横田基地へのC-130J-30「スーパーハーキュリーズ」配備が開始されました。ところがその見た目は、半世紀以上前に完成した原型機C-130とそれほど大きく変わりません。
2017年3月4日(土)、在日米軍の横田基地(東京都)に、アメリカ空軍の新型輸送機ロッキードマーチン C-130J-30「スーパーハーキュリーズ」が到着、いよいよ同機の横田基地配備が始まりました。C-130J-30は既存のC-130H「ハーキュリーズ」14機の後継機になり、およそ1年半かけて全機を更新します。
C-130J-30と従来型C-130Hにおける最大の違いが、大型化した胴体と、新しいハイパワーエンジンの採用です。これによって搭載能力は19トンから20トンへと拡大。またそれ以上に容積が増えており、貨物の空中投下を行える「コンテナデリバリーシステム(CDS)」ならば16個から24個へ3割強も向上しています。
さらには速度性能も590km/hから660km/hへ、航続距離は16トンの貨物搭載時に2410kmから3890kmになるなど、輸送機としての基本スペックが大幅に向上しています。
横田基地に配備されたC-130J-30「スーパーハーキュリーズ」。垂直尾翼に描かれた「YJ」は「ヨコタ・ジャパン」を意味する(画像:アメリカ空軍)。輸送機は基本的に「大は小を兼ねる」ので、高性能化それ自体は歓迎すべきことですが、一方でアメリカ軍にとっての横田基地とは、運送会社の営業所にあたる流通拠点であり、そこから極東各地の基地(各家庭)へ配送を行う輸送機(トラック)があまり高性能すぎると、かえって取り回しが悪くなるとも言えます。
しかしながらC-130J-30は搭載システムの一新によって自動化を達成しており、コストの低減を実現。乗員はパイロット2名に加えロードマスター1名(輸送員)の3名のみで運用できるようになっています。
以上のようにC-130J-30とC-130Hはもはや別の飛行機と言ってもよいほどの進化を遂げていますが、見た目の上での違いはエンジンのプロペラブレードが4枚から6枚に増えた以外、殆どありません。それどころか1954(昭和29)年に初飛行したプロトタイプ、YC-130と比べてもそれほど大きな違いはありません。
C-130はその登場時点において、既存の軍用輸送機の概念を一気に変えてしまうような革命的な機種でした。たとえばC-130以前に活躍していたC-47「スカイトレイン」、C-119「フライングボックスカー」といった輸送機には、胴体後部の大型カーゴドアや太い胴体は無く、大型の貨物をそのまま搭載することはできませんでした。一方C-130J-30では、UH-1やUH-60といった汎用輸送ヘリコプターさえほとんどそのまま空輸を可能とします。

C-130は中、小型軍用輸送機として必要とされるあらゆる能力を持ち、軍用輸送機の歴史はC-130によってひとつの到達点を迎えたといっても過言ではありません。それゆえに、のちに誕生した他国の輸送機は例外なくC-130と同様の特徴を受け継いでおり、またアメリカ軍においても「C-130の後継はC-130」となっているのです。
C-130系列機は来世紀も飛び続ける?C-130Jは通常の輸送機型に加え、ほかにも電子戦型EC-130J、特殊作戦型MC-130J、海洋捜索救難機型HC-130J、ハリケーンハンター(ハリケーン観測)型WC-130J、ガンシップ型AC-130J、そして民間型LM-100Jなど多数の派生型があり、世界中に展開する米軍を支える大黒柱となっています。C-130J抜きでアメリカ軍は活動することができません。

2017年現在、世界で現役中の軍用輸送機は大小総計で4000機にもなりますが、うち1000機あまりをC-130系列機が占めるという圧倒的シェアを誇ります。
あくまでも筆者(関 賢太郎:航空軍事評論家)の主観ではありますが、C-130系列機が22世紀に入ってなおも現役であったとしても、それ自体にはまったく驚きません。かえってC-130が存在しない未来のほうが想像し難く、たとえ無人化してもよほどのことが無い限り、C-130がなくなることは無いかもしれません。
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