鉄道車両にはニックネームが付いているものがあります。名付け親は鉄道事業者だったりファンだったりいろいろ。

ただし、名前の由来や経緯は、名付け親によって傾向が異なってくるようです。

鉄道に親しんでもらうために

 日本の鉄道車両には、基本的に形式と車両番号が付けられています。これらは鉄道事業者が車両を管理するためのものですが、それとは別に、車両にニックネームが付けられていることもあります。

「Max」から「食パン」まで 鉄道車両のニックネーム、その由...の画像はこちら >>

「ブルートレイン」の言葉は1970~80年代のブームのときに、マスコミを通して定着した(児山 計撮影)。

 鉄道事業者にとって鉄道車両は大事な商品のひとつです。快適な設備、すばらしい乗り心地、速いスピードなど、その車両が持つ特徴をアピールし、鉄道を旅行の選択肢に組み込んでもらうために、ニックネームを付けてアピールします。

 たとえばJR東日本のオール2階建て新幹線E1系は「Max」というニックネームが付けられました。デビュー当時のテレビコマーシャルで「つまり、多くの快適設備を持った新幹線。でも、そういうことは全部忘れて『Max』と呼んでください」と宣伝しました。2階建てで多彩な設備の新幹線に「Max」というニックネームを付け、利用客への浸透を図ったわけです。

 また、小田急電鉄の特急用車両は、「GSE(グレースフル・スーパー・エクスプレス)」や「VSE(ヴォールト・スーパー・エクスプレス)」など、形式ごとにニックネームを付けているほか、特急用車両の総称として「ロマンスカー」という名前を付けています。これは一説には、映画館などで見られた2人掛け座席「ロマンスシート」を採用した車両を「ロマンスカー」と呼んだのが始まりとされており、これも車両設備をアピールするニックネームといえます。

車両性能や企業イメージもニックネームに

 また、車両性能をアピールするニュアンスを含ませたニックネームもあります。

 たとえば、阪神電鉄の普通列車用車両「ジェットカー」。これは一般的な通勤形電車の1.5~2倍ほどの加速力の高さをアピールするニックネームといえます。

「Max」から「食パン」まで 鉄道車両のニックネーム、その由来と傾向は

ジェット機になぞらえて命名された阪神電鉄の「ジェットカー」。最新型の5700系は銀色の車体から「ジェットシルバー」というニックネームが付いた(児山 計撮影)。

 このほか関西の私鉄では、近鉄「ラビットカー」、京阪電鉄「スーパーカー」、南海電鉄「ズームカー」、阪急電鉄「オートカー」など、車両性能をアピールするニックネームが流行しました。車両性能は車体外観からは分かりづらいため、ニックネームでアピールする方法は効果的でした。

 また、企業イメージをアピールするニックネームの例としては、西武鉄道30000系の「スマイルトレイン」があります。これは「出かける人を、ほほえむ人へ」という西武グループのコーポレートスローガンを通勤形車両に投影したもの。笑顔をモチーフにした正面形状と合わせて企業イメージをアピールした例といえます。

ファンが付けた「見た目」のニックネーム

 鉄道車両のニックネームは、すべて鉄道事業者が付けたものとは限りません。ファンや利用者、マスコミが付けたニックネームが広まって定着したケースもあります。

性能や設備をモチーフに鉄道事業者が付けたものとは異なり、ファンや利用者が付けるニックネームはその外見や色から連想するケースが主流です。

 たとえば「ブルートレイン」。青いボディの寝台客車からなる列車の総称としてすっかり定着していますが、このニックネームは国鉄が付けたものではありません。日本のブルートレインの元祖ともいえる20系客車を紹介した当時の国鉄製作映画にも「ブルートレイン」という言い方はなく「デラックス特急」と呼ばれています。「ブルートレイン」のニックネームは、のちに鉄道ファンが雑誌などでそう呼んだものが定着していったものです。

「Max」から「食パン」まで 鉄道車両のニックネーム、その由来と傾向は

まっ平らな正面形状と角が丸まった断面から「食パン」と呼ばれ親しまれたJR西日本419系(児山 計撮影)。

 正面の形状から連想して付けられたニックネームとしては、国鉄/JR西日本の419系「食パン」など。色も加わると京急電鉄800形の「だるま」があります。車体の色からだと、国鉄湘南電車の「かぼちゃ電車」、923形新幹線「ドクターイエロー」などが挙げられます。

 こういったファンや利用者によるニックネームは、それだけその車両が親しまれている何よりの証でもあり、人気のバロメーターになっている、ともいえるのです。

編集部おすすめ