生産終了から13年が経過してもファンから支持される6代目スバル「サンバー」。スバル最後の独自開発の軽自動車となったモデルのため、今の軽トラにはない個性とメカニズムが詰め込まれており、だからこそ人気を集めるようです。

新車よりも中古車が高い逆転現象が起きたワケ

 スバル独自開発の軽自動車としては最終モデルとなった6代目「サンバー」は、2012年にファンから惜しまれつつも生産を終了しました。しかし、その人気は些かも衰えてはいないようで、「サンバー」がダイハツ「ハイゼット」のOEMモデルに切り替わってから13年が経過した2025年現在でも、街中で見かけることが多い軽自動車のひとつと言えるでしょう。

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1973年から1982年まで販売されていた3代目スバル「サンバー」。なお、1980年のマイナーチェンジで、軽トラ&軽ワゴンでは初となる4WD仕様が登場している(画像:スバル)。

 このような高い人気を反映してか、6代目「サンバー」の中古車相場はいまだ高値安定を続けており、2011年にバン・トラック合計1000台限定で販売された「WR BLUE LIMITED」はもちろんのこと、2009年のマイナーチェンジで登場した最終型の低走行中古車などは、新車価格を大きく上回る150~250万円ほどで販売されることも珍しくはありません。これはダイハツOEMである現行型「サンバー」の新車を購入できるほどの金額です。

 なぜ、そこまでスバル独自開発の「サンバー」が人気を集めているのでしょうか。その理由は6代目までの「サンバー」が、スバルらしい個性とこだわりが詰まったオンリー・ワンのメカニズムを持つ軽商用車だからです。

 その特徴は軽自動車唯一のRR(リアエンジン・後輪駆動)レイアウト(4WD車の設定もあり)であることと、合理的な設計によるゆとりのあるユーティリティ、足元が広く快適な運転席周り、シャシーフレーム構造の採用による高い安全性、優れた操縦安定性と路面追随性、乗り心地に優れた四輪独立懸架サスペンションの採用、クラス唯一のスムーズで静かな4気筒エンジン、そしてスーパーチャージャーの設定などにあります。

新たな安全基準に適合するためボディを大型化

 6代目「サンバー」は軽規格が変更された後の1999年1月に発表されました。ライバルとなる他社製の軽ワンボックスバン&ワゴン、軽トラックも衝突安全性を向上させるため、ほぼ同時期にフルモデルチェンジを迎えています。このときに登場した軽自動車は、登録車と同じ水準の衝突安全基準を確保するため、全長を10cm、全幅を8cm拡大するとともに、新たに設計された安全性の高いボディに一新されています。

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2011年にバン・トラック合計1000台限定で販売された「WR BLUE LIMITED」。WRCに参加していたインプレッサWRXと同じ「WRブルー」でペイントされている。

 しかし、そのアプローチはスバルと他社では異なり、ライバルメーカーの軽商用車の多くが車体の前端にタイヤを配置したセミキャブタイプになったのに対し、「サンバー」は数少ないフルキャブタイプを継続。衝突安全基準にはシャシーフレーム構造を進化させた新環状骨格構造を採用することで対応しました。また、全グレードへのSRSエアバッグやABSの採用拡大など、乗員保護やブレーキの強化もこのときに合わせて行われています。

 この「サンバー」の設計は多くのメリットがありました。ライバルのセミキャブタイプの軽商用車はホイールベースが長くなったことで小回りがきかなくなったほか、田んぼや林道などで路面の凹凸や段差を乗り越える際に、車体下面が使えてスタックしやすいという弱点がありました。

 それに対し、「サンバー」は安全性を確保しつつホイールベースの短さを堅持したことで、前出したライバル社の欠点がほぼなかったのです。おまけにフルキャブのようなホイールベースの張り出しもないため、ペダルレイアウトへの干渉もなく足元も広々していました。

 そして、後輪へのトラクションが掛かりやすいRRレイアウトや、スバルのお家芸とも言える悪路や雪道に強い4WDが選べることもメリットでした。加えて、スムーズな4気筒エンジンなどといった従来モデルから引き継いだ長所も相まって、「サンバー」の名声はより一層高まったのです。

流通豊富な中古「サンバー」 購入時の注意点とは?

 こうした、独自色の強い構造から、いつしか「サンバー」は共通の駆動方式を持つドイツ製高級スポーツカーに因んで「農道のポルシェ」との異名で呼ばれるようになりました。

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2022年に登場した8代目スバル「サンバー」。2009年の乗用モデルを皮切りに、2012年2月にダイハツ「ハイゼット」のOEM車が7代目「サンバー」となった。これによってスバルの軽自動車はすべてダイハツ製に切り替えられた(画像:スバル)。

 なお、6代目「サンバー」は約13年にわたり生産・販売が続けられたことから、中古車の流通量も豊富です。前述したとおり、高年式車や低走行車、限定車などは新車価格を上回る高値で取引されていますが、2009年以前の前期型や中期型、走行距離が延びた車体は年式相応の価格で取引されています。

 とはいえ、年々良質な中古車は数を減らしており、それと反比例するかたちで中古車相場は上昇基調にあります。6代目「サンバー」が欲しい人は早めに動いたほうが良いでしょう。

 中古車の購入時に注意すべきポイントはフレームのサビと傾斜エンジンゆえのオイル漏れです。後者はオイルパンやヘッドカバー、リアエンドクランクシールなどから漏れることが多く、修理費用も5~10万円程度で直ることがほとんどですが、前者の場合は修理に多額な費用が掛かり、ケースによっては修理不能となることがあります。中古車を選ぶ際には下回りを忘れずにチェックするようにしましょう。

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