山間部の道路などで、シカなどの姿が描かれた「動物注意」の標識を見かけますが、この標識、シカ以外にもさまざまなバリエーションがあります。そもそも誰が設置していて、どのようなものがあるのでしょうか。
山間部の道路などで、黄色い地に動物の姿が描かれた標識が見られます。これらは「動物が飛び出すおそれあり」という意味の警戒標識で、本標識の下に「動物注意」「とび出し注意」などと書かれた補助標識が付いているものもあります。
シカのシルエットが描かれ、補助標識も設けられた「動物注意」の標識(画像:写真AC)。
国土交通省の標識一覧では、この「動物が飛び出すおそれあり」標識にはシカの姿が描かれていますが、ところによりシカ以外のものも見られます。国土交通省道路局に話を聞きました。
――「動物注意」の標識は、誰が設置しているのでしょうか?
その道路の管理者が設置しています。国が管理する国道であれば国土交通省が、自治体が管理する国道や都道府県道であればその都道府県が、市町村道であれば市町村が管理者です。
――描かれる動物やデザインにルールはあるのでしょうか?
「道路標識、区画線及び道路標示に関する命令」、通称「標識令」ではシカの絵が例示されているほか、サル、タヌキ、ウサギの標識については国土交通省の「標準」が存在します。この4種類についてはなるべく標準的なものを使い、これら以外の動物についても、各道路管理者がその場所に合わせて適宜製作し設置できるようになっています。
希少動物の「とび出し注意」! 沖縄の事情地域の実情にあわせたバリエーションが見られる「動物注意」の標識ですが、なかでも沖縄県では、イリオモテヤマネコやヤンバルクイナといった、沖縄固有の希少な動物が描かれた標識が見られるといいます。沖縄県道路管理課に話を聞きました。
――沖縄県にはどのような「動物注意」標識があるのでしょうか?
イリオモテヤマネコの標識は西表島ですが、沖縄本島北部の(希少動物が多く生息する)「やんばる」と呼ばれる地域には、ヤンバルクイナのほかリュウキュウヤマガメ、オキナワイシカワガエルなどの飛び出しを注意する警戒標識があります。
――ヤンバルクイナなどの珍しい標識はいつから立てられているのでしょうか?
昔からのものもありますが、目立って増えたのは10年くらい前でしょうか。野生生物の交通事故件数が増えてきたことが背景にあります。

沖縄本島北部で見られる「ヤンバルクイナ」が描かれた標識(画像:photolibrary)。
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「やんばる」地域にある、環境省所管のやんばる野生生物保護センター「ウフギー自然館」(沖縄県国頭村)のウェブサイトには、同地域に生息する野生生物の交通事故件数がまとめられています。それによるとヤンバルクイナとの事故件数は、2004(平成16)年に6件だったものが、2007(平成19)年には23件に、その後増減しつつ、2016年には34件となっています。なおこの数値はあくまで、確認できた事故に限った件数だそうです。
同センターは「野生生物の交通事故対策と、ドライバーの安全を守る観点から、環境省と国道事務所、県道路管理課など関連機関が連携し、野生生物との事故が多発している地点に警戒標識を設置しています」といいます。
また、標識を見かけたら「実際に動物との事故が起こっている場所だと思って、安全運転を心がけてほしいです。たとえヤンバルクイナと衝突したとしても、スピードを落としていれば助かるケースもあります」としています。
【写真】「動物注意」、ほ乳類だけではない!?

沖縄本島北部の大宜味村内には「カニ注意」の標識がある(画像:photolibrary)。