空港の地上業務「グランドハンドリング」は、乗客の目にはあまりふれないものです。いわば航空会社の「縁の下の力持ち」。
2017年10月26日(木)、JALグループは羽田空港にて、今年で5回目となる「グランドハンドリングコンテスト」を行いました。
第5回を迎えた「JALグランドハンドリングコンテスト」。空港の地上作業員たちがふだんの作業でつちかった技量を競う(2017年10月26日、石津祐介撮影)。
「グランドハンドリング」とは空港における航空機の誘導や貨物の運搬といった業務のことで、航空機の定時運航には欠かせないものです。JALグループではハンドリングの品質向上と各空港の技量を披露する場とし、1年に1回コンテストを開催しています。どのようなコンテストが行われているのでしょうか。

コンテストには全国29の空港から58名が参加。

宣誓を行う成田空港の山崎風香さんは、今回のコンテストで唯一の女性参加者。

日々のハンドリング業務で鍛えた技量をコンテストで披露する。
今回は29の空港から58名が参加し、航空機から貨物を運搬するハンドリング業務のコンテストが行われ、ULD(Unit Load Deviceの略)と呼ばれるパレットを航空機へ搭降載し、トーイングトラクターで運ぶULDハンドリングと、BULK(バラ積み貨物)を機体から搬出しコンテナに積み込み運搬するBULKハンドリングのふたつの部門で競われました。
JALで地方空港の路線に就航しているボーイング737-800は荷物がバラ積みでしか搭載できないため、おもに737が就航している地方空港のスタッフはBULKハンドリング部門に出場し、ボーイング777や767のように貨物室にコンテナが搭載できる大型の機体が就航している主要空港のスタッフはULDハンドリング部門に参加しています。
コンテストには次のような車両が登場し、勝ち抜くためにはその高度な操作技術が求められます。
●トーイングトラクター
航空機からターミナルへ貨物や手荷物を牽引し搬送するトーイングトラクターです。空港や国によって異なりますが、コンテナは最大で6個、パレットは4両を連結します。トヨタ製で、燃料は軽油。制限速度は空港内で15km/h、航空機の周りでは10km/hとなっています。

貨物を牽引するトーイングトラクター。コンテナは最大で6個、パレットは4両を連結。

ミッションはオートマチックで、スピードメーターは最大速度50km/hと表示されている。

グランドハンドリングを行うスタッフの主な装備は、ヘルメット、反射帯、安全靴。
●ハイリフトローダー
ULDを航空機に搭降載するための車両で、最大で6800kgを持ち上げることができます。空港用地上支援車輌を多く手掛けるシンフォニアテクノロジー社(東京都港区)製で、燃料は軽油。

コンテナを航空機から搭降載するハイリフトローダー。

コンテナやパレットを輸送するための車両、ドーリー。

手荷物や貨物が積み込まれるULD。
●ベルトローダー
貨物室に手荷物や貨物をばら積みする際に使用する車輌で、航空機に合わせてジャッキで上下します。荷物はベルトコンベアで移動し、雨を避ける天蓋が付いたタイプも。燃料は軽油でシンフォニアテクノロジー社製。

ばら積みの荷物を積み込む際に使用されるベルトローダー

航空機の高さに合わせてジャッキで上下する。
パレット積載貨物を扱うULDハンドリング部門では、ふたり1組で「到着貨物を航空機から取りおろす」「出発貨物を航空機に搭載する」「パレットを搬送するためのドーリーを牽引したままバックで8字コースを走行する」という内容で行われます。

指差し確認し、トーイングトラクターを運転する。

ハイリフトローダーから指示を出すオペレーター。

ドーリーを牽引したままバックで8の字コースを走行。
貨物を航空機に搭降載するハイリフトローダーから指示を出すハイリフトオペレーターと、トーイングトラクターのドライバーが互いに指示を出しながら作業をすすめていくのですが、コンテナを輸送するドーリーを牽引したままバックで8の字コースを走行させるのは高度な操作技術が必要。参加者は緊張を強いられるなか、狭いコースを正確に素早く運転し高い技量を披露しました。
ばら積み貨物を扱うBULK部門では、機体後方の貨物室からベルトローダーを使用して荷下ろしし、コンテナに積み替え車両走行を行います。

貨物室からばら積み荷物をベルトローダーへと降ろしていく。

取りおろした荷物をバランスよくコンテナへと積み込む。

誘導するスタッフに従いコースを進むトーイングトラクター。
取りおろす荷物をバランスよく積み替える必要があるので、機内から運び出すスタッフとコンテナに荷物を積み込むスタッフとの連携作業の正確さが求められます。車両走行ではトーイングトラクターにドーリーを3両連結させて狭いコースを進むため、誘導するスタッフと運転者のコンビネーションも競技に反映したようです。
競技の結果、ULDハンドリング部門は成田空港の山崎風香さんと宮内勇樹さんペアが優勝し、成田空港は昨年に続き2連覇となりました。BLUKハンドリング部門では宮古空港の大見謝恒平さんと伊志嶺健太さんペアが優勝となりました。

ULD部門は成田空港(左ふたり)、BULK部門は宮古空港(右ふたり)がそれぞれ優勝。

「皆さんの底力を感じました」と締めくくった阿部空港本部長。

最後に全員で記念撮影。
今回、宣誓を行った唯一の女性参加者である山崎さんは「チームのテーマが『仲間と一緒に安全を守る』なのでお互いのチームワークが見せられたと思います」と、宮古空港の伊志嶺さんは「今回は、いままでで一番のできだった。
最後に阿部孝博空港本部長が「このコンテストで、日本航空の翼を支えていただいてる皆さんの底力を感じた。それぞれの空港で、さらにグランドハンドリングを高めて欲しい」と締めくくりました。