道路上の渋滞などを把握する「ループコイル」などに代わり、より高精度な情報を取得できるシステムの開発が進められでいます。既存インフラを活用し、より精度の高い予測を低コストで可能にする“道路まるごとセンサー化”ともいうべきです。
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高速道路の渋滞を予測するには、高速道路を通過する車両数や車両の速度を正確に把握していなければなりません。そのため、道路上にはカメラのほか、道路面の5~10cm下には「ループコイル」というセンサーが埋められ、交通流を把握しています。
特殊な電線をループ状に丸めたループコイルは「ループ感知器」と組み合わせて用いられ、車両の金属部分を検出します。金属体のみを検出するため、人や動物による誤動作が少ないメリットから、交通状況の把握に用いられてきました。しかし、カメラやループコイルなどの従来のやり方でさらに情報を正確に得ようとすると、カメラやループコイルをより狭い間隔で設置しないといけず、多くのコストがかかってしまいます。
コストをかけずに交通状況の把握をより正確かつリアルタイムに知るにはどうすれば良いのか。その手法として、交通情報を高度化すべくNEXCO中日本らが開発を進めているのが、“道路まるごとセンサー化”ともいうべき技術です。
ここでは、道路下を通っている既存の通信用光ファイバーが活用されます。車両が通過する時の振動によって光ファイバーに外部から圧力が加わり、光ファイバーに流れる信号の位相が変化します。その変化した信号が光速でセンシング装置に届き、光ファイバーが埋められている区間の車両数や車両の速度をリアルタイムで知ることができるという仕組み。このシステムは、NECからNEXCO中日本へ2022年3月に納入されました。
光ファイバーを活用したセンシングの取り組み自体は数十年前から存在したようですが、コストを抑えるために「既存の」光ファイバーをセンサーとして活用したのは、NECによると世界初だそうです。
道路が頭脳を持つ!?これまで、車両数や車両の速度などの情報は、ループコイルなどによって「点」として捉えられていましたが、この新技術によって「線」として連続的に捉えられるようになり、精度の高い情報が得られるといいます。また、光ファイバー自体が伝達経路とセンサーの役割を兼ねているため、データネットワークを作ってデータを“取りにいく”必要がなくなり、よりリアルタイムで交通状況を分析できるようになるとのこと。
こうした光ファイバーセンシングで事故・渋滞の早期検知が可能となるだけでなく、さらにAI(人工知能)技術を組み合わせることで、様々な事象の予測精度を向上させ、情報提供や交通分散への対処をあらかじめ行えるようになるとのことです。
NECはこうした技術について、「すでに敷設されている通信用光ファイバーを「『感覚器』『神経系』として活性化させるとともに、AIを『脳』として掛け合わせて一体化させた新発想のネットワーク」と説明しています。