1973年、5路線の「整備新幹線」が決定されます。新幹線建設の前段に達したことを意味するその決定ですが、それから41年を経た現在も未だそれらは完成しておらず、問題も残されていました。
今日から41年前の1973(昭和48)年11月13日、5路線の「整備新幹線」が誕生しました。
新幹線の建設は、国土交通大臣がまず「建設を開始すべき新幹線鉄道の路線」の基本計画を、続いてその「整備計画」を決定したのち、建設を指示する、というのが大まかな流れです。1970(昭和45)年に定められた「全国新幹線鉄道整備法(全幹法)」によって、そう決められています。
そして1973年11月13日に整備計画が決定した、簡単に言い換えれば建設の前段に達した5つの新幹線路線が特に「整備新幹線」と呼ばれています。北海道、東北、北陸、九州(鹿児島ルート)、九州(長崎ルート)の5路線です。現在、整備計画が決定した段階にある路線にはリニア中央新幹線もありますが、これは整備新幹線に含まれません。
現在から41年前に決定された整備新幹線ですが、未だそのすべては開業していません。区間によっては、ルートさえ決まっていない場合もあります。
開業予定は整備計画決定から62年後整備新幹線のうち、東北新幹線は2010(平成22)年12月4日に八戸~新青森間が延伸したことにより、整備計画の決定から約37年で全線が開業しています。また東北新幹線で、整備新幹線に含まれるのは盛岡~新青森間だけです。東京~盛岡間は全幹法以前に計画が動いていたため、含まれません。
福岡市と鹿児島市を結ぶ九州新幹線(鹿児島ルート)についても、2011(平成23)年3月12日に博多~新八代間が開通したことにより、整備計画の決定から約37年4ヶ月で全線が開業しました。
青森市と札幌市を結ぶ北海道新幹線はすでに全区間で建設が始まっており、完成の目処が立っています。
鉄道建設・運輸施設整備支援機構(鉄道・運輸機構)によると2014年10月1日現在、そのうち新青森~新函館北斗間の用地買収率は96%、工事着手率は100%。新函館北斗~札幌間については用地買収率が1%、工事着手率が7%です。開業はそれぞれ2015年度、2035年度の予定。つまり全線開業は整備計画の決定から62年後、ということになります。
ただ残りふたつの整備新幹線については、整備計画の決定から41年を経た現在でも、不透明な部分が残っています。
沿線自治体からの問題提起も福岡市と長崎市を結ぶ九州新幹線(長崎ルート)については、武雄温泉~長崎間が着工されており、用地買収率は49%、工事着手率は72%です。そして博多~新鳥栖間は九州新幹線(鹿児島ルート)の線路を走り、新鳥栖~武雄温泉間は既存の在来線と、線路の幅が違う新幹線と在来線の両方を走れる「フリーゲージトレイン」を活用。整備計画の決定から49年後の2022年度に開業する見込みです。
ただ「フリーゲージトレイン」を使い、新鳥栖~武雄温泉間で在来線を通ることについて懸念も出ています。佐賀県武雄市は、この方式では山陽新幹線への直通に問題が出る、時間短縮効果が少ないといった課題があるとし、2014年8月26日に開催された「武雄市新幹線活用プロジェクト」の総会では、在来線の活用ではなく新幹線(フル規格)の建設を実現させよう、その気運を盛り上げていこう、という方向性が確認されました。
東京都と大阪市を長野市や富山市、金沢市経由で結ぶ北陸新幹線についても、懸案が解決されていません。
高崎(東京)~長野間は1997(平成9)年10月1日、整備計画の決定から約23年11ヶ月で開業しました。そして長野~金沢間は2015年3月14日、整備計画の決定から約41年4ヶ月で開業する予定です。
金沢~敦賀間についても工事が始まっており、用地買収率は4%で工事着手率は12%。整備計画の決定から52年後の2025年度に開業する見込みです。
ただ敦賀~大阪間については、福井県小浜市付近を通る「若狭ルート」、琵琶湖西岸を通る「湖西ルート」、琵琶湖東岸を通る「米原ルート」が考えられていますが、どれになるかは現在も決定されていません。2013年、関西広域連合は工期と建設費が少ないとして米原ルートの早期実現を図る方針を打ち出していますけれども、先行きは未だ不透明です。
このように整備新幹線の整備に長期間を要している最大の理由として、財源の問題が挙げられます。現在、政府・与党内などに建設が進んでいる北海道新幹線の新函館北斗~札幌間、北陸新幹線の金沢~敦賀間について完成を前倒しする動きがありますが、問題はやはりその財源です。前倒しの実現のため、JRが新幹線の施設使用料を支払わねばならない期間を延長するなどの案が出されています。しかし2014年11月5日、JR東日本の社長が「受け入れられない」と表明。先行きはやはり不透明です。