高速バスなどに乗った際、後ろの人に気兼ねして、座席を倒したくても倒せないという人もいます。事業者側もこのことについて様々な配慮をしていますが、あらかじめすべての座席を倒してしまうことで対応するケースもあります。

運行前の車内チェックで全席倒してしまう

 高速バスなどで、後ろの人に気兼ねして、座席を倒したくても倒せないという声も聞かれます。ましてや寝ることが前提の夜行バスならば、これは大きな悩みの種になることもあるでしょう。

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「オリオンバス」の車内。夜行便は運行前から全席がリクライニングされている(画像:オー・ティー・ビー)。

 そのようななか、あらかじめ全席がフルリクライニングされているというバスも存在します。「オリオンバス」で行われているこのサービスを始めた背景について、運行するオー・ティー・ビー(東京都江戸川区)に話を聞きました。

――あらかじめ全席フルリクライニングするのは、どのような路線で行っているのでしょうか?

 夜行の全路線で行っています。乗車地が1か所だけでなく複数ある路線でも同様です。運行前にシートベルトなどのチェックをする際に、全席を倒してしまいます。

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写真の「コンフォート」と呼ばれるシートは、リクライニング角度105度、全席電源コンセント付き(画像:オー・ティー・ビー)。

――いつから、なぜ始めたのでしょうか?

 8年くらい前からでしょうか。座席を後ろへ倒しにくいというお声を受けて、統一して行うようになりました。

確かに乗車時に「座りにくい」とご意見をいただくこともありますが、寝やすさを重視しています。

倒すなら全席倒れていなければ不公平?

――座席を起こす場合は、何かアナウンスなど行っているのでしょうか?

 これはお客様のお好みによってで、一斉にアナウンスするようなことはありません。

――評判はいかがでしょうか?

 乗車後のお客様アンケートでは、お話した通り「座りにくい」というご意見もたまにいただきますが、「倒れていてよかった」というご意見が多数を占めます。

※ ※ ※

 座席を倒すことについては、ドライバーから「シートを倒す際には後ろの方へ一声かけて」といったアナウンスをするケースもある一方、あるタイミングで全乗客一斉にフルリクライニングすることを促す事業者もあります。そのひとつ、高速バス「VIPライナー」を運行する平成エンタープライズ(埼玉県富士見市)は、次のように話します。

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バスタ新宿に停まる「VIPライナー アクアスター」京都・大阪行き(2018年2月、中島洋平撮影)。

「最後の乗車地を過ぎ、高速道路に乗る前に、車内モニターで一斉リクライニングの説明ビデオを流したうえで、ドライバーからもアナウンスします。夜行バスはやはり寝る環境です。後ろの方に気をつかわなくてもよいようにするほか、倒す人、倒さない人がいると不公平にもなるため実施しています」(平成エンタープライズ)

 高速バスでは座席を倒すことがはばかられる雰囲気があるかもしれませんが、平成エンタープライズによると、このような一斉リクライニングをしたあとは、「座席を倒さないでいることのほうが不自然になる」といいます。

【写真】黄色いボディーが目印「オリオンバス」

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黄色い車体に星のイラストが描かれた「オリオンバス」(画像:オー・ティー・ビー)。

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