東急・伊豆急が送り出した豪華観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス」に乗って、料理に眺望、「音旅演出家」による車内生演奏と、その旅を満喫! あっという間の3時間、映像でその魅力をお伝えします。
走る列車内で「音旅演出家」によるバイオリン生演奏!伊豆急行2100系のうち、「アルファ・リゾート21」として活躍していたカラフルな電車が、JR九州の豪華クルーズトレイン「ななつ星in九州」などを手がけた水戸岡鋭治さんの手によりリニューアル! シックなロイヤルブルーカラーに生まれ変わり、2017年夏にデビューしたハイグレードな観光列車「ザ・ロイヤルエクスプレス(THE ROYAL EXPRESS)」に2018年4月、横浜駅から伊豆急下田駅まで乗車。
東急電鉄と同グループの伊豆急行により運行されている「ザ・ロイヤルエクスプレス」(2018年4月、恵 知仁撮影)。
一番感激したのは、「ななつ星in九州」でも活躍された「揺れに一番強いバイオリニスト」大迫淳英さんの生演奏! この「ザ・ロイヤルエクスプレス」で、観光列車というより豪華クルーズトレインに近いハイグレード感を味わえるのは、この演出があるからこそだと思います。
今回乗車した「ザ・ロイヤルエクスプレス」はメディア向けに運行されたもので、途中、3号車の「マルチカー」において、大迫さんによるミニコンサートが開催されました。
1曲目『愛の挨拶』の有名な旋律が流れた瞬間に心を掴まれ、最後に演奏された『THE ROYAL EXPRESS』のテーマ曲では、鳥肌が立つほど。ヴィヴァルディの『四季』より『春』『みかんの花咲く丘』など、季節や伊豆の歴史を感じられる選曲も、乗客に寄り添ったものだと嬉しくなりました。

「アルファ・リゾート21」時代の伊豆急2100系電車(2007年、恵 知仁撮影)。

「ザ・ロイヤルエクスプレス」乗降口には青いじゅうたんが。

車内で演奏する「揺れに一番強いバイオリニスト」大迫淳英さん。
「アーティスト」ではなく「乗務員」と言い切る大迫さん。すれ違うたびに目を合わせて「ニコッ!」としてくださるのが印象的。食事中にも声をかけてくださり、この列車でお料理を監修されている河野美千代さんの料理店「方寸」さん(大分市)とのエピソードなど、気さくにお話ししてくださいました。
この「ザ・ロイヤルエクスプレス」、運行からまだ1年弱にも関わらず、3度も乗られているリピーターさんもいらっしゃるとのこと。車両やお料理の魅力もさることながら、乗務されている「人」のファンである方もきっと多いことと思います。私(小林未来:現役レースクイーン)も2017年夏のイベントで大迫さんの演奏を聴いてから、必ず「ザ・ロイヤルエクスプレス」に乗ろうと決めていました。オンリーワンの魅力は、やはり「人」が創るものだと感じました。
お土産にしたかったクレソン 伊豆急下田行きで味わえる料理この「ザ・ロイヤルエクスプレス」は、「プラチナクラス」と、比較的カジュアルな「ゴールドクラス」の2クラス構成になっており、「プラチナクラス」ではコース料理を、「ゴールドクラス」では二段のお重を楽しめます。お重にも温かいスープと作りたてのデザートが付いてくるのが嬉しいところ!

山田チカラさん監修による「プラチナクラス」のコース料理。


伊豆急下田行き列車で味わえる料理は、「世界一予約の取れないレストラン」といわれた、スペインの「エル・ブジ」で腕を磨いた山田チカラさんの監修です。
その内容は、桜えびやサザエはもちろんのこと、ツナや豚肉といった意外なところまで、静岡産の食材を使ったメニューが目白押し! 「プラチナクラス」のコース料理では、珍しいイサキのラザニアに添えられた下田クレソンの辛味がしっかりしていて、お土産に買って帰りたいくらい気に入りました。
山田さんは、素材をムース状にするエスプーマを使った料理を、日本で広めた先駆者。デザートの静岡いちごのパフェは、ベストなタイミングで運ばれてきた出来立てのエスプーマがふわっと口のなかで溶ける、衝撃の美味しさ!!
普段、最大でおよそ100名の乗客に対し20名が乗車するというクルーは、知識が豊富ゆえに会話も弾み、それでいて食事を遮ることのない絶妙な距離感。きっと一人旅であっても楽しく過ごせそうだな、と、次の機会を自然と想像していました。
昆布を使った「黒船」風の皿 横浜行きは細部までこだわった創作料理横浜行きの「ザ・ロイヤルエクスプレス」で味わえるのは、「ななつ星in九州」にも料理を提供している「方寸」の河野美千代さんが監修するメニュー。

