東海道新幹線の最高速度が23年ぶりにアップし、2015年3月14日のダイヤ改正から285km/h運転が始まります。2月25日、ひとあし早くその速度を楽しめる「先行体験列車」が運転され、車内放送で「スピードの実況」や、運転の裏話などを聴くことができました。
2015年3月14日(土)のダイヤ改正から、東海道新幹線の最高速度が現在の270km/hから285km/hへ、23年ぶりにアップします。
それに伴いJR東海は2月25日、一般から参加者を募って、その速度をひとあし早く楽しめる「先行体験列車」の試乗会を実施。車内放送では現在速度の実況や運転技術、車両に関する説明、また裏話の披露などが行われ、知っていると東海道新幹線をより楽しめる話題が多く飛び出しました。
どんなものだったのか、始発の東京駅から終点の新大阪駅到着まで、時系列でその中身をお伝えします。なお車内放送の内容について、一部省略している部分があります。
●12時17分頃、東京駅発車前。運転士、山下さんのあいさつ
「この列車は特別なダイヤでの運行となっており、3月14日のダイヤ改正に先駆けて、最高時速285kmを体験していただきます。普段、運転士として私自身が気をつけていることは、時間に正確なことはもちろん、乗り心地の良い運転です。今日ご乗車いただいているお客様が笑顔になれるような運転をしたいと思っております。目的地まで安全、快適にご乗車いただけるように運転をいたしますので、よろしくお願いいたします。発車時刻は12時23分です。
●12時23分、東京駅発車
●12時25分頃、JR東海の新幹線鉄道事業本部長、巣山さんのあいさつ
「本日は東海道新幹線の時速285km先行体験列車、9285A(きゅうせんふたひゃくはちじゅうごえー)にご乗車いただきましてありがとうございます。東海道新幹線は3月14日のダイヤ改正よりこれまでの最高速度、時速270kmから285kmへと、1992年3月以来23年ぶりに速度向上を行います。最新の技術を駆使して全系統の社員が一丸となって取り組んだ技術の結晶によって、成し遂げることができました」
「本日ご乗車いただいておりますこの編成は、最新のN700A車両でございますけれども、そのなかでも最も新しい3日前にメーカーから納車をされたばかりの「G19編成」を使用いたしております」
●12時43分、新横浜駅発車
●12時43分、新横浜駅発車後に、車掌によるスピードの実況放送がスタート
「東海道新幹線の速度向上は1992年3月に300系「のぞみ」号がデビューして以来、23年ぶりとなります。速度向上に向けて最新型車両であるN700Aの導入や、N700系からN700Aへの改良工事、全線にわたる設備の確認や改良、運転士の訓練を実施し、3月14日のダイヤ改正より時速285kmに速度を向上いたします」
「ここで最高速度に合わせて、開業からのスピードアップを振り返ってみたいと思います」
●12時45分頃、横浜市神奈川区の横浜羽沢駅付近
「まもなく時速210kmとなります。1964年の東海道新幹線開業当時、「ひかり」号の最高速度は時速210kmでした」
●12時45分頃、横浜市神奈川区の横浜羽沢駅付近
「まもなく時速220kmとなります。1986年に最高時速を10km引き上げ220kmになりました」
「次の速度向上はJR発足から5年が経った1992年、300系車両による「のぞみ」号の運転が開始され、最高時速が270kmになりました。300系は軽量なアルミボディを採用するなど、フルモデルチェンジをした車両です。開業当初は東京~新大阪間で3時間10分ほどかかっていましたが、時速270kmへスピードアップすることで、2時間30分へ短縮されました」
●12時46分頃、横浜市旭区の二俣川駅付近
「ただいま、時速270kmです」
●12時46分頃、横浜市旭区の南万騎が原駅付近
「ただいま、最高速度に到達いたしました。のべ56億人を越える方が乗車された東海道新幹線50年の歴史のなかで、皆様は時速285kmを初めて体験されたお客様です。ここから約5分のあいだ、最高速度で走行いたします」
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「先行体験列車」は新横浜駅を発車しておよそ3分~4分で、最高時速の285kmに到達しました。N700AとN700系は加速性能が2.6km/h/s(毎秒時速2.6km)と、高速鉄道車両でありながら通勤電車に近い加速力を持っているのが大きな特徴です。ちなみに、東海道新幹線の先代車両である700系の加速性能は2.0km/h/s、山手線E231系電車の加速性能は3.0km/h/sです。
●12時46分頃、横浜市旭区の南万騎が原駅付近
「東京駅のホーム上でのご案内表示でご覧いただいたお客様も多いかと思いますが、この列車は時速285kmに合わせ、『団体列車285号』として運行しております。これから『列車番号』の意味についてご説明いたします。東海道・山陽・九州新幹線には1本1本の列車に数字4桁とアルファベットの「A」からなる列車番号が付けられております。たとえば「0100A」という列車番号の場合、お客様には「のぞみ」100号としてご案内をしております。この列車の列車番号は『9285A』と申しまして、本日特別に設定したものです。千の位に付く「9」は臨時列車を意味し、最後のアルファベット「A」は東海道・山陽・九州新幹線を表す記号です」
●12時54分頃、神奈川県小田原市の鴨宮駅付近
