ホンダ「モンキー」が2017年8月に生産を終了しますが、これより小さな、その名も「Ko-zaru(仔猿)」というバイクが存在します。公道を走れるバイクとしては世界最小で、様々な楽しみ方ができるそうです。
50年の歴史をもつ50cc原付バイク、ホンダ「モンキー」の生産が、2017年8月末をもって終了します。全長136.5×全幅60×全高85cmというサイズで、そのルックスから熱烈なファンも多いという小さなバイクです。あるバイクショップは「コレクターアイテムとしても人気で、中古市場で高値が付きます。飾るだけという人も少なくありません」と話します。
小さなバイクはもうなくなるのか、と思いきや、「モンキー」よりももっと小さなバイクが健在です。
公道走行が可能なバイクでは世界最小という「Ko-zaru」。これまで大きく分けて5種類が作られており、これはファンのあいだで「仔犬」と呼ばれているもの(2017年3月、中島洋平撮影)。それは、東京都調布市に工房を構えるCKデザインの「Ko-zaru(仔猿)」というバイクです。全長82.5×全幅43×全高62.5cmと、「モンキー」よりもさらに小さく、重量は20kgほど。CKデザインの佐々木和夫さんによると、実際にナンバーを取得でき、公道走行が可能なバイクとしては世界最小だそうです。基本的には、箱に納められた部品を自分で組み立てるキットでの販売ですが、組み立て済みのものも提供されています。
なぜこれほど小さなバイクを作ったのか、佐々木さんに聞きました。
――「Ko-zaru」はいつから販売しているのですか?
およそ15年ほど前からです。当初は31ccのホンダ製汎用4ストロークエンジンを使っていましたが、それが絶版になってからは、36ccのエンジンで作っています。
――これほど小さなバイクをなぜ作ろうと思ったのですか?
もともとわたしはホンダで原付やレース用バイクの設計を手掛けていました(編注:原付「シャリー」などの設計に携わる)。31ccの汎用エンジンが出た際に、「このエンジンで何か作りたい」と思ったことがきっかけです。というか、亡くなった本田宗一郎さんに、「佐々木君だったらこのエンジンで何を作る?」と言われているような気がしたのです。
「Ko-zaru」のテーマは「楽しさ」です。初めてバイクに乗ったあの楽しさをもう一度味わってもらいたい、という思いで作っています。
バイクを「輪行」 使い方いろいろ――1台はいくらですか? 現在どれくらいのオーナーがいるのでしょうか?
オプション次第ですが、およそ30万円から40万円です。オーナー数は1000人弱くらいでしょうか。海外の人には基本的に売っていないのですが、熱心にアプローチしてくれて販売する場合もあります。
――実際に普段の足として公道を走っている人は、どれくらいいるのでしょうか?
公道を走れるとはいえ、交通量の多い道で乗っている人はあまりいないでしょう。ほとんどの人はクルマに積んで、出かけた先で使っています。
――ほかにどんな楽しみ方があるのでしょうか?
バッグなどに収納して、列車で輪行するほか、昔は飛行機に載せて運んでいた人もいました。普通のクルマが通れない場所で使う補助的な乗りものとして、クルマに積んでいる消防団も存在します。東日本大震災の被災地で移動用に使っていたという人もおり、いまは私のほうでも、避難用に車載するという使い方を広めつつあります。
――ホンダ「モンキー」の生産終了についてはどう思いますか?
残念です。私にとってバイクの原体験は、「多摩テック」(編注:かつて東京都日野市にあったホンダ系列の遊園地)の乗りものとして作られた「モンキー」の前身「Z100」に乗ったことでした。当時、私は中学生で、バイクに乗りたくても免許が取れませんでしたが、「多摩テックで乗せてくれる」ということを聞き、現地で実際に乗りました。そのときの嬉しさが「Ko-zaru」の開発につながっています。
――今後はどう展開していきますか?
昨今はバイクが売れていない、若い人が乗らないといわれていますが、子どもに「Ko-zaru」を見せると喜んで集まってきます。「Ko-zaru」を子どもにもっと乗ってもらうとともに、ひととおりさまざまなバイクに乗り「もう乗るものがない」という定年前後の人にも広めていきたいです。実際にそういう人で「Ko-zaru」を面白がってくれる人も少なくありません。
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ちなみに「Ko-zaru」は、バッテリーが別売りです。