2022年も自衛隊の新装備が界隈で話題となりました。それらのなかでも特に注目を集めたものを5種類ピックアップ。
2022年も間もなく終わりを迎えますが、防衛省・自衛隊は今年も多くの新装備を公開してきました。そこで、筆者(武若雅哉:軍事フォトライター)なりにSNSなどで話題になった装備品をピックアップします。
19式装輪155mmりゅう弾砲最初は陸上自衛隊から見てみましょう。まずは新型自走砲「19式装輪155mmりゅう弾砲」です。
2022年話題になった自衛隊装備。左からF-35A戦闘機、共通戦術装輪車の試作車、もがみ型護衛艦(武若雅哉撮影)。
これは通称「装輪15榴」と呼ばれるもので、我が国初のトラックタイプの自走砲です。導入から時間が経ち老朽化が進んだ「155mmりゅう弾砲FH70」の後継として開発され、今年の富士総合火力演習で初めて実弾射撃が公開されました。
装輪15榴の特徴は、なんといっても高速走行可能なタイヤ駆動の8輪車体に、155mmりゅう弾砲を直接搭載していることです。従来のFH70は専用のトラックでけん引し、射撃陣地に到着してから砲を展開して射撃しなければならず、準備に多くの手順と相応の時間が必要でした。一方、装輪15榴であれば、射撃陣地に進入したら少しの準備を経てすぐに射撃を始めることができます。
新たに搭載された半自動装填装置も、次弾装填までのスピードを飛躍的に向上させているため、いまだにFH70を使用している部隊の隊員からは「装填が早くて羨ましい」とも言われているとか。ただし、半自動装填装置のセンサーが故障した場合は、クランクを手回ししなければ装填できないため、故障した場合はFH70の方が速いという一面もあります。
共通戦術装輪車次いで取り上げるのは、9月下旬頃に撮影された「共通戦術装輪車」のプロトタイプです。こちらは、これまで陸上自衛隊が保有してこなかった全く新しいコンセプトで開発された車両です。16式機動戦闘車の車体システムを流用して作られているため、車両の新規開発で最も時間が掛かる車体の足回り部分については、既にできあがっています。つまり、車体上部の装備品を乗せ換えるだけで、様々な任務に対応できる、いうなれば車体のファミリー化構想を具現化した装備品です。
SNSなどで目撃例として画像が出回ったのは、歩兵戦闘車型と機動迫撃砲型ですが、この他にも偵察型、救急車型、人員輸送型など多くの派生形が誕生する予定です。
その一方で、別プロジェクトの次期装輪装甲車については、フィンランドのパトリア社が製造する「AMV XP」が選定され、2022年12月に決まったと防衛省が正式に発表しています。
見た目似ているけど中身一新の次世代ヘリ3つ目は陸上自衛隊の新型ヘリコプター「UH-2」です。
UH-2ヘリコプターUH-2は現在、陸上自衛隊で最も多く運用されているUH-1J多用途ヘリコプターの後継として開発された機種で、ベル412という中型ヘリコプターをベースに、SUBARUとベルが共同開発で生み出しました。

陸上自衛隊のUH-2多用途ヘリコプター(武若雅哉撮影)。
見た目の機体形状はUH-1Jと似ていますが、2枚ローターから4枚ローターに変更され、エンジンの数もそれまでの1基から2基へと増えています。またコクピットは、アナログ機器が並んでいたUH-1Jと異なり、大きな4枚の液晶パネルを備えたグラスコクピットへと進化しています。操縦性も格段に向上しているといわれ、自動飛行モードやオートホバリング機能などが搭載されたことから、パイロットの負担が軽減されているのも特徴です。
その一方で「完全マニュアル操縦なUH-1Jの方が面白い」というパイロットの声もあることから、もう少しUH-1Jに乗っていたいというパイロットも少なくないのかもしれません。しかし、2022年12月、防衛省・自衛隊は、保有する多くのUH-1Jをフィリピンへ貸与すると発表したことから、全国各地のUH-1J運用部隊は、あと3~4年後にはほとんどがUH-2へ機種更新しているでしょう。
F-35A戦闘機4つ目は、三沢航空祭で初めて本格的な飛行展示を披露した航空自衛隊のF-35A戦闘機です。
既に多くの場所で公開されている航空自衛隊のF-35Aですが、本格的な機動飛行は昨年まで公衆の面前で行われたことはなく、今年の三沢基地航空祭が初となりました。
総勢12機による大編隊飛行や、腕の良いパイロットによるド迫力の機動展示はF-35Aのポテンシャルの高さをまざまざと見せつけたと言えるでしょう。筆者も現地へ取材に行きましたが、急旋回時でも速度や高度が落ちず、会場上空をコンパクトに旋回している場面を見て、素直に戦闘機としての高いポテンシャルを感じました。
ステルス性満載な戦闘機&水上艦既存のF-15J戦闘機による機動展示と比較しても、そのコンパクトさは顕著で、パワーがありすぎるがゆえに機体の重さを感じさせるF-15Jに対し、F-35Aはまるで紙飛行機のようにクルクルと旋回していたのが印象に残っています。その一方で、パイロットに掛かるGは相当な数字になるはずですが、新たな耐Gスーツのお陰でパイロットに掛かる負担も幾分か緩和されているのでしょう。

航空自衛隊のF-35A戦闘機(武若雅哉撮影)。
また、F-35Aのエンジンスタートからタキシング、離陸までの一連の流れを公開したのもこの日が初めてでした。これまではプロのカメラマンでさえも許可されなかったのに、一般公開されたのは大変な驚きです。
もがみ型護衛艦最後は海上自衛隊から、もがみ型護衛艦です。
従来までの護衛艦とは一線を画す艦容で、凹凸の少ない外観は高いステルス性を感じさせます。また、ユニコーンアンテナとも呼ばれている統合マストは、すべてのレーダーやセンサーを外壁で覆うことで、こちらも高いステルス性を持たせることに成功しています。煙突の排気口も外壁に覆われているため、最も高い温度を放出する場所は熱探知されにくくするなど、まさに隙なしといったデザインです。
この「もがみ」型ですが、1番艦の「もがみ」と2番艦の「くまの」が今年開催された国際観艦式に参加。フリートウィークでは多くの見学者を集めるなど大きな反響を生んでいました。計画では22隻まで建造されるということで、海上自衛隊の新しい戦力としてアチコチで見られるようになるでしょう。
このように、筆者の独断と偏見で2022年に話題となった装備品を5つ紹介しましたが、2023年にはどんな装備品が登場するでしょうか。奇しくも12月16日には日本政府・防衛省から「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」のいわゆる安保3文書が発表されています。来年も注目を集める新装備が出るのでしょう。