中国の高速列車ではほとんどの列車で、日本の新幹線でいう「グランクラス」にあたる「ビジネスクラス」が設定されています。しかし、このビジネスクラスを利用してみたところ、「グランクラス」とは結構違いがありました。

座席はどっちかというと「旅客機のビジネスクラス」

 JR東日本がグリーン車よりも上級のサービスを目指した「グランクラス」を導入して以来、新幹線が3クラス制になりました。多くの高速列車が走っている中国でもほとんどの列車において、5列座席の2等車、4列座席の1等車、そして3列座席の「ビジネスクラス(商務車)」の3クラス構成です。しかし、このビジネスクラスに乗ってみたところ、「グランクラス」とは結構違いがありました。

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中国の高速鉄道(細谷泰正撮影)。。

 今回、上海から南京を往復する際に高速列車のビジネスクラスを利用してみました。筆者が乗った中国の高速鉄道のビジネスクラスのシートは1席ずつ囲いがあり、その中で座席の形状が変化するタイプで、背もたれを倒しても後ろの乗客のスペースに影響を及ぼすことがありません。また、寝る体勢になれるフルフラット・モードも選択でき、どちらかというと旅客機のビジネスクラスのようです。座席の間隔も十分確保されていてフルフラットにしなければスーツケースを座席の前に置くことができるほか、車端部に荷物置き場も設けられています。

 乗車したのは上海虹橋駅から南京南駅間で、所要時間はおよそ1時間半でした。運賃は二等車で2835円(135元)、一等車で4788円(228元)、ビジネスクラスで8998円(428元)となります。ビジネスクラスの運賃は時間帯によって食事が提供されるため、食事の有無により運賃は多少上下します。

 中国では高速列車の普及により所要時間はかなり短縮されましたが、どの駅も規模が大きく構内の移動に時間を要します。駅構内に入るときの保安検査と本人確認、乗車の直前に行われる改札など、少なくとも2回は列に並び、順番待ちをする必要があるからです。

 しかし、ビジネスクラス利用者に対しては、そうした駅における煩わしさのほとんどを克服できるサービスが提供されているようです。

ここまで至れり尽くせりだとは…。

 まず、駅の入り口からビジネスクラスには専用のドアが設けられていて普段は混雑する入り口を利用する必要がありません。さらに、入り口を入るとすぐに保安検査のゲートが用意されていて、待つことなく検査を受けることができます。

座席凄ッ!! 中国版「グランクラス」に乗ったら日本と違いすぎました…。鉄道っぽくない体験の連続
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中国の高速鉄道「ビジネスクラス」利用者むけの駅入口(細谷泰正撮影)。

 受付カウンターで本人確認と乗車券の発券が行われたのち、番号札を受け取り案内されたのはラウンジです。ここでは飲み物やスナック類がセルフサービスで提供されています。そして、着席したテーブルで番号札を置きます。発車時間の10分ほど前になると案内係が来てくれるためです。

 案内係が来たら、一緒にラウンジを出てホームに向かいます。

中国の鉄道駅ではホームごとに異なる改札口が設けられていますが、そこではすでに乗客の列ができていて改札が始まるのを待っています。

 改札は発車時間の数分前にならないと始まりませんが、ビジネスクラスの乗客はその列には並ぶことなく、また改札の開始時間とは関係なく、改札口の脇にある有人ゲートを通ってホームに向かいます。その方法は空港で行われている、旅客機の優先搭乗に似ています。

 案内係と一緒に改札口を通過後、ホーム上のビジネスクラス乗車位置まで案内されました。ここで案内係とはお別れとなり、あと数分で到着する列車を待つことになります。

 到着した列車はドアが開くと下車する乗客に続き、客室乗務員が下りてきます。今度はその乗務員の案内で席に向かいます。発車後は、すぐに客室乗務員が飲み物の注文を聞きに来ます。

 ビジネスクラスではミネラルウォーター、コーラ、オレンジジュース、紅茶、緑茶が無料で提供されます。飲み物と一緒にビジネスクラスを意味する商務座と書かれたスナック菓子のパッケージを受け取ります。このパッケージもビジネスクラスだけのサービスです。また、乗る時間帯によっては食事の希望を聞かれます。

筆者が乗車した列車では鶏肉と豚肉の2種類から選べるとのことでした。

「ビジネスクラス」以外の日本との違いって?

 出てきた食事はパレット状のトレーの中にパックされた弁当で、車内の電子レンジで加熱したばかりの状態で出されました。食事の内容はこのお弁当とカップ入りのスープでした。以上が中国の高速列車でビジネスクラスを利用したときのサービス内容となります。

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中国の高速鉄道「ビジネスクラス」乗客むけの食事(細谷泰正撮影)。

 たしかにほかの座席クラスと比較すると価格面では大きな差がありますが、大きな荷物をもって快適に中国を旅行したい場合には、ビジネスクラスの利用を検討する価値は十分あるのではと感じたのが率直な感想です。

 ちなみに、列車内を歩いてほかのクラスや車両の設備などを見て回りましたが、日本の新幹線では見られない設備なども確認できました。

 たとえば、一等車、二等車を含めてすべての車両には荷物スペースが設置されています。「インバウンド客などが有料の荷物スペースを予約なしで使用し、予約していたのに使えない」トラブルが不定期で発生している日本の新幹線も参考になるのでは感じました。

 それと、中国では水筒に茶葉を入れて持ち歩く習慣があります。駅や空港ではどこでもお茶用の給湯機が設置されていて、持ってきた水筒にお湯を注ぎこむことができます。この給湯機は高速列車にも備え付けられています。

この点は、かつて設置されていたもののすべて撤去されてしまった、日本の新幹線における「冷水器」の現状と比べて羨ましい気がしました。

 2024年11月末より、日本から中国を旅行するための観光ビザが不要になりました。中国内は高速鉄道を利用して車窓の景色を楽しみながら旅行してみるのもよいのではと思いました。

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