JR西日本の子会社である日本旅行が創業120周年を記念し、JR東海のステンレス製特急形電車383系のA7編成(6両)を貸し切った臨時列車「日本旅行創業120周年記念号」を、大阪―長野間で2025年12月6日、7日に走らせました。
【もう見られない…】これが国鉄形電車「最後の光景」です!(写真29枚)
その一環で、日本旅行メディア・アライアンス・トラベル(MAT)営業部は、長野到着後に国鉄時代に製造された国鉄形電車に乗るツアーを開催。
行程は12月6日に7時間1分かけて長野に到着後、長野県の第三セクター鉄道、しなの鉄道の115系の貸し切り列車に乗車するものでした。翌7日もしなの鉄道の直流電車115系と、新潟県の第三セクター鉄道、えちごトキめき鉄道の交直流電車455・413系の貸し切り列車を乗り継いだ後、長野から大阪へ戻る行程です。駅での滞在時間を含めると6日は10時間弱、7日は13時間40分弱の“鉄道漬けツアー”です。
添乗員は鉄道愛好家向けのツアーを幅広く企画し、筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)が審査員を務めている「鉄旅オブザイヤー」の2014年度の審査員特別賞を受けた日本旅行MAT営業部鉄道・バス企画デスクの山中章雄課長です。参加者の応募が殺到した人気ぶりの秘訣を探るべく同行すると、国鉄形電車の愛好家にはたまらない「これで最後」の演出のオンパレードでした。
12月6日15時55分に長野を出たしなの鉄道115系の貸し切り列車は、クリーム色と青色のツートンカラー「横須賀色」のS9編成(3両)。ツアーで貸し切った国鉄形電車はいずれも一部の駅しか止まらず、「急行」と名付けていました。
ツアー募集終了後の11月25日、しなの鉄道はS9編成の2026年3月引退を発表しています。筆者は山中さんに「引退することを知っていたのではないですか」と直撃しました。山中さんは「いや、そろそろかなと思ってはいましたが」と答えるのにとどめましたが、“嗅覚”の鋭さが企画に反映されているのだと実感しました。
次の停車駅の戸倉(長野県千曲市)には16時18分に到着して22分間停車。ありがたいのは、日が暮れる前に撮影できる時間を長く取っていたことです。「私は『乗り鉄』と『音鉄』なもので、そちらへ偏りがちです」と話す山中さんですが、ツアー参加者には「撮り鉄」も多いことから「なるべくフォトチャンスも設定するようにしております」と解説しました。
ファンの行動はお見通しだ!?戸倉の跨線橋の窓から115系のベンチレーター(通風器)が並んだ屋根を撮影していると、「何か“名物”を忘れている」と気づきました。前回訪れた際には営業していなかった駅構内のそば店「かかし」への訪問を忘れていたのです。
しなの鉄道115系の横須賀色(大塚圭一郎撮影)
改札口を出たところの「かかし」をのぞこうとすると、手前に山中さんが立ちはだかっています。「あと5分ほどで出発です」と、さりげなくそばを諦めるように促されました。参加者の乗り遅れにつながりかねない行動を先読みし、未然に防ぐというベテラン添乗員ならではの技に筆者はあっさりと“降伏”し、おとなしく列車に戻ったのは言うまでもありません。
続いて西上田(上田市)では20分停車し、上田に17時15分に到着しました。停車時間は29分ありますが、先頭部の方向幕の幕回しや「115」と記されたヘッドマークの取り付け、続いて側面の方向幕の幕回しを撮影していると刻一刻と発車時刻が近づきました。
プラットホームには即席のしなの鉄道グッズ販売コーナーが設けられました。買いたくなる商品が多く並んでいましたが、後ろに行列ができていたので筆者は115系を装飾したクリアファイルを2枚つかむと代金を渡し、「包装は結構です」と言って買い物を終えました。
上田から長野まではノンストップで36分かけて走り、ここでは115系の主電動機MT54の駆動音を存分に堪能できる“音鉄タイム”が用意されていました。
国鉄形が並んだ「最後」の光景翌12月7日に長野の2番線には、しなの鉄道115系のオレンジ色と緑色のツートンカラーをまとった「湘南色」のS3編成(3両)の貸し切り列車が待ち受けていました。隣にはアイボリーホワイトを基調とし、緑と赤のラインが入った「初代長野色」の115系S7編成(3両)の軽井沢行きが並んでおり、参加者は7時27分の貸し切り列車出発より前から“トレ活”にいそしみました。
