高速道路を走っていると、不意に強い睡魔に襲われることがあります。場合によっては事故の原因ともなるこの現象には「ハイウェイ・ヒプノーシス」という名前が付けられているのですが、一体どうすればこれを防ぐことができるのでしょうか。

渋滞列への追突事故の原因にも

「眠くな~る・眠くな~る・あなたはだんだん眠くな~る」……まるで睡眠術にかけられたかのように、高速道路を運転中、眠くなることがあります。事前にしっかり休暇を取って、体力・集中力を溜め込んでもダメ、眠気覚ましのドリンクを飲んでもダメ、ガムを噛んでもダメ…どういうわけか、筆者の場合は特定の路線に入ると、あくびが出始め強い睡魔を覚えることがあるのです。なぜ特定の路線で睡魔に襲われてしまうのでしょうか。

「眠くな~る・眠くな~る・この高速道路を走ると眠くな~る」…...の画像はこちら >>

高速道路を走ると眠くなる場合があるのは何故なのだろうか。写真はイメージ(画像:写真AC)。

 高速道路の特定路線で、強い睡魔を呼び込む現象は、道路用語で「高速道路睡眠現象」=「ハイウェイ・ヒプノーシス」と呼ばれています。「ハイウェイ・ヒプノーシス」は交差点やカーブなどの変化が少なく、景色もそう変わらない路線で起こりやすく、これに加えてトンネル内などの光の暗い路線であれば、より強く出やすい現象です。

 一説によれば、カーブなどがなく真っ直ぐ伸びる路線で、運転者の目に入ってくる等間隔の白線もまた集中力を削ぎ、リラックス状態にしてしまうため、睡魔を呼び起こすのだと言われています。渋滞の列に後続車が突っ込む事故が度々起きますが、このうちの一部も「ハイウェイ・ヒプノーシス」が原因のケースだとも。集中力が鈍化し、ブレーキを踏みこむのが遅くなることで追突事故を起こしてしまうこともあります。

 2014年から15年にかけて、警察庁やNEXCO各社が行った「レッツブレイク」という安全啓発キャンペーンは、「高速道路に入り走行距離100km未満、時間にして約1時間以内の場所で死亡事故が約5割発生」しているという実態を踏まえたものでした。疲労や睡眠不足の状態でなくても、単調な高速道路では「ハイウェイ・ヒプノーシス」のために意識がもうろうとすることがある、と注意を呼びかけていました。

 そこで、NEXCO各社は次のような対策を紹介しています。

・2時間に1回は休憩を取る。休憩中は腕を伸ばしたり、背伸びをしたりと疲れた体を動かすようにする
・高速道路を運転中にあくびが出たら危険信号。運転時間に限らず、サービスエリアやパーキングエリアで休憩を取り、仮眠するなどして体を休める
・カフェインを摂取し、短時間睡眠をする。カフェインの睡眠抑制効果は一般に約10~20分で出ると言われているため、先にカフェインを取っておき、効果が出るまでの間を睡眠に充てることで、相乗効果を計る

睡魔が襲う「魔の時間帯」とは

 一方、「ハイウェイ・ヒプノーシス」の危険性やその対策の啓蒙だけでなく、眠気を呼び起こさせないような“物理的な対策”も高速道路には備わっています。「直線道路に厚みが異なる塗装を交互に配置する」「白線の外側にはランブルストリップと呼ばれる垂直に掘られた溝を連なって設ける」といったものです。

「眠くな~る・眠くな~る・この高速道路を走ると眠くな~る」…高速道路ならではの「催眠現象」その原因と対策とは
Large figure2 gallery2

高速道路ではこまめな休憩が推奨されている(画像:写真AC)。

 もしクルマが「ハイウェイ・ヒプノーシス」によって車線をはみ出すようなことがあれば、振動や音によって警告します。この他にも下り坂やカーブなどで、一定間隔に路面を横切るような数本の薄層舗装を施し、あえて高速運転を単調にさせない工夫もなされています。

 ちなみに、人間主に3つのリズムによって、バイオリズムが構成されているとも言われています。

・サーカディアンリズム(概日リズム):24時間周期の眠気のリズム。「午前2~4時」に眠気を引き起こす生体リズム
・サーカセミディアンリズム(半概日リズム):12時間周期の眠気のリズム。

「午前2~4時」と「午後2~4時」に眠気を引き起こす生体リズム
・ウルトラディアンリズム(超日リズム):2時間周期の眠気のリズム。単調な環境下に置かれると2時間ほどで眠気が顕著に現れる

 これらは、睡眠不足や食事で満腹状態になっていることはそう関係がなく起こりやすいリズムとも。これを受けて考えれば、午前・午後ともに「2~4時」は要注意ということです。この時間帯に「ハイウェイ・ヒプノーシス」を起こしやすい高速道路を運転する場合は、より一層の注意を持っておくほうが良いでしょう。

 とはいえ、「ハイウェイ・ヒプノーシス」状態に陥りながらも、すぐにはクルマを停められない場合もあります。こんなとき筆者は窓を開けて大声で叫んでみたり、自分の顔面を引っ叩いたり、手をつねったりしますが、さほど効果を得られたことはありません。

編集部おすすめ