「列車はまもなく小田原駅を通過いたします。この列車は最高時速270kmで走行しているほかの列車を合間を縫う形で、時速285kmで運行しています。本来であれば小田原駅通過後も最高速度で走行できますが、この列車では先行列車との間隔を保つため、小田原駅を通過してすぐにある小峰トンネルの入口から運転士がブレーキをかけ、小田原駅から熱海駅のあいだを時速150km程度で走行します」
●12時55分頃、神奈川県小田原市の小田原駅付近
「また通常、運転士はお客様の乗り心地を考え、車で例えますとアクセルやブレーキなどをなるべく操作しないで運転しています。登り坂で速度を緩めたり、下り坂でスピードを上げたりするなど、勾配を活用しながら運転をしますので、景色や勾配を覚えながら運転の技術を磨いていきます。この列車は、ほかの列車より速い速度で運転しているため、今回は運転士がブレーキをかけて減速しますが、これも普段は体験いただけません」
●13時2分頃、静岡県熱海市の熱海駅付近
「列車は熱海駅を通過しております。ここから静岡駅までは断続的に最高速度を出しながら走行いたします」
●13時9分頃、静岡県富士市の岳南江尾駅付近
「ただいまこの列車は直線区間を時速285kmで走行しています。今回の車両改良によってN700系では車体を傾斜させることで直線区間と同様に、曲線区間でも時速285kmで走行することが可能となりました」
「このような様々な改良工事の効果を確認するため、営業列車終了後の夜間や、営業列車の合間を縫って走行試験を繰り返し実施してまいりました。
●13時11分頃、静岡県富士市の新富士駅付近
「列車はまもなく新富士駅を最高速度で通過いたします。東海道新幹線の駅のホームの長さは約400mございます。時速270kmですとおよそ5秒33の時間がかかりましたが、時速285kmでは約5.05秒で通過いたします。ちなみに100m世界記録ウサイン・ボルトのペースですと、38.32秒かかります。いまから新富士駅を約5.05秒で通過をいたします」
●13時28分頃、静岡県掛川市の掛川駅付近
「列車はまもなく掛川駅を通過いたします。前を走る列車との間隔を保つために、掛川駅通過後に運転士がブレーキをかけます。掛川駅から浜松駅までの間は通常、時速270kmで走行いたしますが、本日はここから約10km以上のあいだ、時速約180kmに抑えて走行いたします」
「運転士は運転をしながら次の駅までの残り距離と時間から、いま何キロで走れば良いか、速度計算をしております。たとえば次の駅を通過するまで、残りの距離が20km、時間が5分の場合、平均時速は何キロで走ればよいでしょうか。『距離20km÷時間5分』の計算式となり、5分は『12分の1時間』ですから、20÷12分の1で時速240kmで走ればよいということです。東海道新幹線のダイヤは駅に到着するときだけではなく、通過するときも15秒単位で時刻を定めておりますので、運転士は駅と駅とのあいだで3回以上、速度計算をすることとなっています。また万が一、車両故障が発生した場合はその連絡や処置も合わせて行います。
●13時46分頃、愛知県豊川市の愛知御津駅付近
「この列車は現在、時速271kmで運転しております。この先の坂野坂トンネルを抜けますと、列車は約6分ほど最高速度で走行させていただきます。名古屋駅でお降りのお客様は、本日、最高速度を体験いただける最後の機会となります」
●13時53分頃、愛知県安城市の三河安城駅付近
「ただいま列車は三河安城駅を最高速度で、時刻通りに通過いたしました。次の名古屋駅まで、およそ9分です」
●14時2分、名古屋駅到着。
運転士が気をつかう米原駅付近●14時6分、名古屋駅発車。
●14時10分頃、愛知県稲沢市平野町付近
「まもなく最高速度になります」
「ここから1分ほど最高速度で走行します。このあと大きな左カーブがあるため、時速を250km程度に落とします。その後、岐阜羽島駅手前の木曽川から再び最高速度で4分ほど走行いたします」
●14時14分頃、岐阜県安八町付近
「ただいまこの列車は、直線区間を時速285kmで走行しております。東海道新幹線では最高時速を285kmへ向上させるため、N700系をN700Aの仕様に合わせる改造工事を3年で80編成に行っております。N700A仕様に改造されたN700系は車体側面についている「N700」のロゴマークの横に、小さくアルファベットの「A」という文字がついています。よろしければ駅などで車両を探してみてください」
●14時20分頃、滋賀県米原市の近江長岡駅付近
「まもなく米原駅を通過いたします。米原駅の周辺は雪が多く降り積もる場所のため、東海道新幹線で唯一、スプリンクラーが設置されています。
●14時39分、京都駅到着、14時40分発車。
●14時43分頃、京都市向日市の向日町駅付近
「このあと進行方向右側に山崎のウイスキー工場が見えてくるあたりから、速度を上げてまいります。本日最高速度で運転する最後の区間です」
●14時46分頃、大阪府高槻市の上牧駅付近
「ただいま、最高速度に到達いたしました。ここから約1分20秒ほど最高速度で走行させていただきます。これにて私からのご案内は終わらせていただきます。これからも東海道新幹線のご利用をお待ち申し上げております。本日はご乗車いただきましてありがとうございました」
●14時53分、新大阪駅到着。
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3月14日に東海道新幹線で行われる、23年ぶりのスピードアップ。それによって東京~新大阪間の最短所要時間が3分短縮されて2時間22分になるほか、天災などで遅延した際に回復しやすくなるといったメリットがあります。