この日は北しなの線を北上して北長野、黒姫に停車後、8時11分にしなの鉄道とえちごトキめき鉄道の境界駅である妙高高原(新潟県妙高市)の2番線へ滑り込みました。隣の1番線にはえちごトキめき鉄道のクリーム色とローズピンク色の「交直流急行色」をまとった3両編成の455・413系が既に停車しており、国鉄形電車同士が横並びになりました。
先頭部に「急行」のステッカーを貼った455系は「立山」のヘッドマークを取り付け、この日の「急行」と位置づけた運用には好都合です。特製ヘッドマーク「急行 115系」を掲げた115系との“競演”が目を引きましたが、455・413系の交直流急行色と115系の湘南色がすぐ隣で並ぶのは「これが最後になります」と関係者が耳打ちしてくれました。その理由は後刻判明します。
ファンサがスゴいのよ!えちごトキめき鉄道の455・413系は妙高はねうまラインの単線を進むため、隣の関山(妙高市)では妙高高原行き普通電車との行き違いのために21分停車。その間に実施された側面表示器の幕回しでは「名古屋」や「博多」、さらには鹿児島中央に改称済みの「西鹿児島」も出現しました。
JR東日本長野総合車両センターに停車中の(手前右から)DD51形、DD16形、DE10形。
国鉄形電車らしい上下開閉式の二段窓を開けて走行音を楽しみながら車窓をのぞくと、妙高山(2454m)などの妙高連峰が冠雪しているのを望むことができ、旅情をかき立てました。
新井(妙高市)で20分間停車後、列車は終点の高田(上越市)まで止まりません。途中には北陸新幹線と接続する上越妙高(上越市)があり、通過時には車内放送で「上越妙高は特急列車を含めまして旅客列車は全て停車していますが、この列車は通過します」と案内がありました。団体列車ならではの貴重な体験です。
高田の3番線に到着後、折り返しまで1時間弱あります。この間にえちごトキめき鉄道の鉄道グッズ販売コーナーには参加者の長蛇の列ができていました。筆者も5000円近く購入しましたが、もっと上を行く「大人買い」が相次ぎ、最初は山積みだった商品がほぼ売り切れました。
長野総合車両センターの隣を通過 その場所は…折り返しの455・413系は、「現行の交直流急行色で妙高高原に乗り入れる最後の機会になった」とえちごトキめき鉄道の関係者が打ち明けました。「新北陸色」に塗り替える前の2026年1月12日までの期間中に、妙高高原への乗り入れは予定されていないためです。
理由として新井―妙高高原間には急勾配がある上に、冬季は積雪で線路が滑りやすくなる中で「413系は(設定した速度を維持するための)抑速ブレーキがないので坂を下るのが難しい」ためだと説明しました。
よって、妙高高原2番線に入ったしなの鉄道115系の湘南色との並びは、455・413系の現行塗色では「最後」となりました。ただし、この時に455・413系が入線したのは同じホームの対面の3番線のため、すぐ隣で並んだのは往路が「最後」だったのです。
復路のしなの鉄道115系湘南色は終点の長野の近くで、車両の解体を手がけるJR東日本長野総合車両センター(長野市)の隣を通りました。ディーゼル機関車のDD51形とDD16形、DE10形、電気機関車EF65形、特急形電車189系の「あさま」色などが並ぶ中で「電車の速度を落として運転して参ります」とのサービスも用意されていました。
ただ、“廃車予備軍”の姿は、乗っていた115系にとっても他人事ではありません。しなの鉄道は2028年までに115系を全て引退させる計画だからです。
一方、えちごトキめき鉄道の455・413系についても「次の全般検査は通さずに退役させるのではないか」(事情通)との見方が出ています。
根強い人気のある国鉄形車両が消えていくことに惜別の念を禁じ得ません。その一方で「ドナドナ」を控えた車両に別れを告げる旅行商品が今後も企画される予定で、添乗した山中さんのような鉄道愛好家の心理をよく知る旅行のプロが腕を発揮するヤマ場はこの先も待ち受けていそうです。

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