河野美千代さん監修による「プラチナクラス」のコース料理。


車窓には海や伊豆七島の姿も。
また一見、上品な和食なのですが、よくよく見てみると、しいたけがテリーヌになっていたり、お重のなかにオニオンチーズ焼きのパンがまぎれていたりと、初めて出会う創作料理の数々に驚かされます。ワカメのたっぷり入った玉子豆腐は人気メニュー。プリンのような滑らかさで、優しい甘さが忘れられません。これをきっかけに大分の「方寸」にも足を運びたくなるのは、私だけではないはず。
「ザ・ロイヤルエクスプレス」は上りか下りか、コース料理かお重か、さらに「クルーズプラン」では車内の寿司カウンターで握られた地魚のお寿司が提供されることもあるそうで、選択肢は多数。季節ごとにメニューが変わるので、リピーターが多いのもうなずけます。
なお「ザ・ロイヤルエクスプレス」の旅は、宿泊と観光が組み合わせられた「クルーズプラン」、片道の列車旅を楽しむ「食事付き乗車プラン」の形で販売されています。
洗練された「展望ライブラリー」でいただく特別なコーヒー「ザ・ロイヤルエクスプレス」は、5号車から8号車までが「プラチナクラス」の車両。その乗客は、7・8号車の客室から5・6号車の食堂車に移動してコース料理をいただきます。
「あなたのために、特別なものを用意しました!」そんな思いを感じられる、1杯1杯丁寧にいれたコーヒーは、飛行機のファーストクラスでもお馴染み「ミカフェート」のもの。雑味のないフルーティな味わいに、ホッと肩の力も抜けてくつろげます。

8号車の「展望ライブラリー」で食後のコーヒーを。


この列車のデザインを手がけた水戸岡さんは、後ろ展望のほうが好きだとおっしゃっていたそうで、私も組子の窓枠越しに流れていく迫力のある景色を、いつまでも眺めていたくなりました。
また座席と座席のあいだに設けられたブックシェルフには、伊豆や鉄道に関連する書籍が並びます。水戸岡さんの著書もあり、木のぬくもりに包まれた非日常の空間でゆったりとページをめくる時間は、終点に近づくとトンネルの多い伊豆急行線にぴったりの過ごし方かもしれません。
木材だけではない! 金色に輝く電鋳パネル水戸岡さんのデザインといえば、木材をふんだんに使った内装を思い浮かべます。伊豆急下田行きで先頭になる1号車の展望席は、落ち着いた「展望ライブラリー」になっている反対側の8号車とはまた異なり、明るい色の木に緑色の模様をプリントした天井が広がって、まるで自然のなかにいるよう。運転席とのあいだにガラスの仕切りがなく、声がダイレクトに聞こえる最前列は、鉄道ファンにはたまらない特等席!
1・2号車は「ゴールドクラス」車両で、そのうち展望席がある1号車は「親子で旅を楽しむ」がテーマ。白っぽい木材が使われ、親子席や木のプールも用意された明るい空間でした。
3号車は、フラットなスペースを様々に使える「マルチカー」。
この「マルチカー」で最も驚いたのは、金色に輝く天井! 電気鋳造で繊細な模様を忠実に再現しているそうで、5号車のお手洗いの壁や6号車のドリンクカウンター、各号車表示にもこの金色のパネルが輝いていて、何とも豪華!! 「水戸岡デザイン」の進化を感じました。

運転士の声もよく聞こえる1号車の「特等席」。

天井が印象的な3号車の「マルチカー」。

クルーの方と記念写真。
4号車は「キッチンカー」で、通路を歩くと、お料理を仕上げる良い香りが漂ってきました。
「プラチナクラス」の食堂車である5・6号車にはそれぞれピアノが置かれていて、「大人の社交場」のようなイメージ。天井のステンドグラスがまるで照明のようで、乗客が輝ける舞台を照らしているように見えました。
そして、「プラチナクラス」の客室となっている7・8号車は落ち着いた色合いで、高級ホテルのような重厚感が魅力。「展望ライブラリー」は、テーブル付きのソファ席がブックシェルフで1席ずつ区切られていて、書斎のような使い方もできそうです。
横浜駅から伊豆急下田駅までの「ザ・ロイヤルエクスプレス」の旅は、あっという間の3時間。伊豆の魅力を五感で味わい尽くせる、贅沢な時間でした。豪華クルーズトレインには手が届かなくても、たまには再訪できる価格、そして貴重な首都圏発。何より「音旅演出家」の大迫さんをはじめ、担当いただいたクルーの寄り添うような接客が忘れられません。私はまた必ず会いに来ます。