戦闘力よりも汎用性に秀でた新艦種

 神奈川県横浜市にあるJMU(ジャパンマリンユナイテッド)横浜事業所磯子工場において2026年3月13日(金)、海上自衛隊向けに新規建造された哨戒艦2隻の命名・進水式が実施されました。

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 これらは、昨年(2025年)11月に進水した「さくら」「たちばな」の姉妹艦で、さくら型哨戒艦の3番艦と4番艦になります。

 前回の「さくら」「たちばな」の同時進水と同じく、今回も3番艦(艦番号903)と4番艦(艦番号904)が共に進水・命名式を迎えており、前者は「ひのき」、後者が「すぎ」と名付けられました。

 哨戒艦は、これまで海上自衛隊になかった新艦種です。かつて、海上自衛隊では哨戒艇と呼ばれる排水量20tクラスの小型艇を運用していました。しかし、これは港湾警備や雑任務に用いるためのものであり、外海を長期間航行するような能力は付与されていませんでした。そのため、海上保安庁の巡視船艇が充実すると退役し、以後このような船は海上自衛隊から消えています。

 一方で、近年の中国をはじめとした周辺国の海洋活動の活発化が続くなか、日本周辺の海域における警戒監視を常時、長期間にわたって行い続ける艦艇の整備が必要とされ、導入が決まったのが、より大型の新艦種たる「哨戒艦」です。

 さくら型哨戒艦の船体サイズは全長95m、幅12m、深さ7.7m、喫水4.2m、基準排水量は1900トンで、乗員数は約30名。機関はディーゼルと推進電動装置、各2基からなる複合推進(CODLAD)式で出力は1万8500馬力、速力は25ノット(約46.3km/h)です。

 武装は、艦首に装備した30mm機関砲1門のみ。ただ、艦尾にはMCH-101掃海・輸送ヘリコプターの着艦も可能な多目的甲板を備えるほか、UAV(無人航空機:後日装備)や電磁波情報収集器材(後日装備)といったものを搭載します。ほかにも多目的格納庫(ヘリ収納は不可)や多目的クレーンなども設けられており、限られた乗員数でも柔軟な任務対応ができるよう設計されています。

 また、艦首喫水線下にはバウスラスターが装備されていますが、これがあるとタグボートの力を借りずに出入港が可能なため、十分な設備がない港でも利用可能です。

もちろん波の荒い外洋で行動することを前提としているため、横揺れを抑えるための減揺タンクも備えています。

 このようにさくら型は、主任務である洋上での警戒監視の特性を踏まえて長期滞洋性を確保しつつ、徹底した自動化・省人化を図っているのが最大の特徴です。

 このたび進水した「ひのき」「すぎ」の2隻は今後、艤装や各種試験を実施したのち、2027年3月に海上自衛隊へ引き渡される予定です。

 なお、防衛省・海上自衛隊では本型を12隻整備する計画で、増勢にあわせて部隊の新編も行い、常続監視態勢の強化を図っていく模様です。

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