航空自衛隊も運用し「最強の戦闘機」ともされたF-15が、実戦配備から40周年を迎えました。なぜ長期にわたり「最強」であれたのでしょうか。
航空自衛隊も運用している米・ボーイング社の戦闘機F-15「イーグル」が今年2016年1月、実戦配備40週年を迎えました。
F-15は1972(昭和47)年に、プロトタイプのYF-15が初飛行。そして最初の量産型F-15Aと、その複座型F-15Bが1976(昭和51)年、米バージニア州のラングレイ空軍基地に駐留する第1戦術戦闘航空団へ配備されました。現在も、アメリカ空軍における主力戦闘機のひとつとして現役です。
後継機の戦闘機F-22「ラプター」が2005(平成17)年に配備されるまでおよそ30年ものあいだ、F-15は「最強の戦闘機」として君臨し続けました。
F-15が“最強”といわれた根拠のひとつは、登場当時、群を抜いたその機動性です。
戦闘機における旋回性能は、主翼に発生する揚力(上向きの力)が大きいほど高まりますが、F-15は主翼が非常に大きいだけでなく、胴体からも揚力を発生させる設計が盛り込まれました。
ただ、いくら旋回性能が高くとも、何十秒もそれを発揮し続けると失速(揚力が急に失われる現象)につながってしまいます。そこでF-15は、従来のエンジンよりも強力なパワーを発揮する「F100ターボファン」を2基搭載。これによって失速を防ぎ、長時間にわたって高い旋回性能を維持し続けることを可能にしています。
大きな揚力とパワーは、旋回性能だけでなく、加速力や上昇力にも反映されます。F-15は高度3000mまでわずか27秒で駆け上がるなど、世界記録を片っ端から塗り替えました。
従来機の数倍という視程をもつ新型レーダーの搭載も、F-15が非常に優れていた点です。前任機である戦闘機F-4「ファントムII」では、パイロットのほかにレーダー手を必要としたのに対し、F-15はコンピューターが情報処理することによって、パイロットひとりでレーダーを使えるようになっています。
F-15、高性能の代償F-15はこれら“高性能の代償”として、あまりに高価(当時でおよそ3000万ドル)な機体になってしまいました。
しかし、1982(昭和57)年にレバノンで発生したベッカー高原上空戦では、イスラエル空軍機のF-15がシリア空軍機を40機も撃墜し、2人の「エースパイロット」が誕生。また1991(平成3)年の湾岸戦争では、アメリカ空軍とサウジアラビア空軍のF-15がイラク軍機を39機撃墜しており、その価格に見合った性能を発揮しています。
2016年現在、F-15の撃墜記録は117機です。対し、空中戦における被撃墜数はなんと「ゼロ」。地対空ミサイルや高射砲に撃墜された記録はあるものの、F-15は航空機同士の実戦で一度も撃墜されたことがなく、その無敵の活躍によって「最強戦闘機」の名を不動のものにしたのです。
F-15の総出荷機数は、三菱重工におけるライセンス生産機(航空自衛隊向けF-15J)も含め1500機を突破。三菱重工での生産は終了しましたが、F-15を開発した旧マクダネル・ダグラス社のセントルイス戦闘機工場を引き継いだボーイング社では、現在も対地攻撃能力を強化したF-15E「ストライクイーグル」を、輸出向けに生産し続けています。
そんな「最強戦闘機」も寄る年波には勝てず、特に新型戦闘機F-35の実用化が目前(垂直離着陸型のみ実用化済み)であることから、F-15は売れなくなってきました。恐らく数年のうちに量産は完了する見込みです。
しかし現役機はまだ当分、第一線に残り続けるでしょう。現在、沖縄の米・嘉手納空軍基地には、F-15「ゴールデンイーグル」と呼ばれる改良型が配備されています。「ゴールデンイーグル」は、新世代の「AESAレーダー」への換装といったアップグレードが施され、「極東における最強の戦闘機」であり続けています。
「ゴールデンイーグル」は、航空自衛隊のF-15(F-15MJ)の性能をさらに向上させるにあたり、ひとつの目安になるでしょう。F-15は大きな機体がゆえに、新たな電子機器を搭載するといったアップグレードがしやすく、まだまだ性能を向上できます。
F-15はもはや、「最強戦闘機」ではないかもしれません。しかし今後も「強い戦闘機」であり続けることは十分に可能です。