岐阜基地航空祭にて、旧海軍カラーをモチーフとした塗装のF-4戦闘機が公開され話題になりました。よく知られるあの暗緑色ですが、もちろん意味があります。

暗緑色迷彩のF-4、岐阜の空へ

 2017年11月19日、航空自衛隊岐阜基地で開催された航空祭において、F-4EJ「ファントムII」の特別塗装機が一般公開され飛行展示を実施、大勢訪れた観客から大きな歓声が上がりました。

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「飛燕」など旧軍機の塗装を現代のデジタル迷彩で復活させたF-4EJ「ファントムII」。F-4EJ改ではない数少ない非近代化機(関 賢太郎撮影)。

 このF-4は航空自衛隊岐阜基地60周年そして各務原飛行場100周年を記念し施された「飛行開発実験団」のスペシャルマーキング機であり、通常のF-4に施された灰色をベースとした迷彩塗装とは異なる暗緑色を基調としたものでした。SNSなどにおいては1939(昭和14)年に各務原の地で初飛行を実施した旧海軍の「零戦」や、1941(昭和16)年に初飛行した陸軍の「飛燕」に似ていると人気を博したようです。

旧軍カラー? 暗緑色迷彩のF-4が話題に あの色にはどのような意味があるのか

F-4特別塗装機。上面はデジタル迷彩が施されていたが下面には「各務原飛行場百周年」のペイント(関 賢太郎撮影)。

 岐阜基地渉外室によると、零戦など特定のモデルはないそうです。ただ各務原飛行場開設から100年を迎えるこの年に、戦前から現在もなお各務原に工場を置く川崎重工(川崎航空機)が開発した過去の最新鋭機やその功績を学び過去の技術を継承すること、そして航空自衛隊飛行開発実験団が掲げる「空の勝利は技術にあり。」という信念(PASSION WIND)を、当時の航空機と同系色である暗緑色を基調としたデザインで表現したとのことです。

 それは「デジタル迷彩」と呼ばれるモザイク状の複雑な迷彩パターンです。デジタル迷彩は背景と航空機の輪郭をぼやかしてしまうことで人間の目を欺くという、非常に迷彩効果が高いことを特徴とし、航空機だけではなく航空自衛隊の迷彩服にも採用されるなど、近年世界的に流行しつつあります。

軍用機がグレーばかりなのにもワケがある

 第二次世界大戦後期から1970年頃までは一時期、戦闘機の迷彩効果が疑問視されていました。

塗料というのは意外にも重く、機種によって数十kgから100kgにも達します。当然、重くなったぶんは性能や燃費を悪化させますから、かつてはあえて塗装せず表皮のジュラルミンが剥き出しとなった、銀色に光り輝く戦闘機が多く見られました。

 しかしながら近年では迷彩の価値が再認識され、電子戦やミサイルで戦う現在でもなお、ほぼすべての戦闘機に迷彩が施されるようになっています。

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デジタル迷彩が施されたMiG-29。近年デジタル迷彩が流行しており採用例が増えつつある(関 賢太郎撮影)。

 通常のF-4やF-15、F-35など戦闘機の大多数は灰色をベースとした迷彩が施されています。灰色は空に溶け込みやすいため様々な状況で高い効果を発揮する、汎用性に優れた迷彩と言えます。

 一方で、運用するその土地に合わせることでさらなる迷彩効果を発揮するものもあり、F-2の「海洋迷彩」はその代表例と言えるでしょう。海洋迷彩は日本近辺の海や空に調和し、特に低空飛行した場合は「ほとんど見えなくなってしまう」という声も聞かれます。

暗緑色は日本独自? 迷彩色にもさまざまアリ

 今回のF-4特別塗装機や陸上自衛隊のヘリコプターに多くみられる緑色の塗装も、日本独自の植生に合わせることで最大限の迷彩効果を発揮できます。同様に、国土の大半が砂漠で占められている国、冬季は雪に閉ざされる国、標高が高く樹林が少ない国などにおいて、自国での運用に特化した様々な迷彩が存在します。

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フォルス(偽)キャノピーが描かれたSu-27。
機体の上下を誤認させとっさの判断を遅らせる効果があるという(関 賢太郎撮影)。

 昨今、レーダーに捉えられにくい航空機を意味する「ステルス」という言葉は広く知られるようになりましたが、本来ステルスとは単にレーダーだけではなく、赤外線や可視光、そして音といった自己の存在を示す痕跡を消し、観測されにくくする技術や行為全般を言います。ゆえに人間の目を欺く迷彩は、原始的ではありますが立派な「ステルス」であると言えるでしょう。ステルス機が全盛となりつつある現代においては、今後も迷彩が廃れることはなさそうです。

【写真】「撃たないで!」戦争を生き延びた迷彩機

旧軍カラー? 暗緑色迷彩のF-4が話題に あの色にはどのような意味があるのか

飛行方向を誤認させる斜線が描かれた複葉戦闘機フォッカー D.VIIとエルンスト・ウーデット。尾翼にはドイツ語で「撃たないで!」と描きつつ、自分は62機も撃墜した。

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