることがわかります。また、車内へ砲弾や装薬を補充する場合も、車体後方に取り付けられた給弾装置を使うことで、ほぼ自動で車外から行うことができます。

 ちなみに、現在、陸上自衛隊が配備を進めている最新の19式装輪自走155mmりゅう弾砲の砲身は、コスト削減を目的として99式自走155mmりゅう弾砲の物を流用しています。

戦車じゃないけど超巨大「99式自走155mmりゅう弾砲」ほぼ北海道のみの激レア装備 どう使う?
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東千歳駐屯地記念行事での一コマ。これだけの99式自走155mmりゅう弾砲が一堂に会するシーンは北海道でしか見られない(武若雅哉撮影)。

 99式自走155mmりゅう弾砲は、ドイツ製のPzH2000に勝るとも劣らないほど高性能な自走砲ですが、本州から南ではほぼ見ることができません。その理由は、これまで製造された約140両中、およそ130両が北海道に配備されているからです。

 では、なぜ北海道に集中しているのでしょうか。

そのワケは、旧ソ連(現ロシア)と対峙してきた自衛隊の歴史があるからです。陸上自衛隊は冷戦期には常にソ連の脅威に備えてきました。そのため、戦車部隊を数多く配備し、いつでも北海道を守り抜くことができるようにしていたのです。

 しかし、地上戦は戦車だけで完結することができません。戦闘の最前線に立つ戦車などの戦闘を火力支援する自走砲も非常に重要な役割を持っているのです。そこで集中的に配備されたのが、戦車の動きにも追従することができる99式自走155mmりゅう弾砲だったのです。

 なお、残る10両程度は、教育用として静岡県の富士駐屯地や茨城県の土浦駐屯地などに配備されているため、それ以外の地域、とくに西日本では見ることがまずありません。北海道の部隊が演習などで九州の演習場などに長駆「遠征」すれば別ですが、運用する実動部隊は事実上、北海道にしかいないため、そこに行かないと見ることができないレア装備といえるでしょう。

 そのような99式自走155mmりゅう弾砲ですが、実射シーンを含めて動き回る姿を見ることができる機会が間近に迫っています。それは、5月28日に開催される予定の「富士総合火力演習」。この演習は、インターネットでライブ配信されるため、富士駐屯地に所在する特科教導隊の99式が陣地進入から射撃して離脱するまでの様子を惜しげもなく見ることが可能です。

 複数個所に配置された地上カメラに加え、ドローンによる空撮などからなるマルチアングルで、自宅に居ながらにして圧倒的な重厚感を間近に感じ取ることができます。

「おうち総火演」で是非、レア装備の99式自走155mmりゅう弾砲の動く姿を堪能しましょう。

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