弱冠16歳で単独世界一周飛行に挑む少年が、フライト途中で日本に来ます。彼が乗るのは日本未認可の超軽量スポーツ機「LSA」。
2022年7月現在、軽量スポーツ機(以下LSA:Light Sports Aircraft)を用いて世界一周飛行の最年少記録を達成しようと、英国系ベルギー人マック・ラザフォードが各国を回っていますが、このたび彼の来日が決まりました。
マックが記録飛行に向け飛び立ったのは、今年(2022年)3月のこと。当初は、ブルガリアのソフィアを振り出しにヨーロッパから地中海を縦断、エジプトからアフリカ諸国、インド洋を飛んで中東、インド、中国、モンゴル、韓国を経由したのち日本に来る予定でした。
しかし、途中で経路が変更になりインド横断後にタイへ。そしてフィリピンまで到達、そこから台湾、韓国を経由して日本に来るというルートになりました。日本到着は7月25日ごろ。韓国の金浦空港から新千歳空港へ来る予定です。その後、26日は北海道内を飛行して、27日に釧路空港からアリューシャン列島のアッツ島へ向け、離日する予定です。
世界一周に挑む前に愛機とともに写真に収まったマック・ラザフォード(画像:MackSolo)。
今回の日本着陸は世界一周飛行の最年少記録を目指しているマックだけでなく、日本の航空界にとっても画期的な意味を含んでいます。
LSAは、諸外国では広く普及しているものの、日本では航空法において航空機として定義されていないため、飛ぶことができませんでした。しかし今回、条件付きながらLSAについても、今年8月から国内での飛行を可能とする通達が発出される見込みとなりました。
日本にとっては大きな一歩、でも欧米と比べまだまだ未熟実は、昨年、LSAに乗って女性として世界一周最年少記録を達成したマックの姉ザラ・ラザフォードも日本に立ち寄ろうとしたものの、前出の理由から来日することはかなわず、日本を迂回して飛んでいきました。しかし法改正によりLSAの飛行が実施可能な見通しが付いたことで、今回、ついにLSAが初めて日本の空を飛ぶことになります。
ただ、来月から条件付きながらLSAの飛行が可能になることは、日本にとっては大きな一歩であることは間違いありませんが、諸外国に追いつくにはまだまだ不十分です。たとえば、国内のLSAは管制塔のある空港には近寄ることができません。海外ではパイロットの資格次第ではLSAでも管制空域の飛行が可能で、管制塔のある空港において離発着が可能です。
なお、今回マック操縦のLSAは管制塔のある新千歳空港を利用しますが、これは外国籍のLSAが外国免許で飛来するため可能とのこと。これは法的に合理性を欠く大きな矛盾といえるでしょう。

世界一周の途次、オマーンで撮影に応じるマック・ラザフォード(画像:MackSolo)。
海外ではパイロット養成の訓練機から自家用機まで、実用機として普及しているLSAですが、今回の通達で可能となる飛行にはまだまだ制約が多く、実用機として運用するには更なる大胆な法改正が必要になる見込みです。
ともあれ、来週に迫ったLSAの日本飛来は歴史的な出来事となることは間違いありません。世界一周を目指す若きパイロットを温かく迎え、大きなエールで次の目的地へ送り出してあげたいものです。