クルマのスタイルのひとつ「クロスオーバー」とは、つまるところなんなのでしょうか。その解答へのヒントを「フィット」の純正アクセサリパッケージ「クロススタイル」に探してみました。
「東京モーターショー2017」は11月5日(日)、77万人を動員し閉幕しました。各社の出展車両を眺めると、スタイルとしてはいわゆるSUV、あるいはクロスオーバーとされるものがトレンドの中心にあることが実によく見てとれました。日産や三菱のワールドプレミアも、クロスオーバースタイルのEVコンセプトカーで、ホンダからもクロスオーバーSUV「CR-V」の日本市場再投入がアナウンスされました。
「クロススタイルパッケージ」ほか各種純正アクセサリーを装着したホンダ「フィット クロススタイル」(2017年11月7日、楠堂亜希撮影)。
この「クロスオーバー」というジャンルは、SUVのなかでもセダンやクーペなどのオンロード乗用車を出自とするものを指すことが多いそうですが、厳密にコレという定義はないようです。そもそもSUVという言葉が、おおむね「オフロード走行を重視した設計で、かつ街中のオンロードも快適に走行できるようなクルマ」を指すという、少々ふわっとしたものです。国内の報道では「多目的スポーツカー」などと訳されることもあります。「多目的」といわれても、受け手の解釈でずいぶん広範囲な印象になるのは必然です。
そして、繰り返しますが「クロスオーバー」とは、そうしたふわっとしているSUVと呼ばれるもののなかの、ひとつのカテゴリーです。「おおむねこういうもの」というところでの印象や解釈は、共通認識として一般的なものといえ、そしていまや各社からクロスオーバーを標榜するクルマも多数発売されています。しかし、具体的にはどういった部分、特徴をもってクロスオーバーと称しているのでしょうか。整頓すると、セダンやクーペ、ハッチバックなどと分類されるクルマから、どういう点が変わればクロスオーバーになるのか、という問いになるでしょう。
リアビューもつや消し黒のテールゲートデカールが引き締める。
フロントグリルカバーなど、「クロススタイルパッケージ」に含まれないアクセサリーも装着。
ベース車は「フィット ハイブリッド F」プレミアムイエロー・パールII。
そうしたなか2017年6月末、マイナーチェンジしたホンダのコンパクトハッチバック「フィット」に、純正アクセサリー「クロススタイルパッケージ」が発売されました。もともとスタンダードなハッチバックスタイルである「フィット」を、クロスオーバー風に演出しようというものです。つまりこの「クロススタイル」を見れば、その開発、発売元であるホンダアクセスがクロスオーバーというものをどのように解釈しているのか、少なくともその一部は垣間見えるかもしれません。
キーワードは「タフ」「アクティブ」ホンダアクセスへ取材を申し込んだところ、さっそく実車を用意してくれました。「フィット」の「ハイブリッド F」グレードをベースに、「クロススタイルパッケージ」を含む以下のアクセサリーを装着したものです。
<クロススタイルパッケージ>
・ロアガーニッシュ フロント/リア/サイド
・ボディサイドモール
・ホイールアーチ
・テールゲートデカール
<他アクセサリー>
・フロントグリルカバー
・アルミホイール 15インチ MG-020/ホイールナット
・LEDフォグライト/取付アタッチメント
上記「クロススタイルパッケージ」に含まれるものは単品でも販売されていますが、パッケージ価格として割安に設定されています(単品合計15万5520円が13万8240円、価格はすべて税込)。
担当デザイナーの隈 泰行さんと「フィット クロススタイル」(2017年11月7日、楠堂亜希撮影)。
さて、そもそも「フィット」を、なぜこのようなスタイルにしようと思い立ったのでしょうか。担当デザイナーであるホンダアクセスの隈(くま)泰行さんは、「『フィット』は幅広いユーザーにご支持いただいていますが、最近はシニア層の購買比率が増加しています。
また冒頭に記したように、「東京モーターショー2017」のトレンドもそうでしたが、カスタマイズにおけるそれもスポーツタイプのほか、SUV志向が高まっている傾向があるとし、「他社コンパクトカーにもクロスオーバーグレードが設定されています。『フィット クロススタイル』は純正アクセサリーでの『フィット』のバリエーション幅を広げるものとして提案しています」といいます。
その一線はタイヤ回りにあり?そして本題の、ハッチバックからクロスオーバーになるラインはどのあたりか、という問いに対しては、「やはりタイヤ回りの力強さでしょうか」と答えてくれました。
隈さんのいう「タイヤ回りの力強さ」は、具体的には特徴的なデザインの「ホイールアーチ」を中心に表現されています。車高を高く見せ、また上部の凸部分にごくわずかながらも角度をつけることで立体的な視覚効果(フェンダーがボディから外に突き出しているように見える)が生まれ、これに15インチアルミホイールを合わせることで「タフな印象を与えています」といいます。さらに「ロアガーニッシュ サイド」「ボディサイドモール」などにつや消し黒を採用することで、「タフな道具感」を高めているとも。もちろん見た目だけでなく、「傷を目立たなくするプロテクターとしての役割も担っており、SUVならではの機能を狙っています」とのことです。
凸部分が特徴的なホイールアーチ。
つや消し黒が「タフな道具感」を演出。
「タイヤ回りの存在感や、車高が高く見えることを狙ったデザインに注目してほしい」とホンダアクセスの隈 泰行さん。
ちなみに、「フィット」というクルマのキャラクターをここまでガラリと変えてしまう「クロススタイルパッケージ」ですが、ホンダの先進安全技術「Honda SENSING」搭載グレードにも対応していました。車高などは変えておらず、センサーなどへの影響はないとのことです。
とはいえ一般論として、昨今の先進安全技術は「かなり純正アクセサリーの仕様に影響があります」(隈さん)といいます。
「純正アクセサリーは、車両本体と同時開発の強みとして、車両開発段階から安全技術との整合性を確認して開発しています。たとえばサスペンションで車高が変わると、『Honda SENSING』の安全作動に影響が出ることがあります」
ホンダアクセスのカスタマイズブランド「Modulo X」では、車種によって車高が変更されるため、その場合「Honda SENSING」の作動すべてを確認しているとのこと。さらにバンパーやフロントグリルの形状、色、素材もミリ波レーダーの反応に影響が出るため、考慮して設計し、安全性を確保しているそうです。

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