「青春18きっぷ」で乗れるのは原則として普通列車ですが、区間によっては普通列車がほとんど走っていないことも。別料金を払い特急などに乗れば、そのような「難関」を乗り越えられる場合があります。
「青春18きっぷ」はJRの普通列車が乗り放題になりますが、どんなに乗り放題でも、本数が少なければ使い勝手が悪くなります。実際、全国には普通列車の本数が極端に少ない「難関」がいくつかあります。
大分・宮崎県境に近い日豊本線の宗太郎駅を通過する特急列車。2018年3月1日現在、普通列車は1日3往復(画像:photolibrary)。
たとえば、石勝線の新夕張~新得間(北海道)は普通列車がゼロで、特急しか走っていません。また、かつては在来線だった青函トンネル前後の区間はいま、北海道新幹線になっています。これらの区間では、「青春18きっぷ」だけで特急に乗れたり、新幹線と第三セクター線に乗るための「オプション券」が販売されていたりします。
ただし、このような特例があるのはごく一部の区間です。ほかにも、特急の本数は多いものの、普通列車の本数が少なく待ち時間が長くなりやすい、次のような区間もあります。
●石北本線 上川~白滝間(北海道上川町~遠軽町、37.3km)
・普通列車本数:2往復(うち1往復は特別快速「きたみ」)
・特急本数:4往復(白滝駅停車は2往復)
・特急の運賃・料金:1460円~
●室蘭本線 長万部~豊浦間(北海道長万部町~豊浦町、36.1km)
・普通列車本数:下り4本、上り5本
・特急本数:12往復(豊浦駅には停車せず、ひと駅苫小牧寄りの洞爺駅に11往復停車)
・特急の運賃・料金:1460円~(長万部~洞爺)
●日豊本線 佐伯~市棚間(大分県佐伯市~宮崎県延岡市、40.7km)
・普通列車本数:3往復
・特急本数:13往復(市棚駅には停車せず、4駅宮崎寄りの延岡駅に停車)
・特急の運賃・料金:1930円(佐伯~延岡)
※列車ダイヤや運賃は2018年3月1日(木)現在のもの。特急の運賃・料金は特記以外、普通車自由席。以下同。
いずれも山岳地帯や県境付近などで人口が少なく、日中は普通列車がほとんど走らない区間です。こうした区間では追加で乗車券と特急券を購入し、特急を使ったほうが時間を節約できてよいかもしれません。このように「青春18きっぷ」の旅で少しの区間だけ特急を利用することは、鉄道ファンのあいだでは「ワープ」などと呼ばれます。
「新幹線ワープ」の上手な使い方同様に普通列車が少ない、あるいは時間がかかるほか、新幹線の開通により在来線が第三セクター線になったため「青春18きっぷ」を利用しづらい、といった区間もあります。そのような区間を、新幹線で一気に「ワープ」することもできます。

東北新幹線の「はやぶさ」。全車指定席だが、盛岡以北では指定席特急券より520円安い「特定特急券」が使える(2011年11月、恵 知仁撮影)。
●IGRいわて銀河鉄道/青い森鉄道 盛岡~八戸間(107.9km)
・所要時間:約1時間50分
・代替手段:東北新幹線
・代替手段の所要時間:最速27分
・運賃・料金:IGRいわて銀河鉄道/青い森鉄道は大人片道3040円。東北新幹線は3500円(特定特急券を利用した場合)~
●上越線 高崎~越後湯沢間(94.2km)
・所要時間:最短で1時間45分程度(水上駅での乗り換え含む)
・代替手段の所要時間:最速24分
・運賃・料金:3500円~
IGRいわて銀河鉄道、青い森鉄道は、東北新幹線の開通によりJRから移管された第三セクター線で「青春18きっぷ」は利用できません。一方、東北新幹線の盛岡駅以北では、新幹線の普通車指定席に、空席があれば座れるという「特定特急券」があり、指定席特急券よりも520円安く利用可能。IGRいわて銀河鉄道/青い森鉄道の運賃との料金差は540円となります。なお、青い森鉄道の八戸~青森間は、野辺地駅(青森県野辺地町)を除く途中駅で下車せず通過する場合、「青春18きっぷ」が特例的に利用可能です。
上越線では、群馬・新潟県境を越える水上~越後中里間の普通列車が1日7往復と少なくなります。代替となる上越新幹線は、高崎~越後湯沢間の途中に上毛高原駅(群馬県みなかみ町)がありますが、同駅は在来線とは接続していないため、高崎~越後湯沢で利用することとなります。
●山陽本線 広島~柳井~徳山間(110.2km)
・所要時間:約2時間
・代替手段:山陽新幹線
・代替手段の所要時間:最速22分程度(「のぞみ」利用の場合)
・運賃・料金:3390円~
山陽本線の岩国~徳山間は、瀬戸内海沿いの柳井を経由しますが、対して山陽新幹線は内陸の岩徳線沿いにこの区間をショートカットするため、距離を大幅に短縮できます。
三セク線も「ワープ」に使える第三セクター線は基本的に、「青春18きっぷ」では乗れませんが、「ワープ」に使うと効果的な路線もあります。
●北越急行(ほくほく線、新潟県)
・区間:六日町~犀潟 59.5km
・運賃:大人片道970円(六日町~犀潟)
北越急行ほくほく線は新潟県の魚沼地方と上越地方を結ぶ路線。列車の多くはJR線に乗り入れ越後湯沢~直江津間で運転されます。北陸新幹線の金沢延伸以前は、特急「はくたか」が最高速度160kmで越後湯沢~金沢間を走っていました。現在は超快速「スノーラビット」が越後湯沢~直江津間を最速57分で結んでいます。この区間をJR線の普通列車で移動した場合、最も早くて3時間弱かかります。

智頭急行の特急「スーパーはくと」(画像:photolibrary)。
●智頭急行(兵庫、岡山、鳥取県)
・区間:上郡~智頭 56.1km
・運賃:大人片道1300円(上郡~智頭)
山陽本線の上郡駅(兵庫県上郡町)と因美線の智頭駅(鳥取県智頭町)を南北に結ぶ路線で、京都~鳥取・倉吉間の特急「スーパーはくと」が走るなど、関西と鳥取を結ぶメインルートのひとつとなっています。「スーパーはくと」を智頭急行線内のみ利用した場合、所要時間は約40分、費用は運賃1300円と自由席特急券420円です。
今回紹介した区間以外にも、列車本数が極端に少なく、代替手段もないといったところがあります。たとえば、北海道のいわゆる盲腸線(行き止まりの路線)である札沼線の末端、浦臼~新十津川間は、1日1往復の普通列車しか走っていません。他路線とつながっている区間でも、たとえば広島県の山間部に位置する芸備線 備後落合~東城間や、島根・広島県境をまたぐ木次線 備後落合~出雲横田間も、それぞれ普通列車などが1日3往復だけの区間です。旅行する際はよく計画を立てたほうがいいかもしれません。
【地図】北海道で普通列車の本数が特に少ない区間

記事中で取り上げた普通列車の本数が特に少ない区間。いずれも1日5往復未満。石勝線の新夕張~新得間は特急だけが走る(国土地理院の地図を加工)。