1987年4月1日、国鉄(日本国有鉄道)が分割民営化されJRが発足しました。そのとき、変化は体制のみならず、「文字」にも訪れています。
2017年4月1日(土)、国鉄(日本国有鉄道)の分割民営化、JR発足から30周年を迎えました。この分割民営化により、体制以外にも“あるもの”が変わっています。
700系新幹線車両に取り付けられていた「東海旅客鉄道」(JR東海)の銘板。「鉄」の字をよく見ると……(2016年9月、恵 知仁撮影)。
それは「鉄」の字。「東海旅客鉄道株式会社」といった正式名称のロゴタイプにおいて、「鉄」の字を「金」に「矢」としています。その理由を、鉄道博物館(さいたま市)に聞きました。
――JRグループの社名ロゴタイプで、「鉄」の字を「金」に「矢」としているものがあるのはなぜでしょうか?
JR東日本の社史には、旧国鉄が赤字に苦しんだことから、「新会社では金を失わないように」との思いを込め、「鉄」の字を「金偏に矢」で表すこととした、と記載されています。そしてあわせて「ただし、実務上の混乱や手間を避けるため、ワープロなどによる表記は通常の文字である『鉄』の字を用い、正式社名のロゴタイプにのみ、あくまで『作り文字』として『金偏に矢』の字を用いる」とあります。
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鉄道博物館の担当者によると、登記上では各社とも本来の「鉄」の字を用いているほか、JR7社のうちJR四国だけはロゴタイプも本来の「鉄」を使っているそうです。
JR四国なぜ例外? 異なる方法で「金を失うこと」避ける会社もJR四国に、「金」と「矢」の字を使っていない理由を聞きました。
――ほかのJR会社では、ロゴタイプで「鉄」の字を「金」に「矢」としていますが、JR四国ではなぜ使っていないのでしょうか?
「漢字にない文字を使わない」という理由で、(本来の)「鉄」を用いています。
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JR四国誕生後に発行された一部の出版物などで、「金」に「矢」の字を使った「四国旅客鉄道」の表記も見られますが、正式には当初から「鉄」だそうです。

大井川鐵道の蒸気機関車(きかんしゃトーマス号)に掲示されている「大鐵」の札(2015年6月、恵 知仁撮影)。
ちなみに、異なる方法で「金を失うこと」を避けている鉄道会社も。静岡県の大井川鐵道は、社名に「鉄」ではなく旧字の「鐵」の字を用いています。同社によると、「やはり“ゲンかつぎ”の意味があるといわれています。というのも、当社は『大鐡』という略称がありますが、これが『鉄』の字だと『大金を失う』となり縁起が悪い」のだそうです。
【写真】30年前、電車に掲げられていた「国鉄」「JR」ヘッドマーク

1987年4月1日の国鉄分割民営化、JR発足の際、電車に掲示された「さようなら」「こんにちは」のヘッドマーク(1988年に行われたイベント時に恵 知仁撮影)。