「上り」は東京方面とされる場合が多いですが、鉄道や道路では必ずしもそうでない場合も。地域や路線によっても異なる「上り」「下り」。

どうやって決まっているのでしょうか。

起点と終点に関係 なかには例外も

 お盆や年末年始における高速道路の渋滞予想では、よく「東名上り、最大○km」などと報じられています。この「上り」「下り」について、東名高速がそうであるように、東京方向が「上り」、東京から離れる方向が「下り」と思っている人も少なくないかもしれません。しかし実際は、鉄道でも道路でも、路線には起点と終点が定められており、原則として起点方向が「上り」、終点方向が「下り」とされています。

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中央本線を経由し、名古屋駅と長野方面を結ぶ特急「(ワイドビュー)しなの」。名古屋行きが「上り」とされる(2008年7月、恵 知仁撮影)。

 鉄道では多くの場合、路線の起点が東京に近いほうとされています。しかし、東京都と愛知県を結ぶJR中央本線は、『鉄道要覧』(国土交通省鉄道局監修)では名古屋駅が終点とされていますが、塩尻駅(長野県塩尻市)を境に西側の区間では、例外的に名古屋行きが「上り」列車として運行されています。

 例外は高速道路にも。北陸自動車道は、「高速自動車国道の路線を指定する政令」では新潟市が起点で、滋賀県の米原市が終点とされています。しかし、全線が開通したときに、JR北陸本線と同じように米原方面行きが「上り」、新潟方面行きが「下り」になるよう、ICの番号やキロポストが変更されました。一方、並行する国道8号は政令のとおり、起点である新潟市に向かう方向が「上り」です。

「東京が起点」だったのは昔のこと

 大正時代、国道はどの路線も「東京市より○○府県庁所在地○○に達する路線」とされ、起点は全路線とも東京(日本橋の道路元標)でした。しかし現在の国道は、政令に基づいて各都市間で起点と終点が決められています。

 このように鉄道でも国道でも、東京方面が必ずしも「上り」とはいえません。そのため、地域や経由地の実態を鑑みて、たとえば「上り」「下り」を用いず「○○方面」にするといった工夫をしている場合もみられます。

 なお、東京都心を縦横に走る東京メトロでは「上り」「下り」を使わず、終点方向を「A線」、起点方向を「B線」と呼称。東京駅をまたいで運行されているJR京浜東北線では、大宮駅方向を「北行」、大船駅方向を「南行」と呼び区別しています。

【写真】塩尻駅を境に変わる「上り」

鉄道、道路の「上り」「下り」はどう決まる? 上下逆転のケースも

中央本線は塩尻駅を境に東をJR東日本、西をJR東海が管轄。東京方面行き、名古屋方面行き、どちらも「上り」とされる(国土地理院の地図を加工)。

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