リニア中央新幹線の「神奈川県駅(仮)」の地下駅工事の巨大空間で、1日だけのコンサートが開かれました。
空間を活かして「コンサートホール並みの音響」リニア新幹線の車両(画像:JR東海)。
リニア中央新幹線の「神奈川県駅(仮)」の地下駅工事の巨大空間で、2023年10月14日(土)、1日だけのコンサートが開かれました。
「神奈川県駅」はJR・京王の橋本駅に隣接し、地下3階建て構造で、ホームは2面4線の計画。速達列車は500km/hで通過していきます。地下駅なので、地上から列車の姿は見えず、はじめて地中を脱するのはさらに西側、相模川を渡る地点となります。
2019年からはじまった工事現場では、底面までの掘削が完了。基礎地盤のコンクリートも敷き終わり、いよいよ駅構造物の建設が、週明けから始まることとなります。
約3年かけて誕生した巨大な「地下空間」は、これから一転して「埋まっていく」工程に切り替わります。地底から空を見上げる風景も見納めということと、この日が「鉄道の日」を迎えるのを機に、一般市民へ現場を開放するイベントとなりました。
この工事現場をどう活かすかというなかで、挙がったアイデアが「コンサートホールにしよう」というもの。深さ約30m、幅約50mで四方を壁に囲まれた空間は、たしかに音響面でも良環境といえます。とはいえ、企画段階では、どんな音響になるのかは想像がつかなかったといいます。
いざ迎えた当日は大盛況!迎えた当日、天気は日光が底面まで降り注ぐ晴れで、家族連れなど2400人近い市民が足を運ぶ結果になりました。

リニア中央新幹線の「神奈川県駅」の工事空間が、コンサートホールに(乗りものニュース編集部撮影)。
その時の楽団の雰囲気は、JR東海の丹羽俊介社長(同社音楽クラブ会長)によると「思ったよりもいい音が出ている」「観客の熱気がすごい」というものだったとか。思い付きのような「音楽会」は、思いもよらない「嬉しい誤算」(丹羽社長)となり、みな演奏がしやすかったといいます。
コンサートでは、地元である相原高校、相模原弥栄高校などの演奏も行われました。相原高校はもともとこの工事現場の地に校舎や演習農場がありましたが、2019年度から橋本台へ移転するなど縁が深い存在です。
会場は手拍子や拍手のなかアンコールも行われ、16時台までたっぷり演奏プログラムが続けられました。鉄道にちなんで、東海道新幹線の車内チャイムにも採用されたキャンペーンソング「会いに行こう」や「鉄道唱歌」、「銀河鉄道999」なども演奏されています。
プログラム最初のJR東海音楽クラブの演奏では、丹羽社長みずからトランペットを担当。楽団の最後列に目立たず座り、淡々とアンサンブルをこなしていました。トランペット歴は長く、中学生の時に吹奏楽部に入部して担当してからの付き合いだとか。大学までたずさわり、入社後の多忙な時期を経て、15年ほど前にふたたびトランペットを吹くようになったといいます。
盛況に終わったコンサートですが、今後このようなイベントが行われることはありません。先述のとおり、いよいよこの空間で、本格的な駅施設の建設が始まるからです。宮殿のようにそびえ立つ鉄骨組みの「支保工」(掘削面を留める壁が倒れないように支える)の風景も、少しずつ埋められ消えていくことになります。