ETC大規模システム障害中に通行した人に高速道路料金の後日精算を求めていたNEXCO中日本が方針を一転、利用者に料金を還元することとなりました。なぜこのような決断に至ったのでしょうか。
「料金所でたいへんごめいわくをおかけし、弊社としてもお詫びが必要と考えていた」
ETCの大規模障害時、開放されたレーンを通過した利用者に対してNEXCO中日本は事後精算を求めていた。2025年4月6日(中島みなみ撮影)
2025年5月2日、NEXCO中日本の縄田 正社長は本社で急遽会見を開き、同年4月6日に中央道、東名、新東名などで発生したETC大規模障害の利用者対応を公表しました。
4月6日0時から7日14時までの間、システム障害の影響があった利用者すべてについて、何らかの還元を行います。バーが開放された料金所を通過した人に求めていた後日精算も撤回する方針です。
後日支払いなどですでに支払い済みの場合は、ETCマイレージサービスでの同額還元、一般レーンなどで現金、またはクレジットカードなどによる支払いを行っている場合は、クオカードを送付します。
また、大口多頻度割引の適応となるコーポレートカードを利用の場合は、今後の請求とシステム障害時の利用料金を相殺する形で還元します。
今回のシステム障害の対応は、NEXCO中日本がETC大規模システム障害に対応するマニュアルを用意していなかったことで、料金所ごとに異なる対応がされていたことが、さらに混乱を拡大させました。縄田社長は次のように話します。
「ETC(料金所の)無線通信を切断した料金所と接続したままの料金所があって、(利用状況がわからないので利用者に)後日の支払いを広く呼びかけました。ただ、その後の原因究明で無線通信が行われていた課金データは正常であることがわかり、後日支払いの有無に関わらず、(正常に通信が行われていた場合は)通常料金の請求がなされることがわかりました。混乱を招いてしまったおわびと、不公平感の解消に向けて、利用料金の全額を還元します」
でも「無料」ではありません!同社はシステム障害の対応として、料金所の無線通信の電源を切断して、ETC通信を終了することで事態の収拾を図ろうとしました。しかし、その周知は充分に浸透せず、一部の料金所では電源を切断しませんでした。

会見する縄田 正社長。2025年5月2日(中島みなみ撮影)
さらに「後日支払い」を呼びかけ、約3.9万人の利用者が支払いに応じました。その中にはETCシステム障害時に正常に通信が成立したにも関わらず、後日支払いのウェブサイトで決済をしたケースもあり、二重払いになっている可能性があります。
こうしたケースでの解消を図るために、利用者全体で利用料金の返還を行う決断をしました。
ただ、中井俊雄保全企画本部長は「無料ではない。通行料金を請求した上で還元する」と、話します。
その上で「後日支払い」のウェブサイトは閉鎖し、利用区間の利用者は請求を行わないことも明らかにしました。
車載器を搭載しない現金車にも、ウェブサイトでの申請を前提に払い戻しをします。
現状で通行料金が未払いの利用者は推定約51万台。還元などの対象となる利用者は約45万台。かかる費用は約6億円を見込んでいます。