埼玉県秩父地域の国道140号で新たなトンネル「大滝トンネル」が、現道の落石をきっかけに予定外の“暫定開通”を果しました。将来の壮大な高規格道路の一部ですが、その前後区間もかなり厳しいものがありました。

15km/h制限で暫定開通した「作りかけトンネル」

 埼玉県秩父地域を貫く国道140号のうち、秩父市大滝地区で建設中の新たなトンネル「大滝トンネル」が、2025年7月30日から一般車も含め“暫定開通”しました。現道が落石により不通となるなか、建設中のトンネルを供用することとなったのです。

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暫定開通した国道140号「大滝トンネル」(乗りものニュース編集部撮影)

 国道140号は7月11日夜、道の駅「大滝温泉」から秩父市街へ2kmほど進んだ国道140号の現道で大規模な落石が発生。路面の陥没やガードレールの損傷、川側の擁壁の傾きなどが確認され、さらなる崩れの危険もあることから通行止め解除まで4か月程度かかるとされました。

 落石現場付近は、140号が荒川に沿って蛇行する区間で、急斜面の山裾を切り開いているため急カーブが連続し、落石や岩盤崩落など多く発生していました。迂回路がないことから、この危険な区間約7kmを、約2kmのトンネルでショートカットする道路として、2028年頃までの予定で大滝トンネルが建設されていたのです。

 7月16日に緊急車両やスクールバスの通行から始まり、約2週間を経て一般車の通行も可能となりました。ただし「未舗装(砂利)」のため、最高速度は15km/hまで。歩行者、自転車・バイク(二輪車)は通行不可となっています。

 秩父鉄道の三峰口駅から国道140号を西へ向かうと、その入口は唐突に現れます。トンネルの本体工事はほぼ完成しているようです。誘導に従って中へ進むと、未舗装とはいっても、かなり締固められた土砂が敷かれており、“砂利道”という印象はありませんでした。

ただし区画線はないため、カラーコーンで上下線を分けています。

 トンネル内は十分明るいですが、壁の照明はあくまで工事用なのが分かります。また、非常口や非常設備、退避設備などはまだできていません。走行そのものは問題なく、15km/h以上の速度で走るクルマも見かけましたが、事故や火災が起これば、ひとたまりもない状態になる恐れがあることは想像がつきます。

壮大すぎる高規格道路の“ほんの一部”

 今回、図らずも暫定開通したことで、その快適さを知ることとなった「大滝トンネル」ですが、このトンネルは「西関東連絡道路」と呼ばれる約110kmもの高規格道路の一部です。

「これが高規格道路の一部に…?」 超ショートカットトンネル“予定外の暫定開通” 壮大すぎる計画を実感!?
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国道140号は大滝トンネルの現道以外でも、災害復旧工事などで規制されている箇所が複数ある(乗りものニュース編集部)

 西関東連絡道路は、国道140号のルートをなぞるように、関越道の花園IC(埼玉県深谷市)から秩父市(埼玉県)を経由し、新山梨環状道路の桜井JCT(山梨県甲府市)に至る計画です。

 このうち、関越道方面から西関東連絡道路の一部として整備された「皆野寄居バイパス」(9.9km)、「皆野秩父バイパス」(4.9km)が開通したことで、花園ICから秩父までの道のりは大きく改善されました。

 また、国道140号で埼玉・山梨県境を結ぶ「雁坂トンネル有料道路」も西関東連絡道の一部です。このほか、皆野秩父バイパスから秩父市街地へ連絡する「長尾根バイパス」も事業化されていますが、それ以外の大部分の区間は、未だ構想段階のままとなっています。

 国道140号は今回の落石区間以外も、細く狭く険しい道のりで、落石なども随所で発生しており、その補修工事も行われています。この道路がいつか高規格化されると聞くと、にわかに信じがたいほど、埼玉と山梨の連絡は未だ厳しいものがあります。

 そんな西関東連絡道路は完成すれば、北関東3県を東西につなぐ「北関東道」、千葉から北関東道へ連絡する区間を建設中の「東関東道」とともに、圏央道の外側の環状路線を構成します。

大滝トンネルの暫定開通は、厳しい山越えルートが高規格道路へと変貌する“序章”になるのでしょうか。

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