2019年の海上自衛隊観艦式は、台風によって予行と本番の両方が中止になりました。でも筆者は中止の決断を支持するといいます。
海上自衛隊では一般向けのイベントも多く開催されています。なかでも人気が高いのは3年に一度開催される式典「観艦式」。この時期は艦艇の一般公開も予定されますが、相模湾沖で実施される観艦式(およびその予行)の観覧に当選すると、間近で訓練展示を見学できる約9時間の体験航海に参加できるため、マニアは競ってこちらに応募します。
ただ、メインイベントゆえに、そのチケットは「超」が付くほどの高倍率。とはいえ、通常の体験航海は1時間程度で終わりなので、観艦式がいかに特別なイベントかわかるでしょう。
満艦飾で停泊する海上自衛隊の各種護衛艦(画像:海上自衛隊)。
前回の観艦式は2019年、令和元年の開催でした。私も取材で観閲艦の護衛艦「いずも」に乗艦することが決まっていました。観閲艦は総理大臣や防衛大臣が乗艦する、いわばメインの艦。一生に一度あるかないかの機会に期待も高まります。
しかし、このとき日本列島には台風が近づいていました。のちに「令和元年東日本台風」と呼ばれることになる台風19号の接近は、その前に大きな被害をもたらした台風15号の影響もあり、連日のようにニュースで警戒が呼びかけられ、観艦式の予行は次々と中止になっていきます。
残すは台風一過にあたる本番のみ、開催の可否はギリギリまで先延ばしに。そしてSNSでも観艦式について憶測が飛び交うなか、下されたのは……。
「令和元年度自衛隊観艦式の全面的中止」
のちに知ったのですが、過去、観艦式本番が中止となった例は少なく、この決断は各所に大きな衝撃をもたらしたそうです。
旧海軍から受け継がれた船乗りとしての矜持海外の艦艇も招いて開催される式典の中止には一部から批判の声もあったようですが、私はこの決断を支持したいのです。なぜなら、観艦式を中止させた「張本人」である台風19号は、各地に被害を及ぼしたことで、結果、自衛隊は災害派遣に出動しています。
海上自衛隊には、旧海軍から伝わる「スマートで 目先が利いて 几帳面 負けじ魂 これぞ艦乗り」という言葉があります。難しい状況の中でも目先を利かせて適切な判断が下せること、式典の開催よりも国民を救う方に注力してくれたことを私は誇りに思うのです。

海上自衛隊による体験航海の様子(柘植優介撮影)。
それから3年。今年(2022年)は海上自衛隊創設70周年記念ということで、令和4年度国際観艦式が開催される予定です。
各地の港ではイベントが盛りだくさんなので、ぜひ公式WEBサイトで詳細を確認し、足を運んでみてください。