「架空車検」発覚、でも「車検期間は有効」それでいいの?

 必要な点検や整備を行わずに整備事業者が車検を有効とした場合、依頼した車両の車検有効期間はどうなるのでしょうか。

【これが“答え”】「車検」と「点検」の大きな違い(動画で見る)

 2026年1月に関係者が逮捕された愛知県一宮市の「にむら自動車」(川崎貴彦社長)が経営者ぐるみで「架空車検」を行っていたケースでは、国家資格者である自動車検査員が書類の要件だけを揃えて、整備工場に車両が持ち込まれた実績もないことが、経営者と検査員らの逮捕につながりました。

事業継承で代替わりした後に、継続車検の申請が9か月間で1700件と急増していることも、架空車検を裏付ける材料になりました。

 こうした場合でも、国土交通省中部運輸局は「逮捕前に車検を受けた車両の車検は有効である」と、取材に回答しています。整備課はその理由をこう説明しました。

「(架空車検を)一律に無効にすることはユーザーに重大な不利益を与えることになる」

 同時に、国土交通省中部運輸局は、道路運送車両法に基づく指定工場の責任追及に着手。整備事業者に厳しい処分を課すとともに、事業者が存在する場合は、事業者の責任で「再車検を行うこと」が前提の判断であることを強調します。

 たとえば、同省関東運輸局が2021年6月に実施したトヨタモビリティ東京のレクサス高輪店の監査では、レクサス高輪店の指定を取り消すとともに、トヨタモビリティ東京に対して、対象車両の再検査の早急な実施を要請しています。このケースでも車検を依頼したユーザーの車両は、ひとまず車検有効と判断されました。

車検は「安全を担保するものではない」

 にむら自動車の場合も整備事業者としての責任は同じですが、仮に系列店の支援が見出せない場合はどうなるのでしょうか。その対応の前に、中部運輸局は、車検の位置付けを解説しました。

「車検は有効期間中の安全を担保するものではありません。点検終了時の安全・環境基準に適合しているか、必要最小限の項目を国がチェックするもので、いわゆる民間車検というのは、資格を持つ自動車検査員が国に代わって行います」

 車検はいわば入学試験のようなもの。12か月、24か月の定期点検を実施し、そこで発見された不具合について整備を実施することで、車検の合格ラインに到達させる必要が、整備事業者にはある、というわけです。

 不正車検はこの点検と整備を省くことで、一見ユーザーの負担を減らしたように装っているところが、ユーザーにとっての最も問題な点です。

だから、できるだけ早く「前倒し点検」を

 しかし、車検の中でもユーザー自身が運輸支局に自分の車両を持ち込む「ユーザー車検」の場合は、車検で指摘された項目(不具合)を車検のあとで整備し再度、車検を受けなおすことができます。

「架空車検」でダマされても「車検期間は有効」ってホント!?…...の画像はこちら >>

国土交通省(中島みなみ撮影)

 車検を定めた道路運送車両法には「自動車の使用者は、自動車の点検をし、及び必要に応じ整備をすることにより、当該自動車を保安基準に適合するように維持しなければならない」というユーザーの義務があり、自己責任で車検を受けることは、むしろ法の王道を行く行為だからです。本来、このユーザー車検の前提としても定期点検を実施する義務はあります。

 では、不正行為を知らずに車検を有効とされたユーザーは、どのような対応があるのでしょうか。中部運輸局は次のような対応を予定すると語ります。

「車両の安全・環境性能を担保する定期点検を、できるだけ前倒しで実施していただくことを、心当たりのあるユーザーにはお願いします。また、国も該当者に対して、運輸支局に車両を持込み、確認のための持込み検査をお願いする通知をする対応を取り、あわせて相談窓口も設置したいと思っています」(同整備課)

 にむら自動車の不正行為の実態解明には、まだ数か月は必要なようです。事業者の不正で車検を無効にすれば、公道を走れなくなり、ユーザーに大きな負担を強いることになりますが、点検はユーザーの義務。不正行為で車検を有効にされたのではないか、という疑いがある場合、ユーザー自身が安全を担保する行動を積極的にとってほしいというわけです。

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