日本国内のツアーというと、飛行機は移動手段の側面が強くなりますが、ひたすら飛行機に乗ることを目的としたツアーがあります。その数最大16フライト。

その中身はどんなものでしょうか。

プロペラ機で奄美や沖縄の島々をホッピング

 日本国内のフライトは、ほとんどが2時間半未満。飛行機好きにはあっという間で、マイルもなかなかたまりませんが、飛行機に乗ることを楽しむちょっと風変わりなツアーを発見しました。最長2泊3日で最大16フライト。日本の南の島々をホッピングする(飛び回る)ツアーです。

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RAC(琉球エアコミューター)が保有する小型プロペラ機、ボンバルディアDHC8-Q400CC(画像:JALパック)。

 このツアーを企画したJALパック国内企画商品第2事業部の石井秀俊さんに話を伺いました。石井さんは2007(平成19)年当時、JALツアーズ(2011〈平成23〉年にJALパックと統合)にてこのプランを企画。鉄道における「乗り鉄」のように、飛行機に乗ることを目的とするマニアからの需要を見込んでのことといいます。「当初はできるだけフライトタイムが長い路線を組み合わせ、1泊2日で4から5フライトのツアーを販売していました。しかしそのうちに、1区間が長いよりも、短いフライトを数多く飛ぶほうが身体の疲労が少なく、離着陸の醍醐味や風景をより楽しめるとして再考し、結果、南の島々を飛行機でアイランドホッピングするこのツアーが生まれました」。

 最初に商品化されたのは、JAC(日本エアコミューター)の運航便を主体とする奄美群島のホッピング。

現在、様々なパターンがありますが、2018年4月現在、フライト回数が最も多いのが2泊3日16フライトの行程。使用機材は、ATR42-600、サーブ340B、ボンバルディアDHC8-Q400の3種類で、いずれも小型プロペラ機です。
 
 ATR42-600はJACでは2017年より就航。日本では天草エアラインが最初に導入しました。乗降口が機体後部だけで前方にないのが民間航空機としては変わり種といえます。サーブ340Bは短い滑走路にも着陸できることから、離島の小さな空港で活躍してきましたが、2019年度までに退役予定だそうです。

日本一短い定期航空路を含む1泊2日16フライトも

 ボンバルディアDHC8-Q400は、高性能ターボプロップエンジンによりジェット機に匹敵するスピードで飛ぶことができます。JALパック国内企画商品第2事業部西日本グループの橘内(きつない)早紀さんは元JACの客室乗務員で、「Q400のQは、クワイエット(quiet)のQといわれるくらい、プロペラ音が静かなことも特徴です」と話します。同機も2019年度までに退役予定です。

 橘内さんは奄美群島のホッピングツアーについて、「コバルトブルーの海に浮かぶ島々の離着陸風景に加えて、沖縄の離島と比べるとまだ知名度が低い、奄美群島の島々に上陸できることも魅力だと思います。小さな空港で気さくな島民の方々との交流や地域ならではのお土産が並ぶ売店を覗くのも楽しいです」と話します。

ひたすら飛行機に乗るツアー 最大16フライトのアイランドホッピング どんな旅?

南大東島の空港(画像:JALパック)。

 沖縄のアイランドホッピングは、これよりもさらに強行軍のものがあります。同じくJALパックの企画したツアーで、JTA(日本トランスオーシャン航空)とRAC(琉球エアコミューター)の便を利用する1泊2日16フライト。このツアーには、飛行時間およそ5分という、日本で一番短い定期航空路である南大東島~北大東島のフライトも含まれています。JALパック国内企画商品第2事業部沖縄グループの武田秀樹さんによると、この「日本一」を体感するのが楽しみでツアーに参加する人も少なくないとのことで、「ツアーの魅力のひとつに挙げられます」といいます。

「使用機材にボンバルディアのQ400CCシリーズがあるのも特徴です。『CC』は『カーゴコンビ』のことで、機体後方に大きな荷物も搭載できるようカーゴスペースが設けられているのが日本では珍しいです。シートピッチが広めなのもお客様から好評です」(武田さん)

 この飛行機で12フライトするため、同じ客室乗務員が3フライト続くこともあるそうで、これもほかにはなかなかない経験です。

どんな人たちが参加? 今後フライト数が増える可能性は?

 どういった人たちがこのツアーを利用しているのでしょうか。 橘内さんによると、大きくふたつの客層に分かれ、「ひとつは俗にいう『マイル修行』の人たちです」とのことです。ここで言う「マイル修行」とは、たとえばJALマイレージバンクにおける「JALグローバルクラブ会員」のような、様々な特典を享受できる上級会員になることを目標に、飛行機に頻繁に乗ることを意味します。上級会員になるには一定の搭乗実績に達することが必要で、お金に時間、体力や根気を必要とされることなどから、「修行」という表現が使われるようになったようです。このツアーに参加すると、マイルはそう多く貯まらなくとも、欠航などがなければ「16回」という搭乗回数を稼ぐことができます。

JAL(日本航空)では、マイル積算数だけではなく、年間の搭乗回数の多い人たちも上級会員になることが可能です。

ひたすら飛行機に乗るツアー 最大16フライトのアイランドホッピング どんな旅?

JALパック国内企画商品第2事業部の武田秀樹さんと橘内早紀さん(2018年4月、乗りものニュース編集部撮影)。

 もうひとつは、「かわり種ツアー」を好む人たちとしています。「なかでも、日本の全離島を制覇しようとする『離島マニア』の人たちが多くみられます。意外と、40代から60代くらいまでの女性ひとり旅も多いです」と橘内さん。

 ツアーの基本料金は割引運賃が適用になるため、正規運賃で16フライト搭乗するよりも、安い金額になります。今後、さらにフライト数を増やした商品が出てくる可能性について武田さんに聞いてみたところ、「JALグループでは、1旅行で予約システムに入れられる最大フライト数が16回となっています。仮に可能であったとしても、1泊2日のアイランドホッピングでは、行程的にも1日8フライトが限界のようです」との答えでした。

 ツアーは、8フライトや11フライトなど色々なパターンがあり、それぞれにルートも異なることから、リピーターが多いのも特徴のひとつといいます。そうした人たちから、奄美群島から沖縄の島々までを一気に巡るアイランドホッピング16フライトを期待する声も上がっているそうです。

 なお、ツアーの実施には時期があります。

【写真】2019年度で退役予定のJACのサーブ340B

ひたすら飛行機に乗るツアー 最大16フライトのアイランドホッピング どんな旅?

JACの保有する最も小さな飛行機、サーブ340B。
離島航路で活躍してきた(画像:JALパック)。

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