大雪の影響で、帰宅時間帯の都内の国道246号はほぼマヒ状態となりました。なぜこのような状況になったのでしょうか。
2024年2月5日は湿った低気圧が寒気を引き込み、大雪となって関東平野を襲いました。5日昼以降から、首都圏では高速道路だけでなく一般道も相次いで通行止めに。各所で激しい渋滞が発生しました。
しかし、クルマで出勤すれば、クルマで帰るしかありません。特に交通が集中したのは、都内から多摩川を越えて神奈川県へ入るルート。東名高速や第三京浜が止まり、さらに並行する国道246号も多摩川方面から神奈川県内まで延々と下り線が通行止め。帰宅時間帯には、クルマで帰ろうとする人々が国道246号に入り、そこで「一歩も動けない」状況となったのです。
大渋滞となった国道246号(乗りものニュース編集部撮影)。
20時ごろ、世田谷区三軒茶屋の国道246号は、渋滞が全く動く気配がありませんでした。それこそ1ミリも動かず、エンジンの音だけが響いて、道路は不気味な静謐に包まれています。
環七通りと交差する上馬交差点も同じで、環七から246号へ左折で入ろうとする渋滞も、やはり1ミリも動いていませんでした。
桜新町付近の沿道のレストランで、クルマの動きを1時間追ってみることにしました。しかし、最初の30分間で目の前を通過していったクルマの台数は……驚愕の「0台」。文字どおり、ほんの少しも動かなかったのです。ワゴンや軽トラックの屋根には、次第に雪が積もっていきます。
それから、少し前が空いたところに5台が詰めていき、最終的に1時間経過時点で、23台が目の前を通過していきました。普段の国道246号だと、わずか十数秒で通過していく台数です。
店を出ると、すぐ目の前に、入店時に見かけたワゴンが留まっていました。人間がたった30秒歩いて到達できる距離を、1時間粘っても進めなかったことになります。
渋滞の1ミリも動かない「理由」を見た!あまりにも動かない国道246号の車列。
結局たどり着いたのは、環八通りと交差する「瀬田交差点」でした。国道246号はそこから先が通行止め。バリケードが置かれ、交通誘導員が待機しています。つまり、ここまで来た車は、環八通りを砧方面へ上がるか、田園調布方面へ出て二子橋まで行くしかありません(第三京浜も通行止め)。
交差点を見ると、その絶望の正体が何となく見えてきました。信号1サイクルに対し、国道246号下り線の通過台数があまりにも少ないのです。5差路であるのに加え、普段の国道246号のクルマの多くは信号待ちせずにアンダーパスでまっすぐ抜けていき、右左折車が比較的少ないので、信号時間が短めに設定されているのです。

Googleマップ上では渋滞状況も「計測不能」として色がついてすらいなかった。
2分40秒ほどの信号サイクルのうち、青信号はわずか7秒。右折矢印はそこから7秒と、まさに一瞬です。クルマは雪道でおそるおそる発進していくため、結局1回の青信号で通過できたのは数台程度でした。
環八通りも、田園調布方面が渋滞しており、青信号になっても砧方面からの車が前に詰まって発進できない状況が見られました。
「渋滞の車中ではなく暖かい部屋で過ごしたい…」いっぽう、国土交通省が「大雪です。極力外出を控えて。高速と一般道を同時通行止めすることもあります」と前日から大々的に発表しており、ニュースやネットメディアでも大雪に対する警戒が呼びかけられていました。
都内のWebサービス会社に勤務する30代男性は、営業の関係でクルマで出社したものの、通常帰宅を断念。オフィスの仮眠室で朝を迎える覚悟もあると話しました。「同じように遅く帰宅するなら、その時間を渋滞の車中ではなく暖かい部屋で過ごしたい」として、デスクでヒーターに当たってコーヒーを飲みながら、iPadのビデオ通話で奥さんや4歳の娘と「雪がすごいね~」と会話しているといいます。
同じく都内で工業部品メーカーに勤める30代男性は、ネットカフェに泊まることを選択。しかし近くはすでに満室が多かったため、似たような空間である「ビデオ個室」を利用したといいます。
23時になっても、24時になっても、国道246号には動きがみられず、辛抱強く待ってようやく「クルマ1台分の距離」が進むというありさまでした。
先述の男性のひとりは「人にも帰巣本能があって、外がどんな状況でも、帰宅時間が来ればいてもたってもいられなくなるのでしょう」と話します。