西武池袋線と新宿線が交差するジャンクションである所沢駅近くにあった「所沢車両工場」跡地に大型商業施設「エミテラス所沢」がオープン。所沢駅=「通過点のベッドタウン」から脱却を目指す大型開発が大詰めを迎えています。
西武リアルティソリューションズと住友商事が開発する大型商業施設「エミテラス所沢」(埼玉県所沢市)が、2024年9月24日(火)に開業します。開業に先立つ9月18日(水)、現地で内覧会が開催されました。西武グループが注力してきた所沢駅周辺の開発が、いよいよ大詰めを迎えています。
西武の2000系電車。所沢車両工場も製造を担当した(画像:写真AC)
所沢駅は西武池袋線と新宿線が交差するジャンクション駅で、特急を含めた全列車が停車。1日平均乗降客数は10万1123人(2023年)となっており、改札内の乗り換え人員を含めると、1日平均の利用者数は約22万人におよびます。
「エミテラス所沢」は、所沢駅西口駅前にある「西武所沢ショッピングセンター」の裏手に位置し、駅からもデッキで直結します。かつてあった西武鉄道の自社車両工場「所沢車両工場」跡地の大型開発です。
所沢車両工場は、車両の整備だけでなく、大手私鉄唯一の直営工場として車両製造も行い、地方鉄道へも車両を供給してきました。最盛期の1960年代は年間50両以上を製造しましたが、1993年3月に出場した9000系をもって車両製造業務は終了。2000年6月に武蔵丘車両検修場(埼玉県日高市)が開設されたことで、検査機能も武蔵丘に移り、役割を終えました。開設から閉鎖までに製造された車両は1200両以上におよびます。
跡地に建設された「エミテラス所沢」には、車両工場の“レガシー”を伝える施設も設けられます。駅と車両工場をつなぐ引込線があった場所の一部にレールを設置するほか、2000系電車の運転用シミュレータの一部を館内に設置。新交通システムの西武山口線「レオライナー」の前身で、「おとぎ電車」と呼ばれる蓄電池機関車も今後展示される予定です。
通過点のベッドタウンから「リビングタウン」に進化「エミテラス所沢」は地上7階建てで、延床面積は約12万9000平方メートル、店舗面積は約4万3000平方メートル。駐車場は約1700台を収容します。キーテナントとして全12シアター(1872席)を備えた映画館「T・ジョイ エミテラス所沢」のほか、ユニクロ、ジュンク堂書店、サミットストアなどが出店する予定です。
施設の中央に位置する吹き抜け空間には、国内の商業施設で最大規模となる547インチ(縦7m×横12m)の大型LEDビジョンなどを備えたイベント空間が設けられます。4階には富士山を望むことができる「そらもくひろば」、約1000席のフードコートも誕生します。
施設概要の説明会で、西武リアルティソリューションズの川田武 都市開発部 沿線開発事業室 所沢西口課長は「所沢エリアをベッドタウンから、暮らす・働く・学ぶ・遊ぶという4つの要素が全て揃う『リビングタウン』へ進化させる街づくりを進めてきました」と力を込めました。
所沢駅周辺では、2018年3月に駅ビル「グランエミオ所沢」の第1期、2020年9月に第2期が開業。2021年3月には埼玉西武ライオンズのベルーナドーム周辺が「ボールパーク」化されたほか、同年5月には西武園ゆうえんちもリニューアルするなど、西武グループが沿線価値の向上を目的とした取り組みを進めています。
今回の「エミテラス所沢」は、駅周辺開発の集大成となる賑わい拠点で、駅利用者数の更なる増加も見込めそうです。