イラン攻撃、真っ先に「コンテナ船改造の“無人機空母”」を狙ったワケ

 アメリカ中央軍は2026年3月6日、イラン革命防衛隊所属のUAS(無人航空機システム)空母「シャヒド・バゲリ」を攻撃する映像を公開しました。アメリカの複数のメディアは撃沈されたと報じていますが、現時点で撃沈されたという確証はありません。

ただ、アメリカ中央軍が公開した「シャヒド・バゲリ」攻撃の映像で、同艦は爆発炎上しており、沈没したか否かは定かではないものの、再起の困難な状態となったことは確かだと思います。

【デッカい!】これがアメリカ軍に真っ先にやられた「イラン初の空母」です(画像)

「シャヒド・バゲリ」は最大60機程度のUASやヘリコプターを搭載できると推定されていますが、最初から軍艦として設計されたわけではなく、イランの国営海運企業が所有していたコンテナ船「べラリン」を改造する形で開発されました。

 コンテナ船を改造した空母、ましてや主力艦載機がUASの空母は、アメリカがペルシャ湾に展開させている正規空母や、海上自衛隊が運用しているいずも型航空機搭載多機能護衛艦のようなSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)機を運用できるSTOVL空母に比べれば、脅威度は一段低く見積もられており、10年前であればコンテナ船を改造した即席空母など、アメリカが開戦劈頭に無力化する対象とはなっていなかったのではないかと筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

 しかし今回のアメリカとイスラエルのイラン攻撃では、イランの運用するUASの性能の高さもあいまって、「存在していること自体が厄介だ」とアメリカが考えたことから、「シャヒド・バゲリ」は開戦劈頭の攻撃対象となったものと思われます。

増えつつある無人機空母 「東南アジアの大国」も

 現代戦に対応できるセンサーと防空兵装、高性能のUASを兼ね備えていれば、UAS空母には戦力的価値があると考える国は増えています。その一つがインドネシアです。

 インドネシアはトルコから、ウクライナ戦争で一躍その名を上げたUAS「バイラクタルTB2」の艦載機型「バイラクタルTB3」の導入を決定。バイラクタルTB3を搭載する空母の導入を模索しており、イタリア海軍を退役して保管中のSTOVL空母「ジュゼッペ・ガリバルディ」を取得して、UAS空母とすることを検討しています。

 これに対しイタリア議会は「ジュゼッペ・ガリバルディ」を無償譲渡する閣僚令を承認しています。

空母を無償譲渡、イタリアにメリットは…めっちゃある!?

 一見するとイタリアに無償譲渡に伴うメリットは無さそうに見えますが、解体するにせよイタリアは巨額の出費を必要としますし、バイラクタルTB3のメーカー「バイカル」は、イタリアの航空機メーカー「ピアッジオ・エアロスペース」を買収し、イタリア国内の工場でUASを製造することを検討していますので、イタリア国内の雇用確保の面でも、「ジュゼッペ・ガリバルディ」の無償譲渡にはメリットがあるのかもしれません。

「イラン初の空母」そんなに厄介だった? アメリカ軍が真っ先に...の画像はこちら >>

イタリア海軍のジュゼッペ・ガリバルディ(画像:アメリカ海軍)

 イタリア議会の承認した閣僚令には「ジュゼッペ・ガリバルディ」の兵器システムなどは含まれていませんが、同艦は2003年に近代化改修を行っており、インドネシアが兵装やセンサーを装備すれば、現代戦に対応できるUAS空母になり得ると筆者は思います。

 2026年3月10日現在、インドネシア政府は意志決定を行っていないものの、インドネシアがイタリアの申し出を受け入るにせよ、別の選択肢を選ぶにせよ、東南アジアで二番目となるインドネシア海軍の空母は、UAS空母となる可能性が高いと言えるでしょう。

艦載機にF-35より無人機! トルコ・韓国・スペインの選択

 韓国は一時期、STOVL戦闘機のF-35Bを運用できる軽空母の導入を検討していましたが、費用対効果の面から再検討が行われた結果、UASとヘリコプターを運用する多機能母艦の建造に傾いています。

 トルコは強襲揚陸艦「アナドル」にF-35Bの搭載を予定していましたが、同国がロシアから防空システム「S-400」を購入したことから、アメリカにF-35の輸出を拒否されてしまいました。このためトルコは「アナドル」に、前に述べたバイラクタルTB3などのUASを搭載するための試験を行っています。

 スペインはF-35Bの搭載も可能な強襲揚陸艦「ファン・カルロス1世」を運用していますが、スペインにF-35Bを導入する計画はなく、現在艦載機として運用しているEAV-8B「ハリアーII」の退役後は、運用できる固定翼機が無くなる可能性が指摘されていました。このためスペイン海軍は、同国航空宇宙軍が導入するためエアバスが開発を進めている固定翼型UAS「SIRTAP」を、「ファン・カルロス1世」で運用するための試験を計画しています。

日本も無関係ではない? 海自護衛艦への搭載案

 実のところ日本にも、いずも型航空機搭載多機能護衛艦とひゅうが型ヘリコプター搭載護衛艦で、固定翼UASを運用すべきとの意見が存在しています。

「イラン初の空母」そんなに厄介だった? アメリカ軍が真っ先に攻撃したワケ 世界で続々「戦闘機いらない空母」
Large figure3 gallery10

2026年2月に開催された「シンガポールエアショー」でエアバスが展示した「SIRTAP」の実大モックアップ(竹内 修撮影)

 エアバスは2023年2月3日から8日まで開催された「シンガポールエアショー」にSIRTAPの実大モックアップを出展していました。筆者はそこでエアバスからSIRTAPの説明を受けたのですが、担当者の方が艦載機としてのSIRTAPの可能性について強調されていました。

 これは、エアバスが海上自衛隊への提案に興味を持っているからなのかもしれないと思いました。

編集部おすすめ