山道などを走行していると、目にする「落石注意」の黄色い標識。しかし、落石を避けながら運転するのは容易ではありません。

そのため、この標識は「道路に落ちている石に注意」とも考えられますが、それは必ずしも「正解」ではないようです。はたしてドライバーは、落石にどう注意すればよいのでしょうか。

注意すべきは上空か、はたまた地面か?

 山道などで目にする「落石注意」の黄色い標識。クルマを運転しながら落下中の石を避けることは現実的には容易でないため、この標識は「道路上に石が落ちているかもしれないので注意して走行すべし」という意味だ、そういう解釈もあるようです。


「落石注意」の標識。注意すべきは上空か、はたまた地面か(写真出典:photolibrary)。

 しかしそれは、正しくなくはありませんが、正解でもありません。国土交通省道路局によると、この標識には「落ちてくる石」と「すでに道路上に落ちている石」の両方に対する注意喚起の意味があるといいます。

 とはいえ、「落ちてくる石を避けながら運転しろ」と求めるのは非現実的ですし、「落石の可能性がわずかでもある場所は通行止め」とするのも、また非現実的でしょう。

「上を見ながら運転することはできないため、標識の細かい意味を考えるよりも、『落石注意』の標識を見たら、その地域全体に対する注意喚起ととらえて、注意しながら運転するよう指導しています」

 自動車教習所の東洋モータースクール(千葉県八千代市)は、そのように話します。これが“現実的”なところといえそうです。

「落ちてくる石」に存在する「ある傾向」

 では落ちてくる石、どのように対応すればよいのでしょうか。

ゲームのように落石を避けるのは“非現実的”として、「注意すべき時期」がありそうです。管内に多くの山間部を抱える高知県の幡多(はた)土木事務所(四万十市)は、次のように話します。

「雨で落石が多くなる傾向があり、管内を先日通過した台風16号の通過後には、落石が多数発生しました」


斜面に「覆式落石防止網」が設けられていても、その下部から出た石が路面に散乱している場合もある(2003年7月、恵 知仁撮影)。

 また寒冷地では、それ以外にも落石が多くなる時期があるようで、同じく管内に多くの山間部を抱える、岐阜県の古川土木事務所(飛騨市)は、次のように話します。

「管内で落石の発生が多い時期は、春先の3月から5月にかけてです。これは積雪や凍っていた山の土がとけ、山全体の土のしまりが弱くなることに加え、気温が上昇し動物の動きが活発になることが原因です」

 落下中の石を避けながら運転することは、“非現実的”かもしれません。しかし雨や台風のあと、そして寒冷地で春先に「落石注意」の標識と遭遇したとき、特に意識して運転に集中することは、“現実的”に可能な対応でしょう。